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LIVE REPORT

DEXCORE

2022.09.04 @Spotify O-WEST

Writer オザキケイト Photo by Jellyfish

我々が住むこの世界が"コロナ禍"という言葉で支配されるようになってから2年半の月日が経った。世の中の流れはどのようにしてこの未知のウィルスと共存していくかの議論がされており、もはやコロナ禍以前のような生活を取り戻すことは半ば諦めているようにも感じる昨今だ。そんなCOVID-19が我々の生活を一変させ、我々は未だに"19"という数字から前に進むことができないという意味が込められたミニ・アルバム『-18-』を昨年末にリリースしたDEXCOREが、同じタイトルを冠したワンマン・ライヴを東名阪で開催中。本稿では9月4日にSpotify O-WESTにて行われた東京公演の模様をレポートする。

若手バンドの登竜門とも言えるSpotify O-WESTには大勢のファンがつめかけていた。ひとつ補足するならばDEXCOREは結成から名古屋を活動の拠点に置いているバンドであり、その彼らが東京のド真ん中にあるSpotify O-WESTに超満員のオーディエンスを集めたという事実そのものがDEXCOREへの期待度の表れと言っても過言ではないだろう。

定刻を少し過ぎ、開演を待ちきれないオーディエンスのエネルギーが会場中に充満したのを感じ取るように暗転すると、漆黒の衣装を身に纏ったメンバーがステージイン。最後に楽器隊とは対照的な真っ白な衣装に身を包んだ架神 -kagami-(Vo)がステージに置かれたマイクを手に取るやいなや、ド迫力の咆哮を響かせ「18」からライヴ・スタート。"かかって来いWEST!"の煽りから間髪入れずに「NEW ERA」になだれ込むと、フロアのスイッチにも火がつきヘッドバンギングを繰り出す。続く「DRAGOUT.」では会 -kai-(Ba)と伶司 -reizi-(Dr)の一糸乱れぬ極悪なユニゾンを轟かせ、会場のボルテージをぐんぐんと上げていくなか、その熱量をさらに上昇させたのはPK(PROMPTS/Vo)の飛び入り参加によるフィーチャリングだった。まさかのコラボレーションにフロアからは歓呼が漏れ聞こえるなか、PKは自身のライヴがある新宿へと足早に去っていったのだった。

"WESTへようこそ! 来てくれてありがとう!!"と感謝を述べると、その感謝は最近のライヴでは滅多に披露されない初期の佳曲である「Imitation」という形でオーディエンスへと届けられる。さらに「THE DARK」では梦斗 -yumeto-(Gt)が邪悪なサウンドを繰り出しながら広いステージ上を縦横無尽に暴れ回る。そして、この日のハイライトとなったのは「EARTHWORM」だろう。VICTIMOFDECEPTIONのMAKITO(Vo)とのフィーチャリングで知られるこの楽曲で誰もが完全再現を期待したところ、架神 -kagami-の口から発されたのは"MAKITOが来れないんだって"という残念なニュースだった。しかし、肩を落とすフロアに向けて放たれた"ヤバいこと起こるから見てて"という言葉の意味を、そのとき我々はまだ知る由もなかった。そこからおおよそ3分後、DEXCOREの楽曲の中でも随一のブルータルさを誇るこの楽曲に花を添えにフィーチャリング・ゲストとして現れたのは、NOCTURNAL BLOODLUSTの尋(Vo)だったのだ。架神 -kagami-の憧れのバンドでもあるNOCTURNAL BLOODLUST、そして尋の登場に、オーディエンスよりも架神 -kagami-自身が興奮しているようで、"ガチヤベぇ! 夢叶っちゃった!!"とオフマイクで叫ぶと、会場は拍手に包まれ、桁外れのスクリームを見せつけた尋はステージをかき回し、サムアップしながら嵐のようにステージを去っていった。

