INTERVIEW
BabyKingdom
2025.03.11UPDATE
2025年03月号掲載
Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
かつては官職であった陰陽師。今も実在はしているそうだが、その詳細は謎に包まれているとも言えよう。"MUSIC THEME PARK"を標榜するBabyKingdomが、このたび生み出した新アトラクションは、かの安倍晴明をモチーフとしたその名も"SEIMEI"。あえて昭和時代のヴィジュアル・メタルを下敷きにし、和の旋律とBPM168のボム・ブラストを融合させた彼等の新境地は、もはや"カッコ良すぎる"くらいにカッコいい。べびきん(BabyKingdom)の張った結界に漲る力を感じよ!
メタルってスポーツなんやなと改めて実感しました
-"MUSIC THEME PARK"を標榜するBabyKingdomは、これまでも様々な世界、それぞれのテーマを通して斬新且つ楽しいアトラクション(楽曲)を提示してきておりまして、前回のシングル『CALAVERAS/サルサルーサ』(2024年10月リリース)はメキシコにおける"死者の日"がモチーフとなっていましたけれど、なんと今回のシングル『SEIMEI』は日本の平安時代を背景とした、陰陽師 安倍晴明にまつわるストーリーを作品化したものなのだとか。
咲吾:僕等は以前にも、『忍☆すぱいちゅ』(2020年)と『我武者ライジング』(2023年)という和をコンセプトとしたシングルを出したことがあるので、和モノとしてはこれが3作目になるんですけど、音楽的にはそれぞれカラーが違うんですよね。例えば、『忍☆すぱいちゅ』は忍者をテーマに和とポップスの融合をしつつ、かわいい雰囲気を目指しましたし、『我武者ライジング』では武将をコンセプトにしながら、和とハード・ロックの融合に挑戦して熱さを醸し出していったんですが、今回の『SEIMEI』では陰陽師の物語を描きながら、志記からの提案で"和とメタルを融合していこう"ということになったんです。雰囲気としては、クールで凛とした空気感を出していったんですけど、メタルの部分をかなり追求したせいもあるのか、仕上がりはちょっと"真面目すぎる"ものになったかもしれません。
志記:悪く言うと、BabyKingdomとしてはカッコ良すぎるものになっちゃいました(笑)。
咲吾:そこは長年べびきんをやってきた弊害みたいなものでもあるんでしょうね(苦笑)。
-たしかに、べびきんは毎回、サウンドメイクにこだわりながらもエンタメ性の部分でも振り切っているので、楽しさや面白さを前面に打ち出した作品が多いのも事実ですが、この『SEIMEI』のようにカッコいい方向へ全振りするのも大変素晴らしいことだと思います。新たな一面を提示している印象もあり、実に新鮮ですよ。
志記:良かった。そう言っていただけるとありがたい。
咲吾:正直べびきん的にはこういうのにあんまり慣れてないところもあるんで(笑)、"ほんとにこれでいいんかな!?"って思うところはあるんです。でも、今回はカップリングの「水天一碧」と「花鳥風月」(※通常盤 B type収録)も含めて、"ちゃんとカッコいいべびきん"を作品という形で表してみました。僕等も今年で9周年に入ってきて、次は10周年ですしね。ここでバンドとしての凛とした姿を見せたかったっていう気持ちもあります。
-陰陽師がモチーフになっているだけあって、表題曲「SEIMEI」にはミステリアスさも加味されているように感じます。
咲吾:まさに、陰陽師っていうのは小説とか映画とかでも空想で描かれることが多いテーマですからね。実際には天文学者だったという話もありますけど、そっちにフォーカスしちゃうと夢がない感じになってしまうので、べびきんも、今回はいろんなフィクション要素を入れながら安倍晴明を描いていくことにしたんです。
-このたび音楽的な面で「SEIMEI」の軸になっているメタル要素に関しては、前作のカップリング曲「AVARITIA」(※B type収録)でも具現化されていたものでしたよね。志記さんがインタビュー(※2024年10月号掲載)にて、"バンドとしてのカッコ良さに振り切った曲を入れたい"とおっしゃっていた記憶があります。つまり、「SEIMEI」とは「AVARITIA」での経験をさらに活かした曲ということになりますか?
