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LIVE REPORT

SPYAIR

2013.12.26 @渋谷公会堂

Reported by 沖 さやこ

小中学生くらいの頃、TVなどでたまたまロック・バンドを見掛け、理由はわからないがただただ"なんだこれ、すげえかっこいい"と胸が高鳴り、目が離せなくなる......そんな経験をしたことがある方も多いのではないだろうか。筆者もロックとの出会いを与えてくれたバンドを入り口に、様々なバンドやアーティストを掘り下げたものだ。そんな子供の頃に感じた興奮が、SPYAIRの渋谷公会堂公演でリアルに全身に蘇った。それは会場がホールだったことも大きい。終演後に辺りを見回すと、親御さんと一緒にいる小学校高学年から中学生くらいの少年少女の姿もちらほら目に入った。そうそう、子供にはライヴハウスだとハードル高いけどホールなら行きやすかったんだよなぁ。わたしが中学生のときにテープがすり減るくらい見たライヴ・ビデオもホールだったなぁ......と物思いに浸る。やはりいつの時代も少年少女のロックの入り口はホール・ライヴができる規模のバンドであることが多いのだろう。SPYAIRのこのホール・ツアーも、勿論全公演ソールド・アウト。ただ、彼らは規模が大きいだけのバンドではない。自分たちが信じる格好良さや貫きたいことに、自分たちの現在位置でやるべきことと同居させ、強い意志をもって鳴らしている。その姿はとても勇敢だ。

SPYAIRの集大成とも言える3rdアルバム『MILLION』を引っ提げて開催されたホール・ツアーの追加公演2daysの1日目。暗転するとステージを包んだ白い幕に、宇宙を駆け巡るような映像が流れ、SPYAIRのロゴ・マークが映し出されると場内は大歓声。そして1曲目「OVERLOAD」を象徴するサイレン音とイントロが鳴り響き、その幕が勢いよく落ちると、その歓声は熱狂へと変わった。『MILLION』のジャケットを模した近代的なアーチが目を引く。デジタル的なヘヴィなサウンドとパワフルなIKE(Vo)の歌声が、客席のシンガロングを吸い寄せる。パーカーのフードをかぶっていたKENTA(Dr)以外のメンバーが、ラストのサビで一斉にフードを取るというちょっとした演出も小粋だ。"ようこそ、SPYAIRのライヴへ!"とIKEが叫ぶと「現状ディストラクション」へ。楽曲のムードをより高める大迫力の青白いレーザーとスモーク。UZ(Gt)はセンターのお立ち台でギター・ソロを堂々とキメる。続いては四つ打ちを効果的に取り入れた「Last Moment」。客席を見回すMOMIKEN(Ba)は観客と一緒に高々とジャンプし、KENTAのドラムはサウンドの器を作るように、前衛3人を強く押し出していく。「WENDY ~It's You~」のシンガロングには観客たちがこの日を本当に楽しみにしていたという思いが溢れだしていた。そのハッピー・ムードのまま「Are You Champion? Yeah!! I'm Champion!!」へ。チア・ガールが4人登場し、IKEも遊び心溢れる合いの手を入れるなど、肩の力を抜いて楽しめる空間を作り上げる。

「Naked」のあと、UZの繊細なギターとシーケンスの音色が幻想的な空間を生む。そこにMOMIKENのベースが重なり「サクラミツツキ」へ。桃色の明かりとステージ上に配置された数個のミラー・ボールが回転し、本当に桜吹雪のなかにいるようだ。その美しさに思わず感嘆の声が漏れた。情景を一気に持っていくパワーもそうだが、SPYAIRの曲は一貫して聴くとどうしたって上を向かずにいられなくなる。どの曲にも高い高い晴れやかな空が存在するのだ。それは彼らの懐の広さと熱いハートが作り出すものだろう。「BEAUTIFUL DAYS」「Winding Road」と壮大なバラードの後は"体揺らして手ェ叩いてこうぜ"と「16 And Life」でクール・ダウン。その後は"リラックスしてやろうと思うので、みんな一旦座って?"とIKEが客席に声をかけ、メンバー4人がステージ前方に腰かけてアコースティック編成で「My Friend」を披露。4人順々にヴォーカルを務め、担当楽器はIKEとUZがアコースティック・ギター、MOMIKENがタンバリン、KENTAがアコースティック・ベース。いつもとは違う初々しさを見せてくれた。

KENTAのドラム・ソロ、楽器隊3人のアンサンブルで魅了したあとは、全員が黒ベースの衣装になり「0 GAME」「Supersonic」「STAND UP」「Turning Point」と硬派なラウド・ナンバーで畳み掛ける。MOMIKENはベース・ソロで、アグレッシヴな音色を披露した。SPYAIRと同じくミクスチャー・ロック世代の筆者は、ギターを弾きながらラップをするUZの姿に思わずニヤリとしてしまうが、10代のキッズたちには新鮮に映るだろう。自分たちが感銘を受けた先人の影響を継承するのは、非常に健全なことだ。「ジャパニケーション」「サムライハート(Some Like It Hot!!)」と定番曲で多幸感を生むと、UZが語り始めた。"最高の音楽"を目指す『MILLION』の制作で心が折れそうになったこともあったそうだ。だが"こんなところで折れてる場合じゃない"と思わせてくれたのはファンの存在だった。ファン、スタッフや仲間たち、バンドを支えている全ての人々へ感謝を伝え"恩返しできるときはライヴしかない"と語るUZ。"ライヴでいちばんパワーが生まれる瞬間は、全員がでっかい声で歌うとき""そのとき生まれたパワーはそれぞれの明日にもっと輝いて進めるように力を貸してくれる"と続けた。その後の「雨上がりに咲く花」「虹」では客席から本気の歌声が上がり、IKEも振り絞るように声を上げる。SPYAIRの力があれば、自分だけでは手の届かないところにも行けるかもしれない――彼らの鋭く優しい眼光と音からは、夢を実現させてくれるような頼もしさが感じられた。アンコールの「JUST ONE LIFE」「SINGING」では客席からこの日最大の声が生まれた。『MILLION』で見せたバンドの度量とスケール感は、確実に彼らが積み上げてきたもの。そして彼らは既に「JUST ONE LIFE」という新たな一歩を踏み出している。5月に開催されるZeppツアーでは、ホール・ツアーとは違う顔を見せてくれるだろう。彼らは過去を武器に、常に現在と未来を見据えている。

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