LIVE REPORT
DIAURA
2021.06.19 @日本橋三井ホール
Writer 杉江 由紀 Photo by 尾形隆夫 ※写真は6月20日(日)日本橋三井ホール公演時
"主従関係"というかたちをとってはいるものの、そこに築かれているものの実態は運命共同体としての絆、と表現したほうがより正しいような気がした。
"独裁者"を自称するDIAURAと、彼らを信奉するファンであるところの"愚民"。今宵、その両者が集った場所で繰り広げられたのは、5月から始まっていた"DIAURA 10th Anniversary『INCOMPLETE EDEN』tour"のファイナル公演(1日目)だ。
昨年末に結成からいよいよ10周年を迎えたDIAURAが、今春リリースしたベスト・アルバム『INCOMPLETEⅡ』と連動したこのツアーを、重要な節目として考えていたのであろうことはもちろん想像に難くない。しかも、彼らはこのコロナ禍においても、徹底して"愚民たちと面と向かえる独裁の庭=生のライヴ空間"にこだわってきた経緯があり、これまでにワンマンのライヴを無観客で配信したことはないのだとか。
"独裁の庭へようこそ。ついに帰ってきたぞ、東京ただいま! いよいよ今日と明日で「DIAURA 10th Anniversary『INCOMPLETE EDEN』tour」はこの日本橋三井ホールでファイナルを迎えます。このツアーに対しては、精神論としてどの土地でもどの会場でも常にファイナルというつもりでずっとやってきてます。そして、お前たちともそういう気持ちでぶつかり合ってきました。そうだよな、お前たち! このコロナのなかでも去年から少しずつライヴを重ねてきた今、どんなに不自由ななかであろうと、その不自由さえ逆手にとって楽しめば良いと俺は思ってる。だから、今日は全員で楽しみ尽くして最高のファイナルにしましょう!"
フロントマン yo-kaがこのように述べたとおり、まさにこの場で彼らと愚民たちが共に繰り広げていった光景は、"不自由さをむしろひとつの刺激と捉えるかのような"ものだったと言っていいはず。場内にはいわゆるバンギャル層のみならず、大人の女性や男性の愚民もちらほら見受けられ、その誰もが時に頭を振りまくり、時には拳を振り上げながら、この独裁の庭だけに漂う刺激的で濃密な時間を堪能していたに違いない。
特に、ライヴ中盤で翔也の弾くスラップ・ベースや、達也の叩き出す絶妙にラテンなニュアンスを帯びたリズムが映えていた「CRIMINAL BEAST」と、アグレッシヴな面持ちとドラマチックな空気感の両方を、佳衣(Gt)が巧みに曲の中に織り込んでいった「MALICE」の2曲が連打されたくだりは、非常に圧巻で、それは確かにライヴ・バンド DIAURAとしての威風堂々たる貫録をひしひしと感じられた場面だったように思う。
また、アンコールでは、メンバー全員が今ツアーを回ってきて感じたことをそれぞれにMCにてコメントするひと幕もあったのだが、彼らの言葉からは異口同音に10周年の節目を経たうえで、ここから未来を目指していくという強い意志が伝わってきた。
そして、この夜の最後にyo-kaが、"俺たちと愚民のみんなに祝福の光が降り注ぎますように"というメッセージを添えたうえで歌い上げた「BLESS」の中に溢れていたのは、DIAURAの描く愛と願いの念にほかならない。"誰にも触れない僕のこの世界で/このままずっとこのまま愛してる/君を"というその歌詞は、そのまま独裁者から愚民への真摯な言葉として深く響いてきたのである。
なお、今秋に彼らは5thアルバム『R.I.P.』を発表する予定とのこと。慈悲深き独裁者たるDIAURAの、次なる10年へと向けた輝かしき歴史がまた始まっていくのだ。
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