LIVE REPORT
Dizzy Sunfist
2024.01.22 @LIQUIDROOM ebisu
Writer : 吉羽 さおり Photographer:IWABUCHI NAOTO、ヤマダマサヒロ
昨年5月にリリースした3rdミニ・アルバム『PUNK ROCK PRINCESS』のタイトルを冠して全国ツアーを行ってきたDizzy Sunfist。今年1月からは、そのファイナル・シリーズとして東名阪のライヴを敢行、長きにわたったツアーのファイナル公演が1月22日にLIQUIDROOM ebisuで開催された。
この日のゲストは、対バン経験はあるがDizzy Sunfistのツアーには初の参加となるcoldrain。ちなみにこの前日、coldrainは"FUKUOKA MUSIC FES.2024"出演で福岡 PayPayドームのステージに立っていたという。圧倒的なパフォーマンスでドームの観客を熱狂させたに違いないが、Masato(Vo)は開口一番、"帰ってきたぞ、俺らの生息地 ライヴハウス"と気炎を上げ、ツアー・ファイナルを迎えたDizzy Sunfistを祝いながらも"(ライヴで)ボコボコにしてやる"と冒頭からメーターを振り切ったアグレッシヴさでフロアの観客を沸騰させていった。
このファイナル・シリーズの対バンは、SHANK、ROTTENGRAFFTY、そしてcoldrainとロック・シーン指折りのライヴ猛者を迎えた。作品に"PUNK ROCK PRINCESS"と冠したDizzy Sunfistの覚悟というべきものを体現する対バンであり、またゲストで招かれたバンドたちもその思いを汲んで容赦ないまでにフル・スロットルでライヴをする。
Masatoは、"いつも(ゲストで呼ばれて)本気でやるので嫌がられるんだけど"と不敵な笑みを浮かべMCをしたが、それこそがバンド同士のマナーだろう。「NEW DAWN」で始まって、全9曲。観客の汗も体力も自分たちのステージで全部吸い取っていく勢いで、重厚なアンサンブルでジャンプさせ、魅せるパフォーマンスで手拍子や歓声を巻き起こし、畳み掛けるシャウトとクリーン・ヴォーカルで高揚させる。ラスト、立ち込める熱気のなか"We Are coldrain"という高らかな咆哮が響き渡ると、会場内は歓声と共にその痺れる轟音に半ば放心した観客が無心で拍手を送り続ける光景が見られた。この興奮と熱気もろとも、Dizzy Sunfistが受け取っていくことになる。
"ファイナルへようこそ"、そして"かかってこい"とあやぺた(Vo/Gt)の叫びでスタートしたDizzy Sunfistのステージはヘヴィなギター・リフと高速ビート、メロディックなコーラス&ハーモニーというバンドの旨みを惜しみなく詰め込んだ「No Answer」でスタートした。スピードに乗ってさらに「Our House」、「Andy」へと加速。ポップでフレンドリーなメロディにシンガロングが上がって、冒頭からDizzy Sunfist節でフロアを一体化させていく力は、ツアーで培ってきたバンドのいい空気感やノリ、グルーヴがあるからこそだろう。
長いツアーではひと筋縄でないこともあったとは思うが、3人で走ってきた時間の濃さや充実感はそのアンサンブルや、MCの呼吸感からも伝わってくる。いいテンションであるほど気持ちに口が追いつかずにMCがこんがらがっていくあやぺたと、そこに笑顔でツッコミを入れ観客に通訳するように軌道修正するmoAi(Dr/Cho)とメイ子(Ba/Cho)。コンビネーションは絶好調だ。
中盤は今回のミニ・アルバム『PUNK ROCK PRINCESS』からの曲を中心にしたセットリストとなった。この作品は、メイ子が正式加入した現体制となって初めてのアルバムとなる。パンデミックという予期せぬ状況、メンバーの脱退という経験をしながらもバンドの歩みを止めることなく進んできたDizzy Sunfist。あやぺた個人としてはこの数年の間に子供が生まれ母となったが、それでいてツアーのペースを落とすことなく、むしろ新しいエネルギーを得た力を感じる。きっと簡単なことじゃないし、いろんな思いを背負っての数年だったと思う。自身を支えたのは、バンドであり音楽、パンク・ロックだっただろう。10代の頃から自分の心を震わせて、強くしてくれた"PUNK ROCK PRINCESS"に、今度は自分自身がなってこのステージに立った。
MCで"みんなの人生を輝かせに来ました"、"大阪の「PUNK ROCK PRINCESS」が来たで!"という言葉は一段と、鮮烈だ。そこに続いた晴れやかな「Punk Rock Princess」、そして初の日本語詞で歌う「そばにいてよ」の包容力にグッとくる。この新しい歌と、"19歳の頃に作ったメロコア・チューン"とあやぺたが紹介した「Raise your fist,Raise your voice」が自然に並び、曲の持つ衝動感と輝きを眩しいほどに増した演奏で聴かせる。
頭から大いに暴れ、大いに歌う曲が連投されて、フロアの観客はすでに肩で息をしているような状態だが、後半そこに投下したのは『PUNK ROCK PRINCESS』でも一番激しい曲だとあやぺたが紹介する「Carry On」。重低音を轟かせてまっすぐにフロアを駆け抜けていくmoAiのドラミングとメイ子のベース、エモーショナルに上昇していくメロディラインに観客が波打つように呼応する。フロアからの熱風を追い風にしてスピードを上げる「New world」に続いたのは、「The Dream Is Not Dead」。Dizzy Sunfistのスローガンとして、何年にもわたってプレイされてきたこの曲は、ライヴのたび、ツアーのたびに新しい想いや希望、ヴィジョンを纏って大きなうねりを起こしていく曲になっている。
会場一体となったシンガロングや掛け声と共に、爽快な風を巻き起こして舞い上がっていった曲は2024年もまた最高のアンセムとして進むその先を指差していく。さらにアンセミックなライヴ・チューンとして加わったのが、『PUNK ROCK PRINCESS』からの「Decided」。硬質で、熱を帯びた3人のアンサンブルに哀愁を帯びたメロディやコーラスが、観客の拳を高く掲げさせる。泣きの歌心が、締めくくりの曲となった「SHOOTING STAR」への最高の架け橋となって、[Dizzy Sunfist "PUNK ROCK PRINCESS" TOUR 2023-24 -FINAL SERIES-]はカタルシスたっぷりのエンディングを迎えた。
バンドの新章となる現体制で作った作品を携えたツアーを終えると共に、結成15周年となるアニバーサリー・イヤーを迎えたDizzy Sunfist。4月には下北沢SHELTERでの2デイズによる男性限定&女性限定のライヴ"Dizzy Sunfist pre. PUNK ROCK BOYS&PUNK ROCK GIRLS"が開催されるなど、今後も様々な企画が発表されていきそうだ。
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