志記:そういう部分もあるんですけど、それ以上に今回は、『CALAVERAS/サルサルーサ』を出したことで貰えた海外の方々からの反応が大きく影響してます。というのも、あの(「CALAVERAS」の)MVを公開したときに、自分たちが予想してた500倍くらいの熱量で、"メキシコの文化を日本人のBabyKingdomが表現してくれたことがとても嬉しい。ありがとう!"みたいなコメントをYouTubeの公式チャンネル宛てにたくさんいただいたんですね。で、そのときに感じたのが、メキシコの皆さんはそれだけ自国の文化に対する自信と誇りを持っているんだろうな、ということでもあったんですよ。じゃあ、逆に僕等が"僕たちのこういう文化がすごいんだ! カッコいいだろ!"って打ち出せるのは何かな? と考えたとき、陰陽師という和の世界を提示しようってなったわけなんです。しかも、そこにメタルの要素を融合させるのであれば洋楽的なメタルではなく、そもそも今の僕等がいるヴィジュアル系のシーンに関しては、遡ったところにメタルのサウンドがあると思っているので、この「SEIMEI」には、昭和の時代から始まった日本ならではの独特なヴィジュアル系のメタルを、1つの要素として取り込むことにしました。"僕たちの文化はこれだ"という明確な意思表示をしたかったんです。
-なるほど、そういうことだったのですね。なお、このあたりは諸説あると思うのですけれど......今し方志記さんのおっしゃった、"昭和の時代から始まった日本ならではの独特なヴィジュアル系のメタル"とは、いわゆるX JAPANを始祖とした流れであると考えてよろしいでしょうか。何しろ彼等は、シングル『紅』で、メタル・チューンを日本のトップ10チャートに送り込んだバンドでもありますし。
志記:僕もそこはそういう認識ですね。とはいえ、今現在って、そういう意味での古典的なヴィジュアル・メタルは、廃れちゃってるところがあると思うんですよ。
-近年だと、メタルはメタルでもメタルコアがほぼ主流ですものね。
志記:やっぱり、海外でそれが流行ってるからというのは大きいんだと思います。それに、いろいろ新しい方向を試していきたいって気持ちもすごくよく分かるから、別にこれは今のシーンの流れがいいとか悪いとかそういうことではないんですよね。むしろ、今まであまりメタルをやってこなかった僕たちだからこそ、「SEIMEI」では、ヴィジュアル系の原点の1つであるヴィジュアル・メタルへのリスペクトを、音にしたかったんです。
-だとすると、日本のヴィジュアル・メタルに必用不可欠なファクターは、どのようなものであると志記さんは考えられたのでしょうか。
志記:僕や虎丸はもともとメタル好きな人間ですし、そういう激しさが大事なのは当然としても、ヴィジュアル・メタルなのであればそこにわびさび、ヨナ抜き音階、あとは歌謡曲的なメロディや哀愁のあるコード進行を絡めていくことも大事でしたね。
-虎丸さんは以前インタビューで、胎教の音楽からしてメタルだったという生い立ちを紹介してくださいましたけれど、今回の「SEIMEI」でヴィジュアル・メタルの音を表現していく際には、ドラマーとしてどのようなプレイを特に意識されていたのでしょうか。
虎丸:まずですね、BPMで言うと「SEIMEI」は168で、表のブラストビートみたいなボム・ブラストが入ってくる感じなんですね。それって要は、人体にとって結構ギリギリなんですよ。なんなら、やろうと思っても中にはできない人が出てくるゾーンに入ってるというか。だから僕、志記さんに"なんで168にしたんですか? せめて164にしてくれ"ってお願いしてみたんです。そうしたら、"いやこれな、和風の曲やから「いろは=168」にしたかったんや"ってドヤ顔で言われました(苦笑)。
-語呂合わせもありきでの168......! それは痺れますね(笑)。
虎丸:すごいこだわり方だなって思いましたよ。僕としては、"さすがにそこのこだわりまでは聴いてる人に伝わらんやん......"とも思いましたけど、"いろは"にしたいっていうことならもうそれはしょうがないんで(笑)、なんとか僕の肉体のギリギリを攻めたボム・ブラストをできるように、めちゃくちゃ練習して頑張りました。ということで、ドラマーとしては、イントロの"ダドダドダド"って必死に叩いてるボム・ブラストに、ぜひ注目してほしいです。フレーズとしては、そこまで難しいわけではないんですよ。キツいのは筋力的な部分の話で、スクワットをセットで分けずに100回繰り返す的なスタミナが必要なので、メタルってスポーツなんやなと改めて実感しましたねぇ。
咲吾:そういえば、最近対バンするときに、いろんなドラマーさんたちと虎丸が話してるのをよく見かけるんですよ。"こういうボム・ブラストの場合、自分やったらどう叩く?"みたいな意見を聞いて情報収集してるよね?
虎丸:してるしてる。これからライヴでやっていく上で参考にしたいなと思ってるんですけど、たまに意味分からんこと言われて余計に混乱することもありますね。でも、収穫も多いんできっと次のツアーではそれを活かせるはずです。
-では、もにょさんにはペース・パートについて伺いましょう。和風ヴィジュアル・メタルな「SEIMEI」を弾いていく上で、重視されたのはどのようなことですか。
もにょ:大事なのは疾走感であり、このリズム感だと思うんですけど、このところのへびきんが作ってきた『FUNNY∞CIRCUS』(2024年3月リリースのアルバム)や、『CALAVERAS/サルサルーサ』って、ベースがどれも激ムズやったんですよね。ところが、ここだけの話「SEIMEI」は、久しぶりにベースは結構簡単なんです(笑)。
-記事になる以上、全然ここだけの話にはなっていませんけれども......(笑)。
もにょ:とりあえず、志記さんも曲を持ってきたときに"お兄ちゃん、ごめんな。ベース難しくしたろと思ったけど、これくらしいかできんかったわ"って言ってたんですよね。もちろん、僕は"ありがとう! これはライヴで楽しく弾けるぞ!"ってなりました。このくらいシンプルだと、虎丸みたいに筋トレを突如として始めなくても弾けます。最近、虎丸は楽屋でようスクワットしてるんですよ(笑)。
咲吾:それが、あれにはあんまり意味はないみたい。
もにょ:えっ、そうなの!?
虎丸:あれは急に思いついてなんとなくやってるだけでーす。回数関係なく、1日10分間連続でスクワットするっていうことを続けてまして。
志記:終わった後"足プルプルや......"って言っとったけど、別に「SEIMEI」とは関係なかったんか(笑)。
虎丸:"「SEIMEI」のために!"とかではないですね(笑)。
-話は前後しますが、簡単でシンプルとはおっしゃったものの、「SEIMEI」の間奏にはベース・ソロが入ってくる場面もありますよね。あのくだりについて、もにょさんがどのように向き合われたのかも教えてください。
もにょ:あれは、僕の中で初めて弾くタイプのベース・ソロですね。これも志記先生から貰ったデモに沿って指定通り弾いているんですが、ライヴでどんな響きになっていくかというのは自分としても楽しみなところです。