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INTERVIEW

BabyKingdom

2025.10.14UPDATE

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:山口 哲生

究極のエンターテイメントを追求しているヴィジュアル系ロック・バンド、BabyKingdom。これまで様々なコンセプトを掲げたアトラクション(=楽曲)を作ってきた彼等だが、このたびリリースした両A面シングル『ALPHA来夜/ヒラケゴマ』では、"アラジンと魔法のランプ"や"シンドバッドの冒険"でお馴染みの、"千夜一夜物語"をフィーチャーした。聴けばたちまちアラビア風の宮殿が目の前に立ち上がってくる、ミステリアスな「ALPHA来夜」と、はちゃめちゃに賑やかでポップな「ヒラケゴマ」。本作も聴き手を存分に楽しませてくれるキャッチーさはありながらも、随所にこだわりが詰まりに詰まった一枚になっている。9周年ライヴを終えて、10周年に向けて走り始めた4人に話を訊いた。

-『ALPHA来夜/ヒラケゴマ』は"千夜一夜物語"をフィーチャーされていますが、今回このコンセプトを選んだ理由というと?

咲吾:もともとアラビアとか"アラジン"とか、そういう世界観をやりたいなっていう話はずっとあったんですよ。そのなかで今回はタイミングが合ったというか。"千夜一夜物語"って、語り手の女性が王様に向かって、自分の命を繋ぐために一晩ずつお話を紡いでいく、明日を迎えるためにページをめくっていくという物語で。僕等はこの前9周年のライヴ("9周年記念ワンマンツアー『9&AGGRESSION』")を終えて、今は10周年を迎える10年目の年なんですけど、一つ一つ着実に11年目、12年目と続けていけるようにしたいなという気持ちも大きくて、このコンセプトを選びましたね。

-となると、結構温めていた感じもあったんでしょうか。

咲吾:コンセプトもそうなんですけど、音楽的なバランスもいつも結構考えていて。昔、古代エジプトの曲を出したことがあるんですけど、今回のアラビアと音階的にちょっと似てくるところもあったり、曲的にマイナー調が続いたから次はポップに行きたいなと思ったり、そういうバランスも含めて、やっと今回って感じでもありますね。

-古代エジプトがコンセプトだったのは「アンクドファラオ」(2018年リリースのシングル表題曲)ですよね。

咲吾:そうですね。「アンクドファラオ」はハード・ロックというか、メタル要素のある曲だったんですけど、今回はそこと被らないように、アラビア音階を使ったダンス・チューンにしようっていうのは、曲を作るにあたって志記と話していて。自分自身の表現としては、ちょっとミュージカルっぽいといいますか。ライヴでショーやミュージカルに寄せた表現ができるものがあっても、面白いんじゃないかなと思って。なので、歌い回しはちょっとミュージカルっぽいというか、そんなイメージが浮かぶようなものにしていて。僕は今回語り手として歌いたいというイメージがあったので、物語を続けていこうというメッセージを伝えられるような楽曲にしようと思ってました。僕たちの今までの曲の中でも個性は強めなんじゃないかなと感じてますね。

-もともとキャラ立ちがはっきりしている曲が多いとは思うんですけど、ここ昨今の作品は色がより濃くなってますよね。

咲吾:前作の「SEIMEI」(2025年3月リリースのシングル表題曲)も、お経の部分を除くと本当にかっこいいメタルみたいな感じがあるんですけど、「ALPHA来夜」は結構曲の展開が多くて、リズムの取り方とか、情景自体がゴロッと変わっていく感じになっていて。そこは前回よりもややこしいというか、面白くて複雑な感じにはなっているかなと思います。

-志記さんとしては、アラビア音階を使ったダンス・チューンを構築していくために、ご自身の中で工夫した部分はありましたか?

