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LIVE REPORT

BabyKingdom

2025.05.31 @KANDA SQUARE HALL

Writer : 杉江 由紀 Photographer:菅沼剛弘

悪霊、怨霊、死霊、生霊等、良からぬ霊の類いはいろいろあるようだが、いわゆるスピリチュアル界隈やオカルト界隈にあまり明るくない者からすると、それらは結局のところ人が持つ概念や思念から生まれたもの、であるように思えてならなかったりもする。
"呪いとは名である。目に見えぬものさえ、この名という呪いで縛ることができる。また人の心には鬼が住む。鬼が住むからこそ、人はこうして歌を詠むのだ。娑婆こそ陰陽道。......清!"(咲吾-shogo-/Vo)

べびきんの愛称でお馴染みのBabyKingdomが、このたびKANDA SQUARE HALLにて開催したのは、"spring oneman tour『悪気滅殺~陰陽道~』"の千秋楽公演。平安時代に実在していたという陰陽師、安倍晴明をモチーフにした最新シングル『SEIMEI』の内容に沿った今回のライヴでは、ヴォーカリスト 咲吾が安倍晴明、ギタリスト 志記-shiki-が晴明の友人であったと創作で描かれている近衛中将にして雅楽家の源 博雅、ベーシスト もにょ-monyo-が管狐(くだぎつね)、ドラマー 虎丸-toramaru-が式神に、それぞれ扮しながらのパフォーマンスを展開していくことになったのだった。そして、"MUSIC THEME PARK"を標榜するべびきんが、今回アトラクション(楽曲)として取り揃えてくれていたのは、最新シングルの収録曲のみならず、既存曲についても和の世界を基調にしたものが主軸となっていたのである。

ただ、その一方でライヴの冒頭を飾っていたのは、前回シングル『CALAVERAS/サルサルーサ』(B type)収録のマジメタル・チューン「AVARITIA」で、この選曲は、今回のツアーにおける"裏テーマ"を推察させるものでもあったのではなかろうか。
というのも、シングル『SEIMEI』の表題曲は、そもそも彼等が"和とメタルを融合していこう"という意図のもとで完成させた楽曲であると同時に、"ヴィジュアル系の原点の1つであるヴィジュアル・メタルへのリスペクトを音にした"ものだったのだとか。すなわち、昨今べびきんの中ではメタル・サウンドを追求する機運が高まっていたため、今回のツアーでもその部分をフィーチャリングしたセトリが組まれていた印象が強い。

前述した咲吾の台詞から始まる「SEIMEI」では、和風曲ということからイロハ=168にBPMを設定したボム・ブラストのビートを、虎丸が叩き倒し、イントロでは箏曲「春の海」(宮城道雄)の音階を分解して構築した志記の超速ギター・リフが大炸裂。その上、間奏ではもにょの巧みなベース・ソロから志記のギター・ソロへと繋がるリレーソロが、観衆を惹きつけていくことになり、場面によってはハイトーンで歌いながらも丁寧に物語を演じていった咲吾の表現力とも相まって、べびきんは、"メタルをも武器とするバンド"としての存在感をここに強く打ち出したと言えるだろう。
それでいて、今回のライヴでは、咲吾がギター・ヴォーカルとして叙情的に歌い上げた「アカツキ」や、和とジャズを融合させた音像の中で、もにょが"いぶし銀"なベース・プレイを聴かせた「花鳥風月」、麗しき旋律でドラマチックに本編ラストを締めくくった「水天一碧」と、べびきんの多彩で"メタル以外もいろいろ得意"なバンドとしての懐の深さも、随所で大いに発揮されていた点が実に興味深かった。

ちなみに、今ツアーをもって悪鬼滅殺を成し遂げた彼等は来たる8月に、長らく封印してきた初期楽曲を今に解き放つ、"始祖アトラクション復活ツアー『Welcome to ZERO』"を開催するそう。"MUSIC THEME PARK"べびきんの夏季営業にも期待大だ!

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