INTERVIEW
BabyKingdom
2025.10.14UPDATE
Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)
Interviewer:山口 哲生
-(笑)志記さん、この曲はどういうところから曲を作り始めたんですか?
志記:メンバーからこんな曲をやりたいっていうのを随時募集してるんですけど、仙台に行ったときに、虎丸から"2010年代ぐらいの電波ソングみたいなのをやりたい"と話をされて。それでいっぺん作ってみようかなと思ったんですけど、やるならめちゃくちゃやってやろうと考えて、とにかくごちゃ混ぜの曲を作っていきました。ベースのスラップから始まって、めっちゃハード・ロックが来るんかなと思ったら、どギツいポップ来たな! みたいな。ロック・バンドの根幹ってやっぱりベースとドラムじゃないですか。いわゆるかっこいいビート感をイントロまでは使うんだけど、Aメロになった瞬間に電子ビートに切り替えて、Bメロになったら4分の3(拍子)になって、とにかく詰め込みまくって"さぁ咲吾さん! これに分かりやすい曲を書いてください!"っていう(笑)。
そしたら押すか引くかスライドかみたいなやつが来たんで、すげぇバカだなと思いながら(笑)、そこから間奏を構築していった感じでした。この曲は楽器よりも効果音のほうが断然多いですね。どれだけ歌詞に沿った音を入れられるかっていう。
-そうすることで電波ソング感がしっかり出ますし。
志記:そうなんですよ。そこを出していこうと思って作っていきました。
-でも、虎丸さんが、"2010年代ぐらいの電波ソング"をやってみたいなと思ったのはなぜだったんです?
虎丸:そこまで深い意図とか意味みたいなのはないんですけど、BabyKingdomの楽曲って、聴いていてわりと脳みそを使う曲が多いんですよね。例えば僕は、まぁちょろっとは分かるんですけど、英語が分からない。でも、なぜか洋楽は聴いてて楽しくて。これかっこいいなって普通に聴けるんですけど、BabyKingdomって、この歌詞がここに絡んでいて、その歌詞に合わせてドラムがこう入ってくるみたいな、ギュッと聴かないと聴き逃してしまうようなポイントが、結構多いバンドやなと思ってるんですよね。なので、そういうところとはまた違う、何も考えずに聴ける楽曲が欲しいなと思って提案させてもらいました。
-何も考えずに楽しめる曲=電波ソングだったと。
虎丸:そうですね。うちでやるのであればそういう感じだったっていう。
-実際に上がってきた曲を聴いたときにどう思われました?
虎丸:最初のデモを聴いたときは、"いや、まだまだやろ?"って(笑)。
-(笑)こんなもんじゃないだろうと。
虎丸:うん。まだあるはずやって、そこからいろんな話もして。そもそもなんですけど、この曲、ドラムを叩かないところもあるんですよ。なので、ライヴ中は踊っとこうかなと思ってるんですけど。
-それこそ"魔神マルトラ"と聞いて、ライヴのイメージをいろいろ膨らませる方もいらっしゃるでしょうね。
虎丸:そうですね。僕は"セクシーダイナマイト光線"を出せるんですけど、それを放つシーンがあるので、放ちたいと思ってます。
-(笑)もにょさんはいかがでしたか? ベースのスラップから始まる曲ですけども。
もにょ:この表現が合ってるか分からないんですけど、咲吾のメロディがいっぱい入ってるんで、最初聴いたときに咲吾ウザいなって(笑)。
咲吾:はははは(笑)。
もにょ:めっちゃお前おるやん! と思いながら聴きました。でも、そういう印象を受けるぐらい、いい意味で簡単な曲なんだろうなぁと思って。僕もレコーディングでベースを弾いてないところがあるんですよ。スラップはしてるんですけど、シンセ・ベースのところもあるんで、"ライヴどうすればええかな。踊るの無理やけどな"と思ってたら志記さんから、"ライヴはエレキ・ベースをちゃんと弾いていていただかないと疾走感が出ないんで。ドラムもないしね"って言われて。まさかのレコーディング用とライヴ用の譜面が違う状態でやってきたんで、僕にとっては難しい曲です! 油断してました!
-(笑)じゃあライヴと音源で全然印象が違うと。
もにょ:ライヴではエレキ・ベースがゴリゴリ出てくる感じで、疾走感もそこで出せるかなと思ってるので。また色が違う状態で聴けるので、ぜひぜひライヴで聴いてほしいです。
-そして、B typeには「クリティカルナンバー」が収録されています。近作のカップリングの傾向として、楽しいよりはかっこいいに特化している曲が多い印象があって。その中でも今回は熱い成分が強めだなと思ったんですけれども。
志記:これは僕の趣味です(笑)。昨今のカップリングは僕の自由枠やと勝手に思ってるんで。さっき虎丸が言ってた分かりやすさみたいなところと繋がるんですけど、ライヴのときに誰かが目立つソロ・フレーズとか、分かりやすいリードとか、視覚的にも分かりやすいところを絶対に作りたいなと考えているんです。「ALPHA来夜」だったら、重いギターも入っているけど、そっちよりも民族楽器に耳が行くと思うし、いわゆるライヴで盛り上がる曲、ライヴで輝く曲っていうのは、やっぱりロック・バンドである以上4人の中の誰かが目立っているものやなと考えてるので、自分が輝けるものを作った感じですね。
-たしかにしっかりギター・ソロもありますし。
志記:ライヴをしていて、お客さんの目線がどこに来てるのかっていうのはなんとなく分かるんですよ。ヴィジュアル系バンドとなると着飾っているので、やっぱり顔や衣装、そういうところに目線が来てるんですけど、僕がタッピングを始めた瞬間に"全員、手ぇ見るやん!"と思って(笑)。ものすごく分かりやすく、ここしか見ぃひんのか! っていうぐらい目線が来るので、じゃあそれに特化した曲を作ろうと思って作ったのが「クリティカルナンバー」です(笑)。
-はははは(笑)。虎丸さんはこの曲にどう臨みました?