志記:咲吾も言ってたように、「アンクドファラオ」との違いを分かりやすくするのがまずあって。あの曲はどちらかというとメタル・チューンなんですけど、ダンサブルなものとなると、どうしてもBPMがそこと似通ってくるんですよ。なので、キャラクター分けをしっかり色濃くしていこうと。あと、"千夜一夜物語"は中東あたりが舞台ですけど、中東となるといわゆるシルク・ロードの流れがあって。エジプトあたりから中国あたりまである流れの中間みたいなところでもあるので、そこのバランス感は気を付けながら作っていきました。

-そこで1回シルク・ロードのことを考えたところが面白いですね。

志記:ここまでいろいろやってきたので、普通のポップスを作っていたら入ってこないような伝統楽器みたいなものが、僕のパソコンの中に増えすぎていて。"この楽器あるかな......"と思ってパソコンの中身を検索したら"あるな!"みたいな(笑)。じゃあ、今回はエジプトであればシタールとか、中国だったら二胡とかを使っていくと思うんですけど、そこは使わないでおこうとか。あと、僕の中では"千夜一夜物語"って"アラジン"の流れもあって、魔法のイメージが強いというか。エジプトの怪しさとはまた違う、魔法感ちょっと強めな感じがあるので、ぼわぁ〜んっていうあの感じを出すためにサントゥールを使ったり、ダラブッカって打楽器で16分のビートを入れることで、ダンサブルな感じを足していったりということは考えながら作ってました。

-怪しさとか重たさみたいなもののイメージは魔法から来ていたんですね。

志記:そうですね。おっしゃっていた重たさを入れるかどうかはすごく迷ったんですよ。いわゆる軽いものにするかどうかとなったときに、僕の勝手なイメージなんですけど、昔の音楽で軽いものって僕の中にはそんなにないんですよね。下をしっかり作るイメージがすごくあるから、いわゆる軽い音楽っていうのは、たぶん今の流行りの1つだと思ってて。そう考えたときに、重たいギターを入れるかどうかは最後の最後まで悩んでましたね。それがあることでちょっと昔のヘヴィ・ロックみたいな要素が入っちゃうんですけど、今回は入れても僕の中でアラビア的なところの整合性は取れたかなと思ってます。

-先程、どうしてもエジプトと似てしまうというお話がありましたけど、これまでかなりのアトラクション(=楽曲)を出してきたこともあって、被らないようにするのが少しずつ難しい状態になってきていると思うんですが、そのあたりの大変さみたいなものは結構感じますか?

志記:感じてますね。例えば、この前出した「CALAVERAS」(2024年10月リリースのシングル『CALAVERAS/サルサルーサ』収録曲)は"死者の日"がテーマで、『FUNNY∞CIRCUS』っていうアルバム(2024年3月リリース)はサーカスをテーマにしたんですけど、ヨーロッパとメキシコやから全く違うんもんやろと思っていたら、スペインの人たちがメキシコに行って、メキシコで音楽を作ってるんで、ちょっと似てるんですよ。さっきのシルク・ロードの話もその気付きがあったからでもあるんですけど、人が移動したら音楽も移動しよる! と思って(笑)。なので、場所だけじゃなくて、人の流れも含めて考えるようになりましたね。

-これまでの制作の流れもあって、世界地図と歴史年表が頭の中に入っているというか。

志記:パソコンでリストを作ってます(笑)。

-素敵です。咲吾さんとしてもそうして被らないために頭を働かせる場面は増えてきましたか?

咲吾:僕に関してはメロディと歌詞のアプローチになってくるんですけど、メロディは自分の中で縛りは作っていて。今回だったら、できるだけアラビア音階から抜け出さないようにしようとか、キーボードに印を付けてそこ以外の音は使わないようにしようとか。そういう縛りが増えることで、歌的にちょっと難しくはなるんですけども、それっぽい感じというか、分かりやすさが出てくるからあえて縛ることもあります。あとは、セリフとかを増やすことで、ちょっと遊び心を入れてみるというか......まぁ、縛りから抜け出すためにセリフがちょっと増えたところもあるんですけど(笑)。でも、コーラスで1オクターブ下の音をガーッて入れるとかして、避けながらおかずで他との違いを出したりしてます。今回はコーラス・ワークも結構面白く録れましたね。