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LIVE REPORT

STONE SOUR

2017.09.05 @Zepp DiverCity TOKYO

Writer KAORU

『Hydrograd』のリリースに伴い、6月にプロモーションの一環として来日していたCorey Taylor(Vo)。テレビ番組の出演や約20本の取材をこなす超過密スケジュールのなか、インタビューに快く応じてくれた。Coreyは数年前より健康的になったようで、その笑顔と言葉からは終始グッド・ヴァイブスが溢れていた。ジェントルな対応をしてくれたCoreyに感謝。まだ読んでいない人はぜひチェックしてください。

さて、プロモーション来日から"Stone Sour Japan Tour 2017"までの約3ヶ月の間も、Coreyの言動は何かとメディアを騒がせていた。

まずはNICKELBACKのChad Kroeger(Vo/Gt)とのディス合戦。事の発端はバンドの尊厳に関わる発言だったようで、それが本当だとしたら怒るのは当然だと思うが、Coreyのアンサーの内容といったら、"フッ。お前の母ちゃん出べそ"程度のレベルなのだから、さすがに笑ってしまった(報じているメディアもだいぶ面白がってましたよね)。聡明なCoreyのことなので、ファンがシリアスになりすぎないようにという気遣いから、ああしたユニークな発言になったのかもしれない。

ちなみに、2012年にNICKELBACKのChadとDaniel Adair(Dr)にインタビューしたのだが、Chadはジョークが大好きで、たびたびDanielとコントを繰り広げては大爆笑。Coreyとは違うタイプだけど、人を笑わせることが大好きなエンターテイナーという印象を受けた。日本ではSTONE SOURとNICKELBACKの両方が好きなリスナーもたくさんいるだろうし、いつかツーマンのライヴが実現したら素敵だなと思う。

もちろん、Coreyはこんなディス合戦に明け暮れていたわけではない。著書"America51"では"アメリカの現状に対する怒りをそのまま書き込んでいる"とのこと。

世界情勢は緊迫の一途を辿り、ライヴ会場で悲惨なテロ事件が起き、Kid Rockは共和党から出馬を表明し、LINKIN PARKのChester Bennington(Vo)が逝去した。

激動の時代。Coreyはこの時代をどう捉え、考え、行動しようとしているのか。"音楽と政治的なメッセージを一緒にしたくない"という姿勢が、長年キッズに支持されている理由のひとつでもあるだろう。だからこそ、SLIPKNOTとSTONE SOURのヘヴィな音楽のパワーの源にある"怒り"の本質を知りたい。"America51"がここ日本でも出版されることを強く願う。

前置きが長くなってしまったが、"Stone Sour Japan Tour 2017"と題し、スペシャル・ゲストにMAN WITH A MISSIONを迎え東名阪で計4公演を行ったSTONE SOUR。今回は9月5日のZepp DiverCity TOKYOで行われたライヴの模様をお届けする。

スペシャル・ゲストのMAN WITH A MISSION(以下MWAM)は、2014年2016年に開催されたSLIPKNOT主催の"KNOTFEST JAPAN"に出演しており、2014年のライヴではMWAMのライヴにSid Wilson(DJ)が飛び入り参加し、DJ Santa Monica(MAN WITH A MISSION/DJ/Samp)と激しいスクラッチ合戦を繰り広げたシーンは有名だろう。縁が深く、ラウド系のみならず幅広い層から支持され、海外ツアーのエリアを広げて精力的に活動しているMWAMがゲストとして出演することは至極納得いくものだ。しかし、近年のラウド系フェスにおける恒例行事というか風物詩ととらえるべきか、昔ほどではないにせよ、いわゆる洋楽ファンが邦楽アクトの出演を嫌がり、邦楽アクトのファンは目当て以外の海外バンドに興味がない、といったような言説を未だにSNS上で見掛ける。この現象をインタビューでCoreyに話したところ、とても聡明な見解を示してくれた。キーワードは"オープン・アップ"だ。

満員の観客に迎えられてMWAMのライヴが始まった。爽快なドライヴ感とメタル・マナーに則ったギターソロが際立つ「Take What U Want」のキメに合わせたジャンプの振動が、早くも会場を大きく揺らす。レゲエ・ミクスチャーのキラー・チューンとしても名高い「database」、BOOM BOOM SATELLITES世代EDMムーヴメント以降の時代を象徴するかのような「Hey Now」。「Get Off of My Way」からのスコーン! と抜けたようなパワフルなプレイにはガツッと引き込まれた。今日初めて観る人たちもいるだろうし、いいところを見せてほしい! という期待をしっかり背負っているのが伝わってくる。

