LIVE REPORT
BLUE ENCOUNT
2013.12.19 @TSUTAYA O-WEST
Writer 沖 さやこ
12月に東名阪福を回る全国ツアーを開催した、熊本発都内在住の4人組エモーショナル・ラウドロック・バンド、BLUE ENCOUNT。チケットは全公演ソールド・アウトだ。そのツアー・ファイナルの開演を今か今かと待ち侘びるフロアに、軽快なトークの場内アナウンスが。田邊駿一(Vo/Gt)の声である。ユーモアたっぷりにライヴにおいての注意事項を届け、場内の空気を暖める。場内にメンバーが登場するやいなや大歓声。だが田邊がひとたびストロークでギターを鳴らすと、場内は彼の音色に集中した。そこから少々の弾き語りで観客全員を引きつけると、貯めたエネルギーを放出するように1曲目「JUST AWAKE」へなだれ込む。エモーショナルな田邊の歌声、辻村勇太(Ba)の強烈なスラップ、アグレッシヴな動きでも魅了する江口雄也(Gt)、3人の飛び回る音色に釘を打ち付けるような安定のリズムを刻む高村佳秀(Dr)。フロアはそんな4人をダイヴァーの乱舞で歓迎する。間髪入れずに「SLUGGER」へ。もうこの時点で2階席まで汗の匂いが充満する。自身に漲った4人の音は完全にWESTを支配した。
ソールド・アウトへの感謝の弁を述べる田邊が"このままありがとうって言ってると2時間経っちゃう"と笑わせ、メロコア・ナンバー「THANKS」、ギター・ロック・ナンバー「ANSWER」、メロディックな「NEVER ENDING STORY」と畳み掛ける。ドラマティックに展開されていくステージは、少年漫画のヒーローが駆け出していくようなドキドキ感。何かが起こりそう―― そんな奇跡を実現してくれるようなスケールが、4人の身体から次々と生まれてくる。「NO BODY」ではここまで4人がしっかりと歩みを共にしてきたことを示す、気合いのアンサンブルを魅せた。「misgiving」のアウトロから緩やかに江口が繊細なギターを奏で、インタールードのように新たな場所へと導く。田邊がしっとりと力強く歌い上げ「YOU」へ。シンプルなギターのカッティングが素直な気持ちを吐露する歌詞と重なる。このバンドには、英雄のような自信に満ちた輝きと、泣きじゃくりながらがむしゃらに走るような情けなさが同居する。等身大の全力投球。そんな切実さが観客の心を射抜いた。
田邊は再び彼なりのジョークを交えて観客に感謝の弁を何度も伝える。キレのあるギターがインパクトを残す「マキャベリズム」に続いては、「D.N.K」で田邊が"業界震撼させてやる"とぎこちなくも背弾きでギター・ソロを披露!バンドのエネルギーで人を笑顔をさせるだけでなく、自らが道化としても振る舞うサービス精神には恐れ入る。「ONE」ではフロアに向かって"俺ちょっとやりたいことあるんだよね""(ステージ中央を境に)わかれてもらっていい?"と指示。まさかウォール・オブ・デスが起こるのか......?と思っているとそうではなく、赤チームと青チームにわかれての合唱対決。その後の4人の音はより瑞々しく輝く。彼らがハートで音を奏でていることを痛感した。
"俺マジで本当に幸せです"と田邊が言うと、4人は深々と頭を下げる。"生まれて今までいろんなことを約束してきたけど、全く人との約束を果たしたことがなかった"と語った彼は"音楽で初めて約束を守れたんです、音楽が約束を守れる場所だったんです"と告げた。CDを出す、ワンマンをやる、フェスに出る、約束をすると無茶だと笑う人も多かった。"何年掛かっても叶えた瞬間に全部が幸せなものになる"と語った彼は力強く"絶対に武道館でワンマンやります"と続けた。"今日、1万数千人があんたたちのパワーで見えたんだよ""誰に笑われようと絶対成し遂げる"という言葉に大きな拍手が。その後の「HANDS」ではこの日1番のシンガロングが巻き起こった。アンコールでは2014年のツアーの告知もされ、7月5日の渋谷CLUB QUATTROでのワンマン・ライヴが発表されるとフロアは再び大きく沸いた。「アンバランス」「SAVE」、ダブル・アンコールでの「VOICE」、全てに"まだまだ上に行く"という強い想いが漲り、観客も全身でその想いに応えた。4人の野心は、間違いなくこの会場にいた人間のハートに火をつけた。彼らの快進撃はここからが本番だ。
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