INTERVIEW
OUTRAGE
2021.10.23UPDATE
2021年10月号掲載
Member:阿部 洋介(Gt) 安井 義博(Ba)
Interviewer:荒金 良介
もともとカラフルなアレンジだったんだなと改めて気づいた
-そして、CD2は、地元名古屋の交響楽団が『THE FINAL DAY』を丸ごとフル・オーケストラでカバーした音源が収録されています。このアイディアはどこから?
安井:30周年をやるうえでいろんなアイディアがあり、オーケストラと一緒にコラボするとか、アナログ出そうよ! と提案したけど、それは却下されました(笑)。その中で出てきたアイディアとして、オーケストラ・バージョンをやるという。
-バンドとオーケストラの融合はありがちと言えばありがちですが、オーケストラ・バージョンのみという形式は新鮮でした。内容も本当に素晴らしかったです!
阿部:こっちは客観的に聴けるし、最初に聴いたときは涙が出ましたね。
-どの場面で涙が出たんですか?
阿部:自分のギター・ソロとか、メロディを違う楽器で切々と弾いている音色を聴くと、目頭がじんと来ちゃって。
安井:長年音楽をやってきて、いろいろと音楽を理解した状態で聴くと、なるほどね! って。アレンジする人の解釈、音の拾い方は勉強になりました。オーケストラはいろんな楽器を使っているから、ギター・パートもいろんな人が交じって組み立てているし、それはベースもそうだしね。音が立体的に組み合わされているので、あぁ、こうなるんだ! って。
阿部:こうなるんだ! と思ったと同時にすごく忠実だなと思った。アレンジした人もそのままやっただけです、みたいな話をしていたからね。
安井:さすがプロだなと。
-当然と言えば当然ですが、楽器が違うので楽曲の雰囲気はかなり違うし、これはこれで独立した良さがありますよね。
阿部:アレンジに一貫した世界観を感じる。映画音楽みたいに画が浮かぶから。それはアレンジ力の高さでしょうね。
安井:あと、立体的と言ったけど、俺らが知らず知らずに立体的な曲を作っていたんだなと感じました。メロディ、コード感とか、3コードのロックンロールだったらこうはいかないと思うから。
阿部:はははは(笑)。
安井:何かをつけ足すわけでもなく、忠実に再現していて、これだけのものができたから。当時それだけの曲を作れていたんだなと。
阿部:「Follow」とか、面白いよね!
-「Follow」のイントロを聴いたときに笑っちゃいました。お江戸感が溢れ出てますよね。時代劇に合いそうだなと思いましたね。
阿部:はははは(笑)。橋本(NAOKI/Vo)さんは能みたいな雰囲気を感じると言ってた。あと、「My Final Day」のギター。ソロがジャズになっちゃうところも好きですね。初めて聴いたときはビックリしたけど、センスいいなと思いました。
-こうしたオーケストラ作が成立するのも、『THE FINAL DAY』って作品が持つ力なのかなと。
阿部:うん、ほかの作品ではこういうふうにならなかったと思う。
安井:向いているよね?
阿部:うん、向いてる。
安井:わからないけど、ドイツで録音したこともあるのかな。
阿部:おっ! その意味ではStefanの感性も反映されているのかなと。
-向いているとは?
阿部:オーケストラを聴いたときに、もともとカラフルなアレンジだったんだなと改めて気づいた。
-それは安井さんが言われていた"ミクスチャー"という言葉とも繋がりますね。
安井:そう! シンプルなお茶漬けでも、その出汁にはいろいろなものが入っているから(笑)。
-あと、08年にSHIBUYA BOXXで行った『THE FINAL DAY』完全再現("AWAKENING 2008")が初の映像化となります。あれから13年経ちましたが、振り返っていかがですか?
阿部:完全再現系はハードルが上がりますからね。でも、やれば楽しいし、お客さんも喜んでくれたから。何年もやっていない曲も入ってくるから、その感覚も取り戻さなきゃいけなくて大変でした。
安井:完全再現は面倒臭かったけど、プレイヤーとしては楽しめましたね。
-完全再現はお祝いの色合いが強くて、送り手のエゴを受け手に押しつけてしまうケースもあると思うんですが、『THE FINAL DAY』は頭からお尻まで全曲退屈させない稀有なアルバムだなと、BOXXで観ているときにも改めて感じました。
阿部:それを大きく書いておいてください(笑)。
安井:そう言ってもらえると、嬉しいですね。作った甲斐がありました。
-そして、2022年の夏に公開予定の映画"鋼音色の空の彼方へ"のことにも少し触れたいんですが、資料に"バンドの軌跡を辿る音楽映画ではない"、"ヘヴィメタル映画でもない"と説明文があり、謎のベールに包まれているなと。
阿部:脚本は貰っているけど、映画を初見で観たいもので、あえて目を通してないんですよ。
安井:俺も詳しくは知らないんですよね。
阿部:劇中の演者は、OUTRAGEを演じる役者を演じていて、それでOUTRAGEのヒストリーが進んでいくという。だから、同時に演者の俳優の人生も描かれているので......。
-いろいろと入り組んでいるんですね。
安井:随所にOUTRAGEの実話を入れているので、ドキュメンタリーな部分もあります。
阿部:山田(貴教)監督と長時間にわたるインタビューをやって、それを盛り込んでますからね。だから、フィクションなんだけど、実話にもとづいてます。OUTRAGEの伝記を撮っている映画と言うのかな。なかなか説明しづらくて、観ればわかると思います。
安井:インタビューで話したことがどこまで使われているかはわからないんで。
阿部:人のライヴに爆竹を投げ込んだ話とかね(笑)。
-観てのお楽しみですね。それと今作のツアー([OUTRAGE The Final Day 30th Anniversary Tour 2021 "RE:prise"])が10月末から始まります。
安井:"RE:prise"は戻るってことだから、最後の曲から順番にやります。
阿部:いや、まだ何も決まってないんですよ(笑)。まぁ、完全再現するかはさておき、タイトルはそういうことになってますから。それも楽しみにしてもらえたらなと思います。