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INTERVIEW

BabyKingdom

2024.03.12UPDATE

2024年03月号掲載

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

ピエロに曲芸師、猛獣使いとライオンまで。様々な出し物で人々を魅了するあのファニーな一団の繰り広げるショーが、今ここに開幕した。自らを"MUSIC THEME PARK"と標榜するBabyKingdomが、3rdフル・アルバムとして発表する新しいアトラクション『FUNNY∞CIRCUS』のコンセプトは、その名の通りとなるサーカス。徹底したエンターテイメント性と、隙なく練られた音楽性を巧みに両立するBabyKingdomの手腕が、このアルバムでは今まで以上に発揮されていると言っていいだろう。天幕のもとに生み出される閉鎖的な異空間において、その場に立ち合う者たちは必ずや様々な驚き、そして楽しみを存分に味わえるはずだ。


ピエロが"笑われる"から"笑わせる"存在になる瞬間


-BabyKingdomにとっての新アトラクションであり、3rdフル・アルバムとなる『FUNNY∞CIRCUS』には、これまでの約2年間に発表されてきた「満天モンキーウェイ」「友達ロケンロー!」「ダクラメント」「我武者ライジング」「ハイ逮捕」「FAKE in PHANTOM」「PENGUIN DIVE」といった珠玉のシングル曲たちと、書き下ろしの新曲たちが詰まった充実の作品に仕上がりました。ちなみに、今作では"FUNNY∞CIRCUS"というタイトル通りに"サーカス"をコンセプトにしていくことになったそうですが、その方向性を定められたのはいつ頃のことだったのでしょうか。

咲吾:もともとサーカスっていうコンセプトでBabyKingdomとしてのアトラクションを作りたい、という気持ちはずっとあったんですよ。何しろ、僕らは"MUSIC THEME PARK"BabyKingdomですからね。だから、せっかく作るならシングルではなくアルバムのタイミングまでこのコンセプトは取っておこうと思って大事にしていたんです。

-表題曲となる「FUNNY∞CIRCUS」はMVもYouTubeにアップされておりますが、サーカスをイメージさせる楽曲作りをしていくとなった際、ここにはどのような音楽的要素を詰め込んでいくことになったのでしょう。

咲吾:詳しいことは曲を作った志記から説明があると思うんですけど、当初は表題曲の候補が3つくらいあったんです。しかも、それがすべてリズムはシャッフルだったんで、メンバー内の共通認識としてもサーカスを表現する曲はそのリズムでいきたい、というのがあったんじゃないかと思います。

もにょ:流れ的にはまず候補曲がふたつあって、結果的"表題曲はそのどっちでもない"ということになり、最後にできたのが「FUNNY∞CIRCUS」だったんですよ。

志記:もっと詳しく言うと、今回のアルバムの最初に入れることになった「Burning FIRE!」は当初の2曲のうちの1曲でしたね。そして、もう1曲のほうは6曲目の「ハーレクインの憂鬱」で、これもほぼ同時期に作っていたんです。ただ、どっちも曲としてはいいんだけど表題曲としてはちょっとしっくりこないところがありつつ、実は途中段階までMVは「Burning FIRE!」で撮ることになっていて、映像制作会社の方にも曲はもう投げるところまで行ってたんですね。でも、撮影当日までの2日くらいはギリギリ時間があったんで、改めて咲吾に"もうちょっと時間が欲しい"とお願いして。たしか2日後に滋賀でのライヴ("べびきんと行こう日本の良い所ツアー『COUNTRY ROAD 2023』")があるっていうなかで、出発までもう24時間は切ってたんですけど、必死になって作ったのが「FUNNY∞CIRCUS」でした。

-かなり追いつめられたなかでの真打ち登場が叶った、というわけですね。

志記:いやー、めちゃめちゃ追いつめられてました(苦笑)。サーカスの主役であり脇役でもあるピエロを、音楽や曲でどう表現したらいいか? というのが自分の中でなかなか"これ"という答えとして見つけにくくて。最後にいろいろな資料とかを見ていたときにやっと見つけたのが、まさにこの「FUNNY∞CIRCUS」に繋がるものだったんですよ。

-華やかなショーとしてのサーカスというイメージがキャッチーなメロディに反映されている一方で、サウンドとしての味つけや曲展開の面ではどこか捻じれた雰囲気も織り込まれていて、そうしたところからはサーカスという文化の持つ複雑な影をも感じ取ることができるように思います。

志記:びっくり箱みたいな感じで、1曲の中にいろんなリズムやメロディをふんだんに混ぜ込みたかったんです。これに関しては我ながらBabyKingdomならではの曲になったな、と思ってますね。

