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INTERVIEW

BabyKingdom

2023.10.31UPDATE

2023年11月号掲載

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

やがて来たる白の季節は、BabyKingdomの生み出した新アトラクション『PENGUIN DIVE』をより素敵に響かせていくことになるだろう。自らを"MUSIC THEME PARK"と標榜してきたBabyKingdomがこのたび発表するシングルは、冬、ペンギン、スチームパンクという3つのファクターを下敷きにしつつ、新たな音楽的チャレンジをクリアした意欲作。各曲を通じて"生きる"ことを描いた歌詞たちも印象的で、楽しいけれども楽しいだけでは終わらないべびきん(BabyKingdom)ならではの噛みしめがいのある作品クオリティは、今回も健在だ。Zepp Shinjuku (TOKYO)でのツアー・ファイナルを12月12日に控えた"winter oneman tour『WHITE STEAM』"も要注目!

-BabyKingdomは先だっての"summer oneman tour『太陽と月光の反響音』"ツアー・ファイナルで、11月1日にシングル『PENGUIN DIVE』を発表するとの告知をされました。そして、あの場では咲吾さんから"「PENGUIN DIVE」は生まれながらに飛べない鳥と呼ばれるペンギンの歌です。でも、本人にとっては海の中が大空やと思って飛んでるかもしれないし。誰だって、自分の世界で幸せになれればそれでいいからね。「親ガチャ失敗」とか今はいろんな言葉がある時代やけれども、みんなには自分の世界の中で満足のいく人生を送ってほしいと思って書いたのが「PENGUIN DIVE」です"というお言葉もあったのですが、今回このテーマを描くことになったのはそもそも何がきっかけだったのでしょう。

咲吾:冬に向けてのリリースということで、今回は季節感をしっかり出した題材のものにしたいなという気持ちがまずはあったんですね。最初のうちはざっくりと雪のイメージとかをヴィジュアル面的な部分で表現しようかという話がありつつ、やっぱりべびきんの新たなアトラクション(楽曲)として作る以上は、そこにペンギンというモチーフを組み合わせることで、物語としての幅を広げていくほうが面白いだろうなと思ったんです。あとは、雪+ペンギンだけだと衣装デザインの部分ではまだちょっと物足りなかったんで、さらにスチームパンクという要素も入れていくことにしました。

-スチームパンクというと、基本的には真鍮を思わせる黄銅色の金属アイテムがデザインの中に取り入れられることが多いように思いますが、BabyKingdomは白を基調とした衣装の中にスチームパンクのニュアンスを導入されたわけですね。

咲吾:そうなんですよ。どうしても、スチームパンクって言うと誰もが茶色い色味を思い浮かべると思うんですけど、僕らは今回『PENGUIN DIVE』で、他ではまず見ない"真っ白なスチームパンク"の世界をあえて作っていくことにしたんです。

-なるほど。また、楽曲の面では表題曲である「PENGUIN DIVE」をはじめとして、カップリングの「ハナムコペンギン」や「AWAKING BEAT」でも、生き物や生きるというテーマについて今作では共通して描かれているようですね。

咲吾:曲のタイプ自体はそれぞれ違うんですけど、たしかにテーマ的な部分では3曲とも根底では繋がっているところがあると思いますね。

-各曲とも作曲クレジットは今回もBabyKingdom名義となっておりますが、表題曲「PENGUIN DIVE」の原形を作られたのはどなたでしたか?

志記:僕です。ただ、原形と言ってもメロディはいつも作らず、そこは咲吾に任せているので、自分は曲の土台となる部分を作っていくところから始めましたね。冬に出す雪の曲というテーマと、ペンギンという生き物のモチーフもあったので、「PENGUIN DIVE」に関しては"生き抜くことの美しさ"という部分に焦点を当てて曲を作っていきました。

-この曲の中にそこはかとない力強さや、キラキラと輝くような美しさが漂っているのはそのためだったのですね。

志記:実を言うと、個人的にはこの曲を通してひとつの提示をしたところもありました。というのは、"昨今の日本の音楽って、どうも「美しさ」とは掛け離れていってる気もすんねんな"という思いがありまして。どうしてもキャッチーさに焦点が当てられるせいか、とりあえず冒頭の15秒だけで勝負するみたいな傾向があるじゃないですか。

