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INTERVIEW

BabyKingdom

2025.03.11UPDATE

2025年03月号掲載

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-そのベース・ソロから、リレー形式で始まるのはギター・ソロです。志記さんとしては、ここで「SEIMEI」の中に1つの見せ場を作りたかったということになりますか。

志記:これは僕の中で、『FUNNY∞CIRCUS』と『CALAVERAS/サルサルーサ』から、考え方が変わったところなんですけど、今ってギター・ソロ不要論みたいなものがあったりするじゃないですか。それってたぶん、メンバーにギタリストがいないユニットやグループだと、MVにしたときに意味がないっていう部分で省かれがちなところもあるのかなと思うんです。べびきんの場合は4人メンバーがいるわけですから、その強みを活かして、メンバーそれぞれの見せ場をMVで作っていくということができますからね。華やかなヴィジュアル系らしく、見た目と音をより連動させた分かりやすさを出していきたいなと思ったんですよ。そういうところから今回「SEIMEI」にはベース・ソロとギター・ソロを入れてますし、音的にドラムが目立つところではMVもそれと連動させてます。

-ことギタリストとしての観点からいくと、志記さんが「SEIMEI」の中で留意されたのはどのようなことだったでしょうか。テクニック的な部分で持てるものを全て盛り込んだというようなところもあったりしますか?

志記:いえ、僕的には簡単なことばっかりやってます。基本的にこれは、手元を見なくても弾けるようにということを考えながら作っていったフレーズたちです。曲調的にポップスの要素が入った曲で弾くような細かいカッティングとかがない分、とてもプレイしやすいんですよ。ここは年末にファイナルを迎えた"winter oneman tour『PARADISE OF THE DEAD』"で感じたことが反映されている部分で、あのツアーでは、ライヴハウスに立ったときのバンドのカッコ良さを、もっとフィーチャリングしていきたいなと思ったんですよね。ギターがギャンギャン鳴ってるようなところにバンドサウンドの醍醐味があるわけだから、大音量を響かせる=細かいことはできるだけ避けたほうがいいっていう結論が導き出されたんです。

-ライヴを想定した上でのアレンジを重視されたのですね。

志記:ここからはエンジニア的思考回路の話になってくるんですが、あんまり細かいことをやっても、ライヴハウスで聴いてるお客さんにはノイズとしてしか届かないそうなんです。なので、今回の「SEIMEI」では1つずつの音をできるだけ大きく捉えていくようにしました。なので、実は『FUNNY∞CIRCUS』のときと比べると音数自体は半分以下になってます。

-音圧や迫力を減衰させることなく、音数が半分になったというのはすごいですね。

志記:だからこそ、ギターもより速い感じで聴こえるっていうのがあるでしょうね。1つずつの音の持ってる存在感は強いけど、ゴチャゴチャはしてないんです。耳につきやすい音を、さらに目立たせるようにしてあるっていう言い方もできます。あと、これは余談になりますが、イントロに入ってる速いギター・フレーズは、お正月によく聴く「春の海」(宮城道雄)を分解して、速くして繰り返してるものですね。和の雰囲気を出すために入れました。

-雅楽的なニュアンスは感じましたが、まさか「春の海」だったとは。

志記:1曲の中に1つは必ず新しいことや、今までにやってなかった発明を入れたいっていうのは自分の中にありますからね。それを今回もクリアできました。それから、今回の作品に関しては、僕等が以前B.P.RECORDSっていう事務所に所属していた経験もかなり大きいと思います。シーンの中で和風ヴィジュアル系としてトップを走っていた己龍さんが先輩としていらっしゃって、当時の僕は参輝(酒井参輝/痛絶ノスタルジック代弁第壱人者兼ギター)さんからすごく良くしていただいてたんですよ。和楽器の使い方というものを徹底的に教えていただいてたんです。今回はその知識もフル活用してます。