-「FUNNY∞CIRCUS」に内包されている"いろんなリズム"を表現していくのにあたり、ドラマーである虎丸さんが重視されたのはどのようなことでしたか。

虎丸:とにかく速い曲なので、ついていくのに必死っていうのがまずありました(笑)。そして、新しい要素としてこの曲にはタンゴのリズムが入ってるんですよ。やっぱり、それを叩くのは自分にとってすごく難しかったです。人生で初めてタンゴに挑戦しましたね。でも考えてみると、子供の頃にタンゴって実は聴いたことあったなという記憶はあって、今回はそれをちょっと思い出しながら叩いたところもあったんですよ。

-それってもしや......。

虎丸:「黒ネコのタンゴ」です(笑)。

-なるほど。そもそもは1969年にイタリアで童謡として生まれたのが「黒ネコのタンゴ」らしいのですが、たしかに日本人の多くにとってのタンゴ原体験はアレであることが多いかもしれません。

志記:そこをサーカスの話に絡めると、いわゆるサーカスの発祥っていうのはイギリスやったと思うんですね。だけど、サーカスってひとつの場所だけじゃなくて巡業をしていくじゃないですか。そういう意味で、いろんな国のリズムを1曲の中に取り入れることでサーカス感っていうものを表したかったという意図もあるんです。3拍子のロンドだったり、アルゼンチン・タンゴ、スパニッシュな要素だったり。ここには目一杯、盛れるだけ盛り込みました(笑)。

-そんな欲張り楽曲「FUNNY∞CIRCUS」をプレイしていく際、もにょさんが意識されていたのはどのようなことだったでしょう。

もにょ:フレーズはいつものように志記さんが作ってくれたので、僕はそれを忠実に弾いていくことを心掛けました。でも、これだけ1曲の中にいろいろな要素が入っているとなると、部分ごとにリズムの取り方というのは変わってきますからね。その都度、志記さんから"お兄ちゃん、そこはこういう感じで"、"こっちはこういうリズムの取り方で"ってかなり細かく厳しく言われましたねぇ。譜面に志記さんから言われたことをすべてメモしていった結果、今までで一番の赤文字だらけな譜面になっちゃいましたが(笑)、そのぶんこの曲ではいつも以上に作曲者の意向を忠実に再現しながらプレイしていけたと思います。

-そのようにしてオケができていった一方、咲吾さんは「FUNNY∞CIRCUS」の歌詞世界を構築していくことになられたのだと思います。それこそ、サーカスというのはたくさんの出し物が繰り出されてゆく空間で、まさしくこの詞には空中ブランコの様子や、ライオンが輪くぐりをしていたりと、映像的な描写もたくさん織り込まれております。もっとも、咲吾さんがここで一番伝えたかったことの核はそことも少し違いますよね?

咲吾:単にサーカスのことを歌うっていう以上に、ここで何を伝えるべきかっていうことに関しては今回ちょっと悩んだんです。詞を書く前にはサーカスのピエロとか道化師について調べたりもしたんですけど、その由来は諸説あるけどあんまり明確な話が見つからなかったんですね。そうなったときに、僕がポイントとして考えたのがピエロの顔にある涙マークについてだったんですよ。

-どんなに笑顔で曲芸をしていても、大粒の涙が顔にペイントされているというのはなんとも不思議な光景ですものね。

咲吾:なぜピエロがああいうメイクをするようになったのか? ということについてはほんとにいろんな説がありすぎるんで、今回は自分自身にあてはめて捉えてみることにしたんですよ。ピエロも自分も人前に立つ演者として考えると、日常生活で何か悲しいことがあったとしても、それをステージで出すことはしないで隠すとか、そういうところはきっと共通しているんだろうなと思ったんです。あとは、やっぱり"笑わせる"と"笑われる"は全然違うものですからね。そこについても考えました。

-どちらかというと、後者がピエロにあたるのでしょうかね。

咲吾:道化としてバカなことをやって"笑われる"っていうところから始まったのがピエロらしいんで、たぶんそうなんだと思います。つまり、あの涙は"こんなバカな俺を見て笑ってくれ"っていう哀しみを表したものだという説があるんですよ。でも、例えばピエロが逆立ちをしたとしたら、あれって涙ではなくて風船にも見えますよね。実際、ピエロって子供たちに風船を配ったりもするし。

-涙が逆位置で風船に......その発想はなかったです。

咲吾:そうなったら、ピエロは"笑われる"から"笑わせる"存在になるじゃないですか。その瞬間を「FUNNY∞CIRCUS」の詞で表現したかったんです。サーカスの楽しさと、ピエロがどんな気持ちでみんなを笑わせようとしているのか? っていうこと、その両方をこの詞には詰め込みました。

-"みんな地球(タマ)乗り"というフレーズもあることを考えると、この詞はサーカスという閉鎖的な空間を超えて、人生そのものを描いたものでもありそうです。

咲吾:BabyKingdomの場合、前から"主役はみんなだよ"っていつも言ってますしね。サーカスを観に来るお客さんたちにもそれぞれ人生があって、同じように"地球(タマ)"に乗ってて、これはみんなが主役のショーなんだよっていうことを歌いたかったんです。