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INTERVIEW

GREY DAZE

2022.06.14UPDATE

2022年06月号掲載

GREY DAZE

Member:Sean Dowdell(Dr)

Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

-ここからは、いくつかの楽曲についてうかがいます。オープナーの「Saturation (Strange Love)」は、Chesterの強烈なスクリームがインパクトのある楽曲です。

Chesterが歌詞を書いたんだ。他も同じだけど、隠喩が適用されている。もともとの意図は、私生活において周りの人たちのためではなく、自分のためにベストだと思える決断を絶えず下す人についてだった。今で言うナルシスト的な行動だけど、90年代の俺たちはナルシシズムについて何も知らなかったから、これについて語れるほどの教養がなかったんだな。彼が言っているのはそういうことだよ。それをビデオにあてはめて、中世を舞台にしたんだ。王や女王が、兵士たちのためではなく、自分の名声や栄光や金のために軍を戦いに送り込む。それが歌詞で適用された隠喩なんだ。とてもヘヴィな曲で、さっきも言ったけど彼のスクリームが好きだったら絶対に気に入るよ。Chesterが歌詞を書いたときは"Strange Love"っていうタイトルで、DEPECHE MODEの曲「Strangelove」へのオマージュだったけど、あんまりあからさまにしたくなかったから、"Saturation"に変えたんだ。でも『The Phoenix』でリメイクする際に、Chesterの当初の意図を尊重するために、俺が最後に"(Strange Love)"をつけ足したんだよ。彼は、DEPECHE MODEへの愛を込めてあの歌詞を書きたかったんで、俺が最後のフレーズをつけ足して「Saturation (Strange Love)」にしたんだ。

-イントロにはライヴでの観客とChesterのやりとりの音声も挿入されていますが、これを加えることにしたのはなぜですか?

俺たちがステージにいたとき、Chesterが観客と話していたんだ。そして誰かが、"おい、あんたはLIZARD KINGかい?"って聞くと彼は"いや、俺はLIZARD KINGじゃない。でも、キングだ"と言った。彼があれを言ったのは1995年か1996年のことだったけど、すごく深いと思ったね。あの時点から先を見てみると、Chesterは実際に"キング・オブ・ロック"になった。LINKIN PARKにいた約18年間、彼は最初から最後まで最も成功したロック・シンガーだった。彼は世界一ビッグなロック・シンガーだったから、あのくだりで自分がキングになることを予言したんだろうな。俺たちはそれをすごく気に入ったから、うまくハマる場所を探した。アルバムの冒頭に入れたいことはわかっていたんだ。Chesterがリスナーに話し掛けているようで、アルバムのイントロとして最高だと思ったから、1曲目に選んだ「Saturation (Strange Love)」に挿入することにしたんだよ。

-「Starting To Fly」ではあなたのバッキング・ヴォーカルも用いられています。90年代当時のChesterと"共演"して、どのように感じましたか?

Chesterと一緒に歌うのは、いつだって難しいよ。俺は何度もChesterと一緒に歌ったけど、彼は最高中の最高だからな。俺は素晴らしいシンガーじゃない。歌うのは好きだけどね。だから、彼の隣で歌わないといけないときは、いつだってビビっていたよ。でも、喜ばしいことでもあった。あんなに素晴らしいシンガーと一緒に歌える機会なんて、一生のうちに何回あると思う? だから、ふたりでやるヴォーカル・パートはいつだって楽しかった。彼の生涯の中で一緒にやったちょっとしたサイド・バンドでだって、俺は彼と一緒に歌っていた。だから、彼との共演はいつだって楽しいよ。特にこの曲はストラクチャーを変えて、結局(もとの)コーラスをなくしたんだ。スタジオでみんなと一緒に作り直していたときに、"おい、ここにコーラスを入れないといけないな。ここがぽっかり抜けているんだから"と言って、俺が(共同プロデューサーの)Esjay Jonesと一緒にあのコーラスを書いて入れたら、みんな"それ、クールだな!"って言ったから、それを使うことにしたんだ。俺的には、すごくいい出来になったと思う。

-以前のバージョンとはかなり違うものになった曲もあるんですね?

全部そうだよ。どの曲も、以前のとはまったく違うものになった。『Amends』には、「Sometimes」や「What's In The Eye」といった、オリジナルに忠実な曲がいくつかあったけど、このアルバムではすべての曲を100パーセントむき出しにして、イチからやり直したんだ。合わないなと思ったくだりは削って、他の曲から持ってきたりした。あれこれ入れ替えて、曲全体のストラクチャーをやり直したよ。コーラスを移動させて、プリコーラスを作ったりした。Chesterのヴォーカル以外、文字どおりまっさらの状態から始めて、彼のヴォーカルを中心にすべてを築いていったんだ。

-そうだったんですね。その作業にはかなりの時間がかかりましたか?

1年かかったよ。

-そこがこのアルバムで一番チャレンジングな部分でしたか?

