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INTERVIEW

GREY DAZE

2022.06.14UPDATE

2022年06月号掲載

GREY DAZE

Member:Sean Dowdell(Dr)

Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

LINKIN PARKのフロントマン、Chester Benningtonが90年代に地元アリゾナ州フェニックスで結成し、音楽キャリアをスタートさせたバンドであるGREY DAZE。2017年にChesterはGREY DAZEを再結成し、バンド・メンバーと共に過去のマテリアルを再構築、再レコーディングすると発表したが、同年7月に惜しくも他界。残されたメンバーはChesterの夢を実現するべく彼のバンドメイト、友人、家族などの協力を得て、2020年にアルバム『Amends』を発表した。本作『The Phoenix』はその第2弾となる作品で、10代のChesterの歌声をパワフルなポスト・グランジ/オルタナ・サウンドで現代へと甦らせたアルバムだ。ドラマーでありChesterの親友でもあったSean Dowdellに、本作について語ってもらった。


このバンドを再結成させるというのは、俺じゃなくてChesterのアイディアだったから、ベストを尽くしてやり遂げようと思ったんだよ


-まず、前作『Amends』リリース以降の話からうかがいます。『Amends』は約2年前の2020年6月に発売されましたが、あなたのもとにはどのような反応が届きましたか?

とても好評だったよ。大勢の人の心に響いたんだと思う。コメントはどれも圧倒的にポジティヴだったし、みんなとても気に入ってくれたみたいなんだ。

-2021年1月には、アコースティックEP『Amends...Stripped』がリリースされました。Chesterの歌声を新たな側面から捉えた作品となりましたが、ご自身では同作をどのように振り返りますか?

アコースティック・バージョンをやったのは、すごく楽しい経験だった。(プロデューサーの)Billy Bushとの仕事がとっても気に入ったよ。あのタイトルにある"...Stripped"がすべてを物語っている。すべてが基本に戻ったんだ。Chesterのヴォーカルがすごくユニークな形で紹介されている。本当に素晴らしい作品だと思うね。俺たちも素晴らしい仕事をしたよ。

-前作から約2年、またChesterが亡くなってからもうすぐ5年というタイミングでニュー・アルバム『The Phoenix』が発表されますが、発売を控えた現在の心境をうかがえますか?

ここまで来たんだなって感じだよ。これを最初に始めたころは、アルバムを2枚、もしくは2枚半も作るなんて思っていなかった。ただ『Amends』を完成させることだけに専念していたんだ。ぶっちゃけ、あのアルバムに対する彼の、そしてGREY DAZEのファンの反応のおかげで、またアルバムを作ろうという結論に達したんだよ。あの最初のアルバムに対する素晴らしい反応のおかげで、2枚目を作りたいと思うようになったんだ。

-ニュー・アルバムを制作するにあたって、オーディエンスからの好意的な反応が後押しになったんですね。

もちろん、それがきっかけだったんだ。前作を出して誰も気にかけなくても、俺たち的には良かった。俺たちがあれを作ったのは、音楽を完成させて俺たちがハッピーになれるものを作りたかったからだ。でも、誰も聴きたいと思わなかったら、2枚目は作らなかっただろうね。作ったとしても、もっと規模を小さくして自分たちだけで出していただろう。でも、前作がすごく注目されて、大勢の人が楽しんでくれたし、素晴らしい曲がまだ残っていることもわかっていたから、それに取り組むことにしたのさ。

-そういった世界中からの反応は、予想どおりのものでしたか? それとも、予想を上回るものでしたか?

どっちも考えていたよ。リリース時にはもっと大きな反響が得られると思っていたけど、コロナ禍の真っ最中だったんで、いろんなものに害を及ぼしたと思うんだ。あれよりもっともっとすごいことになる可能性はあったと思うけど、知ってのとおり音楽の世界はシャットダウンして、ラジオ局も何もかもがシャットダウンしてしまった。というわけで、よくやったとは思うけど、コロナでなかったらもっとすごいことになっていたと思うね。俺としてはもっと期待していたと思うけど、だからといってがっかりしたわけじゃない。世界がどんな目に遭っていたか、俺は理解しているから、どうしてああなったかも理解している。それでもあれだけの結果を出したんだからね。ほとんどのChesterファンの耳には届いたんだから、良かったよ。

-Chesterの家族からはどのようなメッセージがありましたか?

俺は未だに家族全員と交流があるんだ。(妻の)Talindaとも未だに話をしているし、Chesterのお母さんのSusanとも、お父さんのLeeとも話をしている。彼ら全員と仲がいいから、しょっちゅうとは言わないけど話をしているよ。ディナーやランチもして一緒に過ごしている。彼らはみんな、俺たちがやっていることをサポートしてくれているよ。これは生前のChesterがやりたかったことなんだってことを理解してくれているから、彼らはサポートしてくれているんだ。これは単にChesterが亡くなってから俺たちが思いついてやったことだと思っている人もいるかもしれないけど、実は彼がまだ生きていたときから俺たちはこれに取り組んでいた。このバンドを再結成させるというのは、俺じゃなくてChesterのアイディアだったから、ベストを尽くしてやり遂げようと思ったんだよ。

-"The Phoenix"というタイトルの由来についてうかがえますか?

