LIVE REPORT
vistlip
2022.05.06 @なかのZERO 大ホール
Writer 杉江 由紀 Photo by nonseptic
メタバースに、NFTに、ブロックチェーン。やがて訪れる近未来の話だと思っていたものやことが、ここに来てアレもコレも現実世界で運用されるようになった今、世界は以前にも増して目まぐるしく動いていると言える。そんな世相も踏まえたうえで、今春vistlipが発表したアルバム『M.E.T.A.』はまさに今この時代だからこそ生み出された、彼らにとっての確信的且つ革新的な目論見が音として見事に表現されたものであった。
"アルバム・タイトルの「M.E.T.A.」の読みは正式にはメタじゃなくてエムイーティーエーで、Music、Entertainment、Tのところは悪友を指すスラングのThugと、もうひとつToxicの意味も持たせていて、AはArtになります。改めて真面目に説明するとなかなかこっぱずかしいけど(苦笑)、これはのちのちのライヴとかツアーの演出も含めて考えたものではあるんですよ"
フロントマン、智が先だってのインタビューにてこのように語ってくれていたあの言葉は、実際にこのたびなかのZERO 大ホールにて開催された、東名阪ツアー"vistlip ONE MAN LIVE TOUR「META TOXIC」"の最終公演においても、有言実行のかたちで全面的に具現化されていくことになったのである。
大人っぽい洒落っ気と小粋な艶っぽさを醸し出しながら、智がカウチ・チェアーにもたれて、ひと皮むけたヴォーカリゼイションを聴かせた「BGM「METAFICTION」」。軽快でいて肉感的なシャッフルのリズムを、Tohyaが生のドラミングならではの響きを生かしながらパフォーマンスしてみせた「"TOXIC"」。モータウンのノスタルジックなグルーヴをロック・バンド、vistlip流に体現したうえで、間奏ではYuh(Gt)が華麗なタッピング・ソロを展開した「STAR TREK」。スケール感のある曲調が広がっていくなかで、普段はピック弾きをすることも多い瑠伊(Ba)が、フィンガースタイルで大きなうねりを生み出していた「RED LIST」。客席から大きなクラップが湧きあがるなか、海がギター・プレイだけでなく得意のラップも存分に披露してくれた「Act」。
様々な楽曲たちが、舞台セットやライティングの変化もあいまって、次々と表情豊かに供されていく様は時に幻想的でもあったが、それでもやはりすべては明らかなる現実であり、フィクションとノンフィクションが複雑に混在するアクチュアリティでもあった。同時に、vistlipというバンド名はもともとvista(視覚)とlip(聴覚)を掛け合わせた造語となるが、今回の彼らはある意味でそこを自ら再証明していくことになったに違いない。
"今回のアルバム制作やツアーに向けていろんなことを考えたり、それを周りの人たちと一緒に実現させていくなかで、俺は俺じゃなきゃできないことを見つけられた気がします。それによって、改めてメンバーの心やファンの心、自分の人生もすべていい意味で背負っていきたいなと感じました。やっぱり、自分は「真ん中」なんでね。昔はそのプレッシャーに押しつぶされそうになってよく泣いてたし、今も泣くことは全然あるけど(笑)、みんなに支えられていることで自分はもっと頑張っていきたいと思えてます。ありがとう"
アンコール最後に聴くことができた、極上シティ・ポップ・チューン「Sunday」で彼らが辿り着いた日常に詰まっていたのは、言うなればかけがえのない愛そのもの。その愛を糧にしながら、vistlipは来たる7月7日に大きな節目となる"vistlip 15th Anniversary LIVE【Domestic Strawberry Jam】"をZepp DiverCity(TOKYO)で迎えることが決まっている。
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