そうだね、そこがこのアルバムで一番チャレンジングな部分だった。1stアルバムは、友達を亡くした悲しみを乗り越えてやり遂げようとした。そのプロセスを見つけて、音楽をどう生かそうか考えていたんだ。でも今回はやり方がわかっていたし、どうやってやるべきことをやればいいかちゃんと理解していた。ただ、しかるべき時間を費やして曲を作ることが一番大変だったね。リハーサル・スタジオではなくレコーディング・スタジオで曲作りをしていると、時間と効率を節約するせいで、いいパートはできるけど素晴らしいものにはならないことがある。でもスタジオでだったら、あとで作業が山のようにできる。それで、俺たちは1年かけてしっかり掘り下げたんだ。「Hole」なんて、3回も4回も5回も書き直したんだよ。イチからやり直したんだ。最後まで来ても、"いや、違う!"って思ったら、またイチからやり直したんだよ。だから、アリゾナにある自分たちのスタジオで、アイディアのやりとりをしたんだ。そのおかげで、LAのSunset Sound Studiosに行ってからは時間がかなり節約できたよ。

-「Holding You」ではJANE'S ADDICTIONのDave Navarroのギターがフィーチャーされています。影響を受けたバンドとしても名前が挙げられていましたが、Daveはみなさんにとってどのような存在だったのでしょうか?

Daveはかなりイケてるギタリストだって言えるよね? 彼はかなりマジカルな男さ。このことを知らない人は大勢いるけど、Daveは実は前作に参加する予定だったんだ。俺たちがニューヨークに行って彼と一緒にレコーディングするはずだったけど、最後の最後になって彼の都合がつかなくなって、結局実現しなかった。そこで彼は、"Sean、俺はこのプロジェクトをすごく気に入っているから、またの機会にやることがあったら知らせてくれ。ぜひとも参加したいから"と言ってくれたんだ。というわけで今回、Sunset(Sunset Sound Studios)でのレコーディングのスケジュールを組んでいたときに、俺は彼に連絡したんだ。"なぁ、来月スタジオ入りしてアルバムのレコーディングを行うんで、ぜひとも君に参加してもらいたいんだ。君にやる気がなくても問題ない。こっちは別に気にしないから"と言ったら、彼はすぐに連絡してきて"もちろんやるとも! 曲を聴かせてくれ"と言ってきたから、俺たちは彼に曲を送ったんだ。そうしたら"クールだな。やらせてもらうよ"と返ってきたよ。スタジオで、彼と一緒にやれて本当に嬉しかったね。彼は素晴らしいギタリストであるだけじゃなくて、超謙虚なんだから。そして、Chesterのことが本当に大好きなんだ。彼はCAMP FREDDYっていうサイド・プロジェクトで一緒で、とっても楽しそうにやっていた。Daveとは、LAのとあるライヴで出会ったんだけど、彼らが一緒にレコーディングすることはなかった。残念だよ。あれはスーパー・グループだったからね。あのふたりが一緒にアルバムを作っていたら、きっとスペシャルなものができただろうに。でも、今回の機会にDaveは飛びついた。そして、本当に素晴らしいパートを書いてくれたんだ。うまいギタリストと偉大なギタリストには違いがあると俺は言いたいね。うまいギタリストは、曲にぴったりな素敵なパートを書ける。すべてうまくいくんだ。偉大なギタリストは、それがまるでヴォーカル・パートであるかのように記憶できるギター・パートを書く人のことだ。一番いい例は、誰もが知っている「Sweet Child O' Mine」(GUNS N' ROSES)だね。ギター・ソロになると、俺が知っているほとんどの人間は、それを歌おうとする。あれはまるで第2のヴォーカル・ラインなんだ。そして、Daveは「Holding You」でそれを成し遂げた。それってすごく難しいことで、やれるギタリストはそんなにいない。でもやれると、曲がさらにスペシャルなものになるんだ。心に残るメロディ・ラインがふたつあるからだよ。Chesterが歌うヴォーカル・ラインは最高だし、素晴らしいギター・ソロもあって、素晴らしいメロディが混在している。だから、彼と一緒にやれて本当に嬉しかったよ。素晴らしい時間を過ごすことができたから、ぜひとも今後また彼と一緒に何かやりたいね。

-「Hole」では、前作で参加が叶わなかったChesterの双子の娘、LilyとLilaがコーラスを務めています。彼女たちはアルバムに参加するにあたってどんな反応を残していましたか?