虎丸:とにかく速い。もうちょっと遅くしたいな、もうちょっと遅くはならないものかなとずっと思ってるんですけど。
-未だに(笑)?
虎丸:未だに(笑)。レコーディングを終え、ライヴまでの準備期間として練習もしているなかで、もうちょっと遅くならないかなと思ってるんですけどね。とにかく速い曲で、ドラムの流れがちょっとでもつまづいたらこけちゃうので......これは咲吾から説明が入ると思うんですけど、ボクシングがテーマの曲なので、パンチの嵐を止めないように。そんな感じのイメージでドラムを叩いてます。
もにょ:こういうストレートなロックってめっちゃ好きなんですよ。SIAM SHADEさんとかが好きだったんで、そういう感じもあってめちゃめちゃかっこいいなと思って。ただ、「ALPHA来夜」で、このバンドには、ロック的な西洋音楽の音階が基本的には使われていないという話をしましたけど、改めてストレートなロックが来たときに、"僕、普通のロック・バンドがやるベース・フレーズ、めっちゃ苦手かもしれない"って気付きました(笑)。志記もそれに気付いて"お兄ちゃん、これはちょっと難しいかもしれんけど、わりと定番のフレーズの応用やから、逆にこれはできるようになっといてな?"って言われて。分かる。分かるんやけど、普段いろんなことをやりすぎて、ロックのよくある手癖みたいなフレーズに行く瞬発力がなくなってるんです。
-はははははは(笑)。
もにょ:「ALPHA来夜」はね、それこそシルク・ロードを"あぁはいはい。こっちね?"みたいな感じで移動できてたけど、この曲は"あぁ......なるほど......このフレーズ、すごくかっこいいですね!"みたいな、すごく他人行儀な感じがして。まだこのフレーズと他人なので、ライヴで披露する前には親友ぐらいになりたいなと思ってます。
-ぜひ仲良くしてあげてください(笑)。歌詞についてですが、先程ボクシングがテーマというお話が出ましたけども。
咲吾:曲を聴いた第一印象としては、分数が短めやなと思ったんですよね。最初のデモの段階では2分58秒とか59秒ぐらいだったんですけど、それぐらい短めの曲ってライヴで使いやすいなと思って。僕らのライヴは、アンコール含めて2時間きっかりやろうっていうルールを最近決めていて。例えばアンコールの曲も全部終わって1時間55分だったら、そのときに3分くらいの曲があったらもう1曲できるなみたいな。今回の曲が、ある意味ストレートでさっぱりあっさり分かりやすくて、拳をずっとぶち上げている感じで声を出すような曲やなと思ったんで、歌詞もそういう感じにしようと。 ボクシングってテーマに関しては、自分が趣味でやっているんですけど、1、2、3の後にもう1発(パンチを)出したときに、相手にパーンと入るとかするので、そういう最後の1発がすごく大事やなって思っていて。
-なるほど。
咲吾:タイトルの"クリティカルナンバー"は、あんまり聞き馴染みのない言葉かもしれないですけど、数学用語やシステム的なところで"臨界数"っていう意味で。例えば、9,999万9,999から1億に変わる瞬間の数字みたいな、その一発を出すことによって次の大台に乗っかるって意味合いなんですけど。そこは「ALPHA来夜」と同じく、9周年から10周年に向かう、9から10に変わる瞬間に、これで終わりやって自分たちで決め付けるんじゃなくて、もう一発ぶち込もうよという。+1したときに変わる世界があるってイメージを書きました。10発目では変わらないかも知れないけど、もしかしたら11発目で変わるかもしれないしみたいな。そういう曲でライヴの最後とか、途中でもいいんですけど、鼓舞したいイメージはしっかりあったから自分の中での組み立ては早かったですね。
-10月11日から、本作のリリース・ツアー"winter oneman tour 『Arabian Dream』"がスタートします。ツアー・ファイナルを12月18日にVeats Shibuyaで開催されますけども、今日のお話でたびたび10周年というワードが出ていましたが、現状もうすでにいろいろと考えられていたりするんですか?
そうですね。ただ、今はまだ10周年を迎えるというイメージではなく、9周年を終えて10周年に向けて走り出したってイメージのほうが強いです。ゴールテープを切るのではなく、アクセルを踏んだイメージのほうが自分的には強くて。これが2025年最後のツアーにはもちろんなってくるし、やっぱりスピードを出していかないと届くところにも届かないと思うので。もちろん10周年イヤーのことはバンド内でまとめてはいるし、組み立ててもいるんですけど、今は自分たちを鼓舞する気持ちのほうがちょっと強い感じはしてますね。