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INTERVIEW

BabyKingdom

2023.07.11UPDATE

2023年07月号掲載

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

見た目はド派手なヴィジュアル系、頭脳は極めてプロフェッショナルなクセモノ系音楽集団、その名はBabyKingdom。自らを"MUSIC THEME PARK"と標榜する彼らは、このたび"警察と怪盗"をモチーフにした新アトラクションとなる16thマキシ・シングル『ハイ逮捕/FAKE in PHANTOM』をここに完成させた。今回もまた音、歌詞、写真、MVのすべてで徹底したクリエイティヴィティを発揮してみせる彼らの手の内を、ここでは少しばかり明かしてもらうこととしよう。なお、今作と連動する形で開催される2デイズ(※広島/静岡公演除く)・ツアー"summer oneman tour『太陽と月光の反響音(レゾナンス)』"も必見なものになっていくことは間違いない。そう、真実はいつもひとつだ。


もちろん、エフェクターなしのアンプ直です


-戦国時代をテーマにした前作『我武者ライジング』(2023年3月リリース)から一転して、今回の16thマキシ・シングル『ハイ逮捕/FAKE in PHANTOM』は、BabyKingdomが"警察と怪盗"をモチーフに作り上げた新アトラクションとなるのだとか。さすがは自らを"MUSIC THEME PARK"と標榜するバンドだけあって、今回も音、歌詞、写真、MVのすべてで徹底したクリエイティヴィティが発揮されておりますね。

咲吾:実は、前々からいつか"警察と怪盗"をテーマにした作品を出してみたいとは思っていたんですよね。もちろん、やるならシングルで2曲とも表題にして、衣装も両方のパターンを作り、リリース・ツアーも各地でテーマごとに2デイズやっていくというところまで実現したかったですし、去年は僕自身がポリープで喉のコンディションを調整するのがちょっと難しい時期もあったので、ようやくここに来てやりたかったことを実現することができたんです。

志記:時期的なことで言うと、「FAKE in PHANTOM」のほうはすでに一昨年くらいから作りだした記憶があります。ちなみに、カップリングの「ちょうだい!君の心臓」(※D typeのみ収録)も怪盗をテーマにした曲作りをしていたときにできた候補のひとつで、表題曲にはならなかったけどせっかくなので一緒に入れることにしました。

-では、まずここでは「FAKE in PHANTOM」についてのお話からうかがっていくことにいたしましょう。こちらの曲はスリリングな曲調とゴージャスなサウンドメイクが印象的な1曲で、ドラマやアニメの主題歌としても似合いそうな雰囲気の仕上がりです。

志記:怪盗がテーマの「FAKE in PHANTOM」に関しては、今までBabyKingdomではやってきていなかった要素を曲にいろいろと詰め込んでいくことになりましたね。アレンジの軸になったのはファンク要素とかジャズ要素で、具体的には鍵盤楽器のクラビネットの音なんかも使ってます。あとは、オルガンの音をギター・アンプに突っ込んで昔のDEEP PURPLEさんがやっていたような音の出し方もしてるんですよ。

-今どきそれをやっているバンドはジャンル問わず相当レアですね。そして、V系バンドのシングル表題曲でこれだけギターのカッティングをふんだんに使う音作りというのも、これはかなり異例なことのように感じます。

志記:ですよね、たぶんあんまりいないはずです(笑)。もろちん、それでもヴィジュアル系のロックとして成立するものということも意識はしていたんですけど、手法として使っているのはあえての古いやり方です。昨今のレコーディングって、ギタリストは家で録ってリアンプするみたいなケースが多いんやないかと思うんですが、この「FAKE in PHANTOM」はギターもスタジオにMarshallのJCM800とFenderのストラトだけを持ち込んで、そのまま男の一発録りをしてます。

-エフェクターなしのアンプ直ですか。潔い!