最新シングルの「Dead End in Tokyo」を演奏し終えると、"世界ニ名ダタルバンド、STONE SOURニ拍手!"と、敬意を示す。そして、"外人トヤルタビニ、カタコトノ日本語ジャナクナッテキテンナッテ思イマスヨネー。ソロソロ見直サナイトー"はて、何を見直すのか? という大きな"?"マークが浮かびつつ、どっと笑いが起きた。そして"お馴染み感"満載のNIRVANAのカバー曲「Smells Like Teen Spirit」だが、ドラムにアレンジが加えられて全体的に印象が変わっている。カバー曲をさらにアレンジするのは珍しいが、曲の解釈を広げてアップデートするのもリスペクトの表れであるし、何よりかっこよくなっていた。また改めて聴くのが楽しみだ。

ラストの「FLY AGAIN」では、ついさっきまで静かに大人見していた人たちの手が、サビの瞬間バッと高く上がり、パブロフの犬のごとく"ガウガウ"しちゃってる光景に気づくと同時に、自分の手も小さく"ガウガウ"しているのに気づく。自分のリズムでダンスしたいし周りと同じ動きをすることに抵抗を感じる方ではあるのだが、真のアンセムというのは、そんな小さなこだわりとか、偏見とか、そういうものを忘れさせてしまう力がある。MWAMの強みはまさにこのアンセム・パワーなのだなぁと、改めて実感した。 また、上述した洋楽ファン、邦楽ファンの分断についても、今回はいらぬ心配だったようだ。MWAMのライヴが終わっても人が少なくなるということもなく、SNS上の反応でもSTONE SOURのライヴと両方を楽しんでいた人がとても多かったことに少し驚いてしまった。オープン・アップしなきゃいけないのは、自分の方だった。

1stアルバム『Stone Sour』のリリースから15年、前作『House Of Gold & Bones』は2枚を通して完結するというコンセプチュアルな大作だったが、6thアルバム『Hydrograd』は、全編ライヴ・レコーディングという、まるで50年代のロックンロールのレコードの原点に立ち戻ったようなやり方を貫いたという。そもそもSTONE SOURはライヴのクオリティが音源を上回るほどの実力があり、抜群の安定感と、圧倒的なフィジカルの強さを感じるパワー感の両方を兼ね備えている。派手なステージングをしていてもまったくブレない。それだけの自信があったからこそ、ライヴ・レコーディングというやり方を選ぶことができたのだろう。また、STONE SOURのライヴを観るたびに思うのは、誰もが新作の曲を聴きたがっていて、それがめちゃくちゃ盛り上がるということ。そんな日本のファンだからこそ、Coreyはずっと親日家でいてくれているのかも。

「YSIF」が鳴り響くなか、熱狂的な歓声に包まれて登場するメンバー。Roy Mayorga(Dr)、Josh Rand(Gt)、正式に加入したChristian Martucci(Gt)、CAVALERA CONSPIRACYのメンバーでツアー・サポートとして参加しているJohny Chow(Ba)。そしてTHE RUNAWAYSのTシャツに白いシャツを羽織ったCoreyは、プロモーション来日の際にはかなり伸びていた髭を剃って、ハンサムな顔を見せてくれている。アルバムの流れに沿う形で「Taipei Person / Allah Tea」から演奏スタート。デジカメで客席を撮影して満面の笑みを浮かべていたCoreyは、力強いシャウトとスケールの大きいハード・ロッキンなメロディを巧みに歌い、楽器パートだけの部分であっても一切休むことなくステージを縦横無尽に動き回っている。頭がもげるんじゃないか? と心配になるほどの、超全力風車(扇風機?)ヘドバンは、今夜を通して数え切れないほど披露してくれた。さらに、ステージ袖にはけていった? と思ったら、バズーカ片手にドヤッと登場。銀テープを仕込んだ大きなバズーカ・クラッカーを、フロアに向けてドッカンドッカン放ち始めるではないか。シリアスでヘヴィなナンバーをプレイしているのに、キャッキャとはしゃいでいるCoreyの姿は、なんとも愛おしい。Corey Taylor、43歳。今時小学生でもこんなに純真な笑顔は滅多に見せないぞ。しかもMC一発目が、"コンバンハ!ウフフフ!!"だって。