-ヴィジュアル系文化には伝統芸能としての側面もあるように思えますし、こうして己龍からBabyKingdomに伝承されたものがあるのは素敵なことですね。

志記:そうですね。ほんと、とてもありがたかったです。

-さて、ここからは「SEIMEI」の歌詞世界についても伺ってまいりましょう。咲吾さんがこの詞を書いていかれる上で、大切にされたのはどのようなことでしたか。

咲吾:いつもだったら歌詞とメロディは同時進行で作っていくんですけど、これは古語を使う必要がある歌詞だったので、まずは古語について知るところから始めていきました。そこから安倍晴明にまつわる伝説もいくつかピック・アップしていって、物語を作っていったんですよ。だから、今回はメッセージ性がある歌詞というよりは、僕なりの晴明像をBabyKingdomの楽曲に落とし込んだものって感じですね。ちなみに、ワンコーラス目で描いているのは鬼女のエピソードで、ツーコーラス目では晴明の生まれ育っていくときの話を歌ってます。この詞では聴き手に情景を伝えていきたかったので、ちょっと絵本を描いていくような感覚に近いものがありました。

-いかんせん平安時代の人物ですし、謎も多い人物ではあるのですけれど、この詞を書き上げていくなかで、咲吾さんは安倍晴明に対してどのような印象を持たれました?

咲吾:会ったこともないし見たこともないんで、調べた範囲での話で言うと、困っている人たちのために動くことによって、自分自身は悲しかったり、寂しかったりする人生を送っていたところのある人だったのかなって感じました。人とはちょっと違う能力を持つばっかりに、周りからは妖(あやかし)として見られたり、偏見を持たれたりっていうこともあったのかなと。痛みが分かるからこそ人の痛みに寄り添える人だったんじゃないか、みたいな妄想をしながら僕の頭の中ではオリジナル・アニメが生まれてました(笑)。

-雨を降らせたり、病気の人を治したりということも実際にあったんですかね?

咲吾:どうなんですかね? そうだったらいいのになって僕は思ってます。それに、現代にも陰陽師の方はいらっしゃいますし。祓うってこともやられているそうで、そういう方の動画もYouTubeで観て勉強しました。で、この「SEIMEI」では僕が真言を唱える部分もあるんですが、あれはあえてリアルな真言とは違うものを入れてます。本当の真言はむやみに唱えてはいけないそうで、映画とかアニメとかでも、作品用に存在しない真言をフェイクで作って使っているらしいです。

-どうりで"御伐折羅金便蘇婆訶"とググっても出てこないわけですね!

咲吾:だって、その"金便"ってゴールデンウ○チってことですもん(笑)。

-スピやオカルト方向に傾きすぎることなく、べびきんならではの茶目っ気もしっかり入っていてさすがです(笑)。また、MVも実に凝ったつくりですよね。咲吾さんが安倍晴明、志記さんが晴明の友人と創作で描かれている近衛中将にして雅楽家の源博雅、もにょさんが管狐(くだぎつね)、虎丸さんが式神にそれぞれ扮されています。この配役は絶妙ですね。

志記:僕は実際に咲吾と友達っていうところからスタートしてますし、まさに音楽家でもあるので、妙に一致したところがあるなとは思います。

もにょ:管狐は伝書鳩的なものみたいなんですけど、見た目的には妖狐に見えるところもあるので"セクシーな狐だったら虎丸やろ!"っていう意見もあったんですが(笑)、今回の虎丸は人間とは違う実態のない式神で、僕は密偵みたいな感じだと思ってください。

志記:僕と咲吾は人間側で、もにょと虎丸は人間じゃない側ってことです(笑)。

-承知いたしました。それから、今作には「SEIMEI」に似つかわしいカップリング曲も収録されておりますので、こちらについても少しずつ解説をいただけますと幸いです。

志記:「水天一碧」は僕が書いてまして、曲としては、ライヴの中で"もっとこういう曲があればいいのにな"と感じた気持ちを形にしたものですね。べびきんには"バラードの後にやったときにハマる曲"というのがほとんどないので、それを作りたかったんです。

