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LIVE REPORT

FALL OUT BOY

2013.04.02 @恵比寿LIQUIDROOM

Writer 山口 智男

5年ぶりにリリースする最新アルバム『Save Rock And Roll -FOBのロックンロール宣言』を聴き、FALL OUT BOYはもうポップ・パンク・バンドでもエモ・バンドでもなく、現代的なポップ・サウンドを作ることに極めて意識的なロック・バンドだと確信したにもかかわらず、こうやってライヴを観てしまうと、ちょっと考えが変わると言うか何と言うか。
いや、新作に対する評価は、もちろん変わらない。しかし、「Grand Theft Autumn / Where Is Your Boy」をはじめ、大半の曲でバンドと一緒に歌いながら、ファンがFOBの帰還を歓迎した今回のライヴから判断すれば、バンドにしてもバンドとファンの関係にしても、ポップ・パンクとかエモとかと言われていた頃と全然変わっていないようにも思えた。
それにもかかわらず、新作における成果をポジティヴに捉える一方で、以前の彼らを否定するような(いや、決して否定しているわけではないけれど)言い方をしてもいいものかと、雨が降る中、チケットを求め、会場の外に立っていたファンの姿を思い浮かべながら、ふと思ったのだった。
新作のプロモーションのため緊急来日したFOBが行った一夜限りのプレミアム・ライヴ。チケットはあっという間にソールド・アウトになり、会場には彼らの復活を心待ちにしていたファンが詰めかけた。
2週間前、テキサス州オースティンでSXSWに出演した彼らのライヴを観て、アメリカのファンが熱狂する姿から3年経っても衰えていないFOBの人気を感じ取ったものだけれど、どうしてどうして、日本のファンもアメリカのファンに全然、負けていなかった。むしろ、バンドと一緒に歌う曲は今回、日本のファンのほうが多かったんじゃないか。
Patrick Stump(Vo/Gt)の"日本に来てから渋谷、原宿で買い物したり観光したりして、桜の花も見たけど、こうやってみんなの姿を見るのが1番だ"なんてMCを挟みながら、オープニングの「Thriller」以下、これまでリリースしてきた4枚のアルバムからまんべんなく曲を披露。「Dance, Dance」で客席を盛り上げたあとは"まったりしよう"とバラードの「What A Catch, Donnie」も演奏した。『Infinity On High -星月夜』からの曲が計6曲と1番多かったのは全米No.1ヒット作だからか。
中盤、「Holy shit!」とPete Wentz(Ba)が客席にいるScott Murphyに気づいて、ステージに上げるというサプライズにファンは大喜び(Scottはこの日、メンバーには内緒で来ていたそうだ)。地元が同じシカゴということで、FOBとは昔から友人だったというScottが語ったところによると、FOBの初めての全米ツアーはScottのバンド、ALLISTERと一緒だったそうだ。また、FOBの初来日に着いてきたScottはPeteからライヴの時、MCに使える気の利いた日本語を教えてほしいと頼まれ"男大好き。チンチン欲しい"と教えたという思い出話を披露。"あれはおもしろかった(笑)!"と笑いを誘った。
終盤、新作からの1stシングル「My Songs Know What You Did In the Dark (Light Em Up)」を披露したFOBはアンコールではこの日がライヴ初披露となる新作からの「Phoenix」も演奏。冒頭にオーケストラ・サウンドを加えたFOB流ディスコ・ナンバー。ダンサブルなビートが会場を揺らすと、そのままラストの「Saturday」になだれこむ。ベースを弾きながら激しいスクリームを加えていたPeteは例によって、ベース・ギターをローディーに託すと、客席にダイヴ......と思いきや、安全上の問題なのか、この日はステージを下りたところで、ファンに駄目押しのアピール。それでもファンは大喜びだった。
バンドの健在を印象づける1時間半の熱演。それを目の当たりにしながらFOB復活の喜びを噛みしめることができた幸運に感謝。

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