DEXCOREの楽曲の魅力はと聞かれれば、大半のリスナーがメタルコアやデスコアを基盤にしたアグレッシヴな楽曲と、それに相反する美しいメロディをクリーンで歌い上げるセクションが共存するところだと答えると思うが、彼らの楽曲のもうひとつの魅力は間違いなく歌モノにある。まさにセットリストの中盤に組み込まれた「magnet」、「Closed(t)」の流れはその魅力が詰まったセクションだったと言えるだろう。その中でも、暗闇の中で歩き出すのを恐れながらも一歩を踏み出そうと歌う「Closed(t)」は現状のDEXCOREの心情にもリンクし、自らを鼓舞するかのように胸を叩きながら歌う架神 -kagami-が印象的であった。

ライヴは終盤戦。彼らはこのCOVID-19に蝕まれた真っ暗な世界において一歩踏み出し、その先に希望を見いだすことができるのか。そこには文字通り自己嫌悪がつきまとうと訴えるかのようにSABLE HILLSのTAKUYA(Vo)をフィーチャリング・ゲストに迎えた「Self-Hatred」をドロップし、それでも恐れることなく前を向いて進むという決意を持って歌われた「DON'T BE AFRAID」、そしてその先には希望の光があるはずと突き抜けるような「THE LIGHT」をプレイ。これをまさしく彼らの決意表明と受け取った。そして、キラーチューン「Brain Washing」を本編ラストに、"WE ARE DEXCORE!"と高らかに拳を突き上げステージをあとにした。

"なんで音楽がこういう時期でもこの時代に生き残ってるかって、それでもめげずにやってるバンドマンと、こうやってライヴに来てくれるあなたたちのおかげだって思ったんですよ。(それに対して)ありがとうとしか出てこないんだけど、俺らの音楽で、俺の歌で返したいなって思ってます。前みたいなライヴハウスになる未来もきっと来ると思うし、来るように俺らも死ぬ気でやるから、一緒に迷いましょう"

とはアンコールの架神 -kagami-の言葉だが、この音楽業界にとって極夜とも言えるこの状況で、ファンの手を引いて光へ導くのではなく、ファンと手を取り一緒に手探りで光を探すことを"迷う"と表現したのはある意味彼らなりの嘘偽りのない素直な言葉であると感じた。

"ちゃんと俺らの音、聴こえてる? 死ぬ気でやってるよ、俺ら"と演奏されたパワー・バラード「Visitor」では彼らの胸の内を曝け出すような心の叫びを響かせ、さらにはこちらも久しぶりの披露となった「Mistake」ではフロアから歓喜の悲鳴が漏れた。そして、ここからはラスト・スパートと言わんばかりに「Living hell」、「The Sky is Crying」とアッパー・チューンを立て続けにお見舞いし、極めつけは「Naked」。"もっと近くで歌わせてくれ! コロナってなんだよ!!"とフロアとのその距離にもどかしさを感じながらも、少しでもオーディエンスの近くへと架神 -kagami-はステージからこれでもかと歌を届ける。すると、オーディエンスもそれに応えるように、シンガロングはできないものの彼らを後押しするかのごとく拳を突き上げるその様は、まさに一緒に光を探そうという気持ちをひしひしと感じることができたシーンであった。

世の中のこの状況は決して誰かが悪いわけではない。だからこそ出口が見えないし、その出口を探すために"一緒に迷う"のだ。そんな想いを込めてこの日のラストに演奏された「Who's fault ?」こそ、彼らがこの世の中に対して出した答えだったように思う。

人は弱く、時に折れそうになるけれど、弱さを受け入れ、共にもう一度我々が愛するライヴの在り方を、ライヴハウスの形を取り戻そうではないか。そして、いつか"あの頃"を取り戻して喜び合えるそのときまで一緒に迷えばいいのだ。その手さえ掴んでいれば、この先迷うことはあってもはぐれることはないのだから。


[Setlist]
1. 18
2. NEW ERA
3. DRAGOUT. feat. PK from PROMPTS
4. BLACK PIG
5. Imitation
6. THE DARK
7. EARTHWORM feat. 尋 from NOCTURNAL BLOODLUST
8. Two-Dimensional
9. magnet
10. Closed(t)
11. SE~Self-Hatred~Self-Hatred feat. TAKUYA from SABLE HILLS
12. DON'T BE AFRAID
13. THE LIGHT
14. Brain Washing
En1. Visitor
En2. Mistake
En3. Living hell
En4. The Sky is Crying
En5. Naked
En6. Who's fault ?

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