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2010.07.01 14:02 | ライブ情報
DIR EN GREY、待望の国内ツアー開幕!
意外性の連続から垣間見られた「揺るぎない明日」。
そしてツアー終了後に控えた、境界線無用の世界的展開。
「まさか?」の連続だった。「逆もまた真なり」が随所にちりばめられていた。しかもそうした現実そのものが、結果的にはこのバンドの「揺るぎない明日」を象徴していたように思う。6月29日、東京・新木場STUDIO COASTで幕を開けたDIR EN GREYの新規ツアー第一夜を目撃して、僕が何よりも強く感じさせられたのがそれだった。
『THE UNWAVERING FACT OF TOMORROW TOUR2010』と銘打たれた今回のツアーは、去る1月9/10日に行なわれた日本武道館公演から半年弱を経て開幕に至ったもの。その二夜公演をもって、現時点での最新オリジナル・アルバムにあたる『UROBOROS』(2008年11月リリース)を基軸とする一連の活動が完結に至っていただけに、オーディエンスの興味は当然ながら、彼らがステージ上で披露してくれるはずの“次”に向けてのヒントが何であるかに集中していたに違いない。が、そうした当然の好奇心すらも余分な邪念として蹴散らしてしまうようなすさまじさが、この夜のライヴにはあった。
念のために補足しておくと、ツアーの序盤に組み込まれたこの東京公演(6月29/30日)は、彼らのオフィシャル・ファンクラブ会員のみを対象とした限定ライヴ。この2公演を皮切りに、これから7月21日までの間に計9公演が行なわれることになっているだけに、この時点で具体的な演奏内容について書き記すことには若干の抵抗をおぼえざるを得ない。が、象徴的な事実として明かしてしまうと、この第一夜は「304号室、白死の桜」で幕を開け、最後の最後、アンコールは「CHILD PREY」の余韻のなかで終了した。言うまでもなく前者は1999年発表の1stアルバム、『GAUZE』からの楽曲。2002年に第13作目のシングルとしてリリースされた後者は、オーディエンスに一体感をもたらす必殺曲として長年にわたって定着していたナンバーだが、ここしばらく演奏メニューに名を連ねていなかったものだ。
こうしたある種のサプライズ要素について躊躇なく明かしてしまうことができるのは、驚嘆をもたらす楽曲がそれらばかりではなかったからでもあるし、今回のツアー全体を通じて彼らが「まったく同じライヴ」を重ねることは一度もないはずだと確信できるからに他ならない。「心地好い緊張感」などという表現では生ぬるく感じられるほどのテンションと、きわめて硬質に研ぎ澄まされたサウンド。意外すぎる選曲の連続と、その意外性にこそ「ずっと変わっていない何か」を解き明かす鍵が隠されていたという事実。従来とは異なったポジションで存在感を放つようになった『UROBOROS』の楽曲たち。このバンドにしてはめずらしいほどの光量を伴ったまばゆいステージと、「目もくらむような逆光は、実は闇にも等しい」という真理。この場で書き連ねておきたいことは山ほどあるが、とにかく僕には、冒頭にも記したとおり、時間軸を縦横無尽に飛び越えながら繰り出されたさまざまな楽曲たちが、このバンドの揺るぎなさを無言のうちに実証していたことが印象的だった。もちろんこのツアーの全公演に足を運ぶことなど僕自身には不可能だが、できることならそうしたい。そんな欲求を刺激せずにおかない一夜だった。
DIR EN GREYはこのツアーを終了直後、7月25日には韓国の仁川(インチョン)で行なわれる『PENTAPORT ROCK FESTIVAL』に、STEREOPHONICS、HOOBASTANK、IAN BROWN等と肩を並べて出演することになっている。その後は既報どおりイギリスに飛び、8月1日にはネブワース・パークでの巨大フェス、『SONISPHERE 2010』(3日間にわたって行なわれ、IRON MAIDEN、RAMMSTEINなども出演)の最終日に登場。同3日にはロンドンでの単独公演が行なわれ、さらに8月5日にはモスクワ、同6日にはサンクトペテルブルクにおいての、自己初となるロシア公演も決定している。当然ながらこれらはすべて、日本で幕を開けたばかりの『THE UNWAVERING FACT OF TOMORROW TOUR 2010』の一環としてのものであり、ロシアでの2公演終了後も、このツアーは続行されるものとみられている。
そしてすでにご存知の読者も多いはずだが、10月16/17日にさいたまスーパーアリーナで開催される国内最大級のメタル・フェス、『LOUD PARK 10』への出演も決定。OZZY OSBOURNE、KORN、AVENGED SEVENFOLDをはじめとする強豪たちが集うこのフェスに、DIR EN GREYは2006年以来の帰還を果たすことになる。気の早い話だが、そこで彼らがどのようなステージを披露することになるのかにも、当然ながら興味をおぼえずにはいられない。が、今回のツアー第一夜でも証明された「揺るぎなさ」を、間違いなくその場でも感じさせてくれることだろう。同フェスについては今後、追加出演情報も続々と届くことになるはずなので、そちらもあわせて楽しみにしていたいところだ。もちろん8月のロシア公演終了から10月の『LOUD PARK 10』までの2ヵ月と少々の空白も、ずっと空白のままであろうはずがない。始まったばかりの国内ツアーの動向のみならず、やはりこのバンドの「明日」には常に注意を払っていたいものである。
text by 増田勇一
photo by 野田雅之