志記:いわゆる波形ずらしみたいなこともほぼせず、自分のタイム感とリズム感でガンガン録っていきました。

-そうした一方で、この「FAKE in PHANTOM」はファンク要素も含んでいる楽曲だけに、ベースの大活躍ぶりも目立っておりますね。

もにょ:志記さんの作る曲はだいたいどれもめっちゃムズいです(笑)。ただ、僕自身の音楽歴というのがもともとロック・バンドよりはジャズ系だったんですよ。神戸の出身で、地元にあったジャズ喫茶というかおじさんたちが集っているようなところにたまたま出入りするようになって、そこでおじさんたちにベースを教えてもらって知識と根性を身に着けていったので、こういう「FAKE in PHANTOM」みたいな曲ではその頃に得たものを活用していくことができました。だから、僕にとっては難しいけど結構得意なタイプの曲ではありましたね。あと、僕も今回はFender USAのVintage Customっていう"いつの時代のベース!?"みたいなのを使ってます。もちろん、エフェクターなしのアンプ直です。アンプも1990年代製のTrace Elliotのものを使ってます。

-アナログな機材だからこそ醸し出せる音というのが堪能できるわけですね。

もにょ:でも、レコーディングで本当に一発録りまですることになるとはさすがに思ってなかったですね。そこはちょっと、半ば騙されて志記さんにスタジオまで連れていかれることになった感じでした。オールドのベースを1本だけ持ってこいと言われて、行ったらその場で"はい、じゃあお兄ちゃんここで弾いてください!"って言われちゃったんです。"え? 今が令和って知ってるかな!? 令和にそんな録り方はしないでしょ......"って思いましたね(笑)。

-そこまで弦楽器隊が生のグルーヴを重視したレコーディングをしていたとなると、ドラマーである虎丸さんからしても、この「FAKE in PHANTOM」では他の曲とは異なるアプローチをしていく必要があったのではありませんか。

虎丸:それがですねぇ。僕は生まれる前からハード・ロックとヘヴィ・メタルばっかり聴いてきた人間なんで、これまでジャズというのをほぼほぼ聴いたことがなかったんですよ。

-生まれる前から? 胎教音楽がハード・ロックとヘヴィ・メタルだったのですか??

虎丸:はい、うちの父親がそういう音楽の好きな人なんです。だから、今回「FAKE in PHANTOM」をレコーディングすることになったときは、とにかく今の自分がやれることをやるしかない! っていう感じでしたね。生まれて初めてジャズに挑戦しました。

志記:ハード・ロックやメタルと違って、ジャズってパーカッション系の楽器とドラムの絡みとか融合の度合いが結構大事ですからね。虎丸にはそのあたりを意識しながら叩いてください、ということをお願いした感じでした。

虎丸:自分的に難しいなと思ったフレーズに関して"ここだけ変えてもいいですか?"って志記さんに聞いたんですけど、それは"ダメ!"って言われちゃったんでなんとか頑張って叩くようにしたんですよ(苦笑)。大変でしたけどいろいろ勉強になりました。

-そうこうしてバックトラックができあがっていくなか、これだけコンセプチュアルにして物語性の強い「FAKE in PHANTOM」の歌詞を書いていくうえで、咲吾さんが留意されたのはどのようなことでしたか。

咲吾:今回の"警察と怪盗"を歌詞で描いていくのにあたって、僕は前に警察署でやってる剣道の道場に通っていたことがあったし、そこで警察署の人たちと話す機会もよくあったんで、専門用語とかも含めて警察側のことに関してはある程度の知識はあったんですよ。でも、怪盗ってなるとなかなか知り合いにはいないですからね(笑)。だから、どうしても「FAKE in PHANTOM」のほうは"名探偵コナン"とか"ルパン三世"みたいなフィクションの世界を思い浮かべながら、想像して書いていった感じになりました。

-衣装も「FAKE in PHANTOM」のほうの写真やMVでは、アルセーヌ・ルパン風のクラシカルなデザインを現代的にアレンジしたものを纏われていますものね。

咲吾:単にものを盗む泥棒ではなく、奪い去る過程に芸術性があったり、鮮やかな手腕で目的を果たして去っていく華麗な怪盗、っていうものを描きたかったんですよ。まぁ、実際にやってることは犯罪になっちゃうんでしょうけど、どこかでみんなが憧れちゃうようなカッコ良さを表現したかったんです。あとは、もうひとつ「FAKE in PHANTOM」には"恋心を奪っていく"っていうストーリーも重ねていくようにしましたね。

-となると、歌っていくときも「FAKE in PHANTOM」は演じるようなスタンスに近かったということになりますか。

咲吾:そうですね。まずは「ハイ逮捕」と「FAKE in PHANTOM」では明らかに声色を変えてます。具体的に言うと「FAKE in PHANTOM」のほうは、自分の中でのカッコいい歌い方をしてますね。