前作のタイトルと同じく、いい名前を探していたら、たしかCristin(Davis/Gt)が"「Phoenix」はどうかな?"と言ったんだ。彼がそう言った途端、みんなで顔を見合わせて、"それ、ピッタリだ!"と言ったんだよ。あの言葉にはすごくいろんな意味があるし、"Phoenix(不死鳥)"というコンセプトがピッタリだったんだ。"Phoenix"の核となるコンセプトは、Chesterのなんたるかを具現化しているってこと。そして音楽は、Chesterが亡くなったことで生まれ変わったんだ。それが"The Phoenix"を表しているんだよ。ヴォーカル以外で、視覚的にChesterを一番象徴しているのはあの炎のタトゥーだった。だから、それをアルバム・ジャケットに選んだんだ。彼の炎のタトゥーは、"The Phoenix"というタイトルをあまりにも明確且つ直接的に物語っている。これは、彼こそが"The Phoenix"であることを暗に伝えているんだ。俺たちが思うに、彼が不死鳥なんだよ。だから、あのアルバム・ジャケットの写真を選んだんだ。あれは以前、Chesterと俺が行ったフォト・セッションで友人のJim Louvauが撮ったものだけど、あの写真がずっと好きだったし、『The Phoenix』のコンセプトにピッタリだった。俺たちがフェニックスという都市の出身だからこのタイトルにしたんじゃないかって大勢の人に聞かれたけど、それは違う。だから、前に"The"を入れたんだ。そうすれば、これはテーマであって場所じゃないってことがわかるからね。というわけで、このタイトルになったんだ。

前作の際のインタビュー(※2020年6月号掲載)では、収録曲は"悲しみ、嘆き、暗さ、感情の起伏、エモーショナル"をテーマに選曲したとおっしゃっていましたが、本作では収録曲を選ぶうえで何か基準はあったのでしょうか?

前作と今作の一番の差別化要因は、ムードとエモーショナルな内容だ。前作は今君が言ったように、とても悲しくて憂鬱で、内省的でエモーショナルで、全編にわたって感情の浮き沈みが激しかった。だから、曲を聴いて泣いた人も多かった。このアルバムはかなり違っていて、むしろ祝いの場のようなんだ。アルバム全編にとてもパワフルなロック・アンセムのフィーリングが漂っているから、泣く代わりに拳を振り上げてChesterと一緒にスクリームするんじゃないかな。『Amends』よりも『The Phoenix』のほうがずっとヘヴィで、もっとずっとハード・ロックしているから、初期のころの典型的なChesterのスクリームの要素が戻ってきている。彼を象徴しているもののひとつだ。Chesterのスクリームが好きな人なら、このアルバムを気に入るだろう。

-同感です。前作と比べると、楽曲の歌詞から前へ進む/状況を好転させるためのメッセージを強く感じました。

ありがとう。このアルバムは間違いなく、ずっと希望に満ちているんだ。

-音楽的には、今作のほうがずっとヘヴィだとおっしゃいましたね。前作では打ち込みなど、現在の音楽要素も多く取り入れられていましたが、本作ではより生のバンド・サウンドを重視した作風になっていると感じました。これは意図したものだったのでしょうか?

いや、至って自然にこうなったんだ。これに取り組みだしたのは前作の成功がきっかけだったけど、3人がひとつの部屋に集まって、そこにはChesterもいた。だから、4人でジャムりながらこれだと思うものにしたんだ。それで、ストレートなロック・アルバムになったんだと思う。前作で使ったシンセサイザーやピアノはあまり入っていない。前作の曲で、あのアルバムで使ったときは素晴らしかったけど、今回のには別の要素が詰まっているし、フィーリングがまったく違うんだ。

-個人的には、90年代のポスト・グランジの雰囲気を現代の録音技術でそのまま持ち込んだような生々しさを感じました。

俺たちはポスト・グランジ・バンドなんだ。でも、音楽的背景は今に通用するものになっている。90年代にレコーディングされたようには聞こえない。とてもモダンなアルバムのサウンドになっているんだ。

-そもそも、バンドの再結成はChesterのアイディアだったとのことですが、アルバムに関して彼にはどんな青写真があったのでしょうか?

このアルバムに関する青写真は、彼にはなかった。彼が生きていたころに俺たちが取り組んでいたのは『Amends』で、名前も何も付いていなくて、ただ曲をやり直していただけだった。だから、2枚目に関するヴィジョンが彼にあったかどうかはわからないな。とにかく俺たちは1枚目のアルバムを作ろうとしていて、それに対してみんながどんな反応を示すのか見ようとしていたんだ。そしてみんなが気に入ってくれたら、もっとやろうと思っていた。だから、このアルバムに関するヴィジョンは彼にはなかったんじゃないかな。ただ、個々の曲に関する彼のヴィジョンについてなら話せるよ。

-アルバムの資料では、GREY DAZEが影響を受けた要素としてALICE IN CHAINS、PEARL JAM、JANE'S ADDICTION、RED HOT CHILI PEPPERSなどのバンドが挙げられていましたが、Chesterともこうしたお気に入りのバンドについてよく語り合ったのでしょうか?

もちろん。Chesterと俺は、GREY DAZEを始めたころはいつも一緒だった。そして、2003年以降もよく一緒にいたよ。俺たちは、しょっちゅう一緒に音楽を聴いていた。初期に彼が一番影響を受けていたのは、STONE TEMPLE PILOTSとJANE'S ADDICTIONだった。そしてついにはDEPECHE MODEが彼のお気に入りのバンドになり、俺のお気に入りのバンドになったんだ。だから、俺たちはグランジ時代の一端を担っていた。NIRVANA、PEARL JAM、SOUNDGARDENといったバンドがGREY DAZEの初期のアルバム・サウンドに多大な影響を与えたんだ。でも、Chesterのヴォーカル・スタイルは、彼のアイドルだったPerry Farrell(JANE'S ADDICTION)、Scott Weiland(STONE TEMPLE PILOTS)、Dave Gahan(DEPECHE MODE)、Layne Staley(ALICE IN CHAINS)から来ていて、初期のころの彼は彼らを真似しようとしていた。だから、ここにある曲にはそういった影響が窺えるものもあるね。