「Made Of Scars」では、スキンヘッドにピンクの水玉模様のギターというインパクト大なヴィジュアルのJoshが、Pete Townshend(THE WHO/Gt)ばりの"風車弾き"を見せてくれた。STONE SOUR内では、風車ブーム・リバイバルでも起きているのだろうか? いや、もしかしたらあえてやっているのかもしれない。かつて、エレキギターといえば、歯弾きか燃やすか風車弾きかぶっ壊すか、みたいな時代もあった。ギター少年なら一度はモノマネしてみるものの、だいたい怪我してバカを見る的な伝統芸。こうして、往年のロックの記号性が散りばめられたショーを観て、久しぶりに思い起こしたバンド像、ロック像というものがいくつもある。Coreyはインタビューで"STONE SOURがロックらしさってものを取り戻す、再浮上させるような役割を果たせたら嬉しいなと思うよ"と語ってくれたが、こういう細かな演出にもその気持ちが表れていたように思う。

「Take A Number」、「Reborn」、イントロにジャジーなアレンジを施した「Say You'll Haunt Me」と、憂いを帯びた暗いトーンの曲が続く。効果的な演出によって飽きる隙を与えないのもさすがだが、やはりSTONE SOURの楽曲はメロディがいいなぁとシンプルに感動する。SLIPKNOTのバラードのような暗黒的なものではなく、アメリカン・ハードロックを象徴するドライな空気感とスケールの大きさを感じるメロディ。どんな曲でもすぐに合唱が起きる。

『Come What (ever) May』の代表曲「30/30-150」が始まると、待ってましたと言わんばかりに激しく身体を動かすフロアのファンに呼応するかのように、演奏にもグッと迫力が加わる。そして今度は、銀色だけじゃないカラフルな色のテープが鮮やかに放たれた。

少しの間を置き、アコースティック・ギターを持ったCoreyがステージに登場。"Ozzfest Japan 2015"でのソロ出演や先日のテレビ番組(※2017年6月に生出演した日本テレビ系"スッキリ!!")など、最近は"アコギ1本で弾き語りするCorey"の姿を見る機会が増えている。今やCoreyは、SLIPKNOTとSTONE SOURのフロントマンという肩書きだけでなく、アメリカを代表するロック・シンガーとして責任を背負う存在だ。アコースティック1本の弾き語りでここまで人を惹きつけるヘヴィ・ロック・シンガーはそうそういない。

咳払いで中断して笑いを誘う場面もあったが、ひと言ひと言を噛み締めるような表情で歌った「Bother」には、いつも以上に強い気持ちが込められていたように感じる。「Rose Red Violent Blue(This Song Is Dumb & So Am I)」は、Coreyを加えたトリプル・ギター編成になっていて、『Hydrograd』の中でも展開が多い曲なのだが、暗い場所から光の射す場所へと向かっていくかのような構成で、コーラス部分の爽快さがたまらなく気持ちいい。

短いドラム・ソロを挟み、改めてメンバーの名前が紹介される。RoyのドラムとJohnyのベースが際立つリズミカルなナンバー「Do Me A Favor」から、ド迫力の「Blotter」へと続き、いよいよ本編ラストを告げる「Get Inside」。凄まじいツーバスと地底を這うような重いベース、鋭いギターのパワー・コードが不気味にうねり、全身を使って轟かせる激しいシャウトと高速ラップと、フロアから沸き起こる怒涛のFワードと力強い拳がひとつになった光景は圧巻だった。

アンコールでは、「Gone Sovereign」と「Absolute Zero」というキラー・チューンを、本編よりさらに力強くプレイし、熱狂が収まらない。そしてラストの「Fabuless」では、MVに出てくる人形型のプール・フロートが出現し、ド派手なラストを飾った。

演奏は多少荒っぽいところがあり、これまでに観たSTONE SOURのライヴの中ではパーフェクトとは言えなかったかもしれない。しかしそんな中でも、『Hydrograd』の曲を演奏しているときが最も楽しそうで、演奏からも表情からも喜びが溢れていた。このアルバムをとても誇りに思っていることがひしひしと伝わってきた。

MCでは再来日の予定がありそうなことも言っていたし、また最高のアルバムを作って、再び日本に来てほしい。

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