-サブスク文化の浸透により、その風潮はかなり顕著になっているかと思います。

志記:どこかで小室哲哉さんも"今は1曲4分も必要ない時代になってる"って言ってましたしね。だけど、僕はそういう時代の流れとはまた別の方向からのアプローチをしたかったんですよ。だから「PENGUIN DIVE」では1曲を通しての美しさ、音楽としての美しさというものを改めて表現していくようにしたんです。

-そこからバンドとしての音を固めていくことになった際、楽器隊の各人はどのようなスタンスで「PENGUIN DIVE」と向き合っていくことになられたのでしょう。ドラマーである虎丸さんの場合は、リズムをどのように組み上げられましたか?

虎丸:この曲では流れるようなドラムを意識しました。ある意味、聴き手側が曲を聴いているときに、ドラムにはあまり耳がいかないような感じに仕上げたかったんです(笑)。

-縁の下の力持ちに徹されたわけですね。

虎丸:僕は、この「PENGUIN DIVE」を聴いたときにソリに乗ってるような感覚を持ったんですよ。なめらかに滑っていくような、まったくひっかかりのない音が欲しかったんです。

-本来的にはビートを刻む楽器であるドラムで、そうしたなめらかさを醸し出していくのにあたり、具体的にはどのようなプレイをしていく必要がありましたか。

虎丸:例えば、フィルインを入れたいところでは、その前までをしっかり落ち着かせておくと、フィルインをバーンと入れたとしてもちゃんとなだらかに聴こえるので、そこにはかなりこだわりました。

-では、ベーシストであるもにょさんが「PENGUIN DIVE」をプレイされていくうえで心掛けられたのはどのようなことでした?

もにょ:僕はBabyKingdom史上初めてでしたけど、最初この曲を理解できなかったですね。いつも志記が譜面を書いてベース・フレーズを作ってきてくれるんですけど、弾くのが難しいとかではなく、譜面を見ても"なぜこういうフレーズになっているのか"が全然理解できなかったんです。普段だったら、理論的にここはこうなっているんだろうな、とかだいたいわかるんですけどね。ピアノに例えるとするなら、この曲のベース・フレーズはすべて黒鍵を通っているような流れになっていたんですよ。志記先生、これキーで言うと何になるんですか?

志記:それが、これはキーが存在しない曲になってるんですよね。というか、もちろん厳密には存在するんですけど、イントロとサビ以外は全セクションがそれぞれ違うキーになってるんです。

-えっ! まさか、そんなにも複雑な作りの曲だとはまったく気づきませんでした。

志記:たぶん、なんにも知らなかったらサラーッと聴けちゃうと思います。

もにょ:僕も志記先生の作ったデモを聴いた段階では爽やかで聴きやすいタイプの曲だと思ってたんで、ちょっとナメてたところがあったんですよね。ところが、実際は転調の嵐みたいな曲だったので、ほんとに最初は理解ができなくて困っちゃったわけです(苦笑)。

-そういうことでしたか。爽やかにしてキャッチーに聴こえるにもかかわらず、実態はプログレのごとき構成になっていたわけですね(笑)。

もにょ:転調回しで成立してるタイプの曲って、それこそ聴いただけでも"難しそう!"ってなるようなものが多いと思うんですよ。だけど、さっき虎丸も言っていたようにこの曲では"流れるような美しさ"が大事になってくる曲だし、転調部分でも転調してることを感じさせない仕上がりになっていますからね。譜面を見ると転調してるはずなのに、音はそう聴こえないっていうところで頭が追いつかなくなっちゃったんです(苦笑)。

-となると、レコーディングでは......。

もにょ:ずっと譜面を見てました。どうしてもレコーディング当日までには覚え切れなかったんですよ。志記からは"お兄ちゃんだったらできる!"っていう謎の応援もされましたけど(笑)、ツアーまでには何も見ないで弾けるようにします!