-この「水天一碧」では「SEIMEI」にも入っている鈴の音が使われていますよね。

志記:そこは詞も含めて僕の個人的な趣味が出ているところで、京都の嵐山にある鈴虫寺のイメージから生まれたのが「水天一碧」だからなんですよ。あそこの竹林で鳴ってる鈴の音がすごく好きなので、この曲の中では神楽鈴を使ってその様子を表現してます。で、神楽鈴は雅楽に使われる楽器なので今回は「SEIMEI」もそうですし、もう1曲の「花鳥風月」にも入れてあります。

咲吾:個人的に、これは志記の作ってきたボカロ? みたいなAIの女性ヴォーカルを超える歌を歌ってやろう! っていう気持ちで歌った曲でしたね。レコーディングにはヴォイス・トレーナーの先生も帯同してくださっていて、志記ともどもかなりスパルタな感じではあったんですけど(苦笑)、そのおかげでとても良いテイクが録れました。

虎丸:これはもうタイトル通りというか、水が流れるように叩くことを意識した曲でしたね。変に目立たず、流れを止めないきれいでクリアなドラムを目指しました。

もにょ:この曲もベースは何も難しいことはなかったです。その代わり、「花鳥風月」がめっちゃ難しかったんですよ。

-やはりそうでしたか。「花鳥風月」は非常にお洒落なジャズっぽいテイストのサウンドとなっていますし、キーとなっているのはベース・フレーズですものね。

咲吾:志記いわく、これは和とジャズを融合させた曲らしいです。僕が原曲を貰ってそれにメロディを付けて渡したときには、ここまでジャズ要素はなかったんですけど、戻ってきたら完全にジャズになってて、"あれ? 君、誰だっけ?"な状態になってました(笑)。でも、和とジャズっていうのは新しくて面白いですよね。

志記:咲吾から来たメロディと歌詞を聴いてたら、ふと頭の中に流れてきたのがジャズやったんですよ。譜面を書くまでもなく頭の中で鳴ってたんです。

-虎丸さんは「花鳥風月」に対してどのようにアプローチされたのです?

虎丸:めちゃくちゃデカいイグアナみたいな四足歩行の動物が地を這うような感覚のドラムをここでは叩いてますね。そして、僕はその時点で"ベース、かわいそすぎやな......"って思ってました。ね?

もにょ:いやほんとに。虎丸から"もにょさん、あれ難しいけど大丈夫?"って心配されましたからね(笑)。ある意味"やっと来た、僕のターン!"っていう曲ではあるんですけど、レコーディング前は練習するのに必死でした。でも、このお洒落なフレーズを弾くのは楽しかったですし、これだけベースが前に出てるんで、カラオケバージョン(※通常盤 B type収録「花鳥風月 (inst)」)で聴いたときにまた違った雰囲気を感じるところも面白いんですよ。たぶんこういういぶし銀ベースを弾けるのは、今の日本のヴィジュアル業界で僕だけなんじゃないかと思ってます。

-一方、「花鳥風月」の歌詞には、日本人に共通しているであろう美意識が言葉としてしたためられていますね。

咲吾:花鳥風月という万物の美しさと重ねながら、人間として美しくいきていけたらなって想いをここでは詞として書いていきました。いろんな人にとって、何かしら刺さる部分があればいいなと思ってます。

-ここには"桜雨"という言葉も出て来ますが、今回のシングルを携えての春ツアー"spring oneman tour『悪気滅殺~陰陽道~』"の展望についても、最後に伺っておきましょう。ここはフロントマンである咲吾さんからお願いいたします。

咲吾:去年の"winter oneman tour『PARADISE OF THE DEAD』"は、我々にとってすごく得るものの多かったツアーで、改めて自分たちはライヴ・バンドなんだ! という意識を強く持てたんですよ。それまでは結構エンタメ寄りなところもあったんですけど、ここからはライヴ・バンドでありロック・バンドであるBabyKingdomがまずしっかりあって、その上にエンタメがプラスアルファとして乗っかっていくという意識でやっていくことになると思います。もちろん、BabyKingdomらしく楽しい空間を各地で作っていきたいですし、ツアー・タイトル通り僕等が悪いものを祓って、良い気だけをみんなに持って帰ってもらえるようにしたいです。"悪気滅殺"します!