彼女たちは、かわいらしいんだ。想像できるだろう? 俺たちは子供たち全員に連絡して、アルバムで父親と一緒にプレイしたいかと聞いたんだ。Jaimeは前作に参加したけど、DravenとTylerはまだこのアルバムに参加できる状態じゃなかった。その気持ちはよくわかるけど、少なくとも機会は与えてあげたかったんだ。でも、娘たちは"やるわ"と言ってやってきた。Esjayと俺はChesterの曲の最初のくだりを、娘たちのためにちょっとした童謡に変えたんだ。俺は歌詞を書き出した。俺たちは彼女たちと丸1日一緒に過ごして、曲の内容を伝えたんだけど、本当にプロセスにのめり込んでいたよ。すごくクールだった。そして、コーラスでパパと一緒に歌ったんだ。あれはスペシャルだったな。とっても楽しかったよ。彼女たちはスタジオに何度かやってきて、そこにいた。俺たちはChesterになんのお返しもできない。彼はもういないんだからね。だからこれは、彼に何かを返すためのものだったんだ。音楽を通じて子供たちと繋がってもらいたかったんだよ。そして、あの音源は永遠に残るんだ。これなら、友達のためにやれるって思ったんだよ。

-「Drag」では、"人生はあまりにも短くて酔っ払ってなんていられない/人生はあまりにも短くてウダウダしてなんていられない"という一節が登場します。リスナーはこのフレーズを聴いて様々な感情を覚えることと思いますが、ご自身ではこのメッセージを再び世に送り出すことをどのように感じましたか?

素晴らしいと思う。ここでもまた、このアルバムで顕著な"希望"というヴィジョンに戻っている。"人生はあまりにも短くてウダウダしてなんていられない"は、なんて素晴らしいアドバイスなんだ! 素晴らしいコーラスだから、みんなきっとこの曲をとっても気に入ってくれると思う。とってもパワフルだからね。

-「Believe Me」ではFILTERのRichard Patrickがヴォーカルで参加しています。彼が参加した経緯を教えていただけますか?

アルバムのエンジニアのBrian Virtueを通じてRichardを紹介されたんだ。俺たちは、参加してくれるヴォーカリストのことを考えていた。コーラスがすでにできあがっていたところ、BrianからRichardの名前が挙がったんだ。"Richard Patrickを知っているか?"と訊かれたけど、俺はRichardを知らなかった。そうしたらBrianが、"FILTERっていうバンドにいるよ"と言ったから、"そうか! あのバンドは知っているよ"と返した。Chesterが彼らと一緒にツアーしていたし、"じゃあ、彼を呼んでみよう。どうなるか見てみようじゃないか"と彼に来てもらって、俺たちが書いたものを聴かせたところ、彼はすぐにヴォーカル・ブースに行って、あの素晴らしいコーラスを一発ガンと食らわしてくれた。ものすごく良かったんで、俺たちはあの曲の出来にとっても満足しているよ。思いがけず起こったことで、彼は2~3日のうちにスタジオにやってきて、一発カマしてくれたんだ。素晴らしかったよ。すべてが完璧にしっくり収まった瞬間だった。RichardもまたChesterの大ファンで、Chesterのことをすごくリスペクトしていたから、このプロジェクトに参加できて光栄だと言っていたよ。

-「Anything, Anything」は、2021年にDCコミックスの作品シリーズ"Dark Nights: Death Metal"のサウンドトラックへ別バージョンが提供されています。本作収録のバージョンでは"Dark Nights: Death Metal"版のパンキッシュな部分を抑え、よりエモーショナルなアレンジへと変化していますね。

"Dark Nights: Death Metal"の依頼があると、俺たちは("Dark Nights: Death Metal"サウンドトラックの)プロデューサーのTyler Batesと一緒に仕事をした。そして、LAのEastWest Studiosに行ったんだけど、レーベルは「Anything, Anything」のもっとレトロなバージョンをやらせたがったんだ。結果はとってもクールなものになった。Tylerとの仕事はとっても楽しかった。あのサウンドトラックはすごくスペシャルだった。すごくクールなことをやったんだ。今回スタジオに戻ると、Esjayと一緒に、曲をもっとモダンにしたんだ。これはもともとDRAMARAMAの曲なんでね。そうして、ほとんどポップ・パンクっぽいバージョンにしたんだ。パンクというよりは、俺たちがレトロ・バージョンでやったもののポップ・ロック・バージョンかな。俺はとっても気に入っている。お気に入りのバージョンだ。Chesterも誇りに思っているだろう。テンポをちょっと落としたんだけど、曲全体が良くなったと思うな。

-前作のインタビューでは、アルバム3枚ぶんのマテリアルが残っているとコメントされていましたが、このプロジェクトは今後も続く予定なのでしょうか?

今年、5曲分のアコースティックEPを作ることはもう決まっているから、それは予定に入っている。あとは様子見だよ。このアルバムを作ってとても楽しかった。大変な作業だったけどね。まぁ、何かあるんじゃないかっていうのが俺の直感だね。そして、みんなこのアルバム『The Phoenix』を楽しんでくれると思うな。大成功すると思う。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

聴いて、GREY DAZEにチャンスを与えてくれてどうもありがとう。俺たちが思っていたとおりに君たちが共感してくれることを願っているよ。君たちがこの音楽をとても気に入ってくれるといいな。これを聴いてチャンスを与えてくれることが、俺たちはとっても嬉しいよ。