LIVE REPORT
BRING ME THE HORIZON Japan Tour 2011
2011.02.22 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer NANAKO!
"HERO"とは何だろうか。どんな姿をしてどんな行いをした者がそう呼ばれるのだろうか。
BULLET FOR MY VALENTINEとの来日公演から早5ヶ月、単独初来日公演からは1年9ヶ月振りにハードコア、デスコア・シーン唯一無二のモンスター・バンド、BRING ME THE HORIZONが再び旋風を巻き起こした。
本公演は渋谷CLUB QUATTROで行われ、前回の単独公演の原宿ASTRO HALLの収容人数400人の2倍に相当する800人の会場を文字通り満タンに満たした光景は正に、彼らが若干2年にしていかに日本中のモッシュ・キッズに影響を与えたかを見せつけられた。
事前にアナウンスされていたOAのDEEZ NUTSがキャンセルとなったものの、急遽 18:30~30分間に渡ってBRING ME THE HORIZONのフロントマンであるOli Sykesを中心とした、母国UKではお馴染みのサイド・プロジェクトNEW BATCHがDJプレイを披露し会場を暖めた。BRING ME THE HORZONといえばリラックマ!と言わんばかりの着ぐるみ姿のメンバーに癒されたファンも多いのではないだろうか(笑)。
そして19:30少し過ぎた頃だろうか、待ちに待ったショウの始まりだ。前後左右、身動きが取れない程ぎゅうぎゅうな会場にライトが照らされると同時にもの凄い歓声が響き渡った。去年10月にリリースされた目下のところの最新作である4thアルバム『There Is A Hell Believe Me I've Seen It. There Is A Heaven Lets Keep It A Secret』から「It Never Ends」のイントロ・パートのピアノが切なく、且つアルバムのイメージである生と死を連想させるメロディが会場を妖美な雰囲気で満たした。と思ったのも束の間、Lee Maliaと本作から加入したJona Weinhofenのギターが響き渡ると、会場のテンションは急上昇。それは、突出したカリスマ性を放つフロントマンOli Sykesがマイクを片手に体を屈め叫んだ瞬間とうとう頂点に達した。ダイブが大好きなことでも有名なOliは一発目から最前のオーディエンスに乗っかり、"Tokio!!!!!"と叫んだ。それに触発されたオーディエンスも次から次へとモッシュ、ダイブと男女構わず入り混じる様子はさすがBRING ME THE HORIZON!
そして2曲目の「Diamonds Aren't Forever」が始まるやいなや、会場は「We will never sleep !~」と大合唱に包まれた。Jona(Gt)が見事なパフォーマンスを披露し、メンバーのテンションも急上昇。何といってもこの曲の見せ場は彼らの誘導するウォール・オブ・デスである。Oliの両手が縦に開かれると徐々にオーディエンスは二つに分かれ、今か今かとブレイクダウンを待ちわびていた。この曲のPVがそのまま再現されたかの如く本当に素直過ぎるほど一気に開かれた様はモーセの十戒を連想される程だった(笑)。最初のOliがただ手を挙げただけのサイレントMCでは、オーディエンスが皆一丸となってハンズアップし、その光景は宗教的な雰囲気すら思わせる程美しい。そして「Alligator Blood」ではサークル・ピットを作り、また会場を揉みくちゃにしたがMCで"アリガトウ"と可愛らしい日本語を披露し、"OAのNEW BATCHはどうだった?楽しんでくれた?"と笑顔でオーディエンスに投げかけていた。次の曲「Fuck」では中指を皆で突き出し会場の一体感をキープし続け、"もっとこいよ!"とモッシュするオーディエンスを触発しながら端から端まで飛びまわるパフォーマンスにOli独特のやんちゃさが垣間見える。
BRING ME THE HORIZONがキッズから絶大的かつ熱狂的な支持を受けているのは、ここ数年でハードコア・シーンの頂点に君臨する程の名声を得たものの、彼らが常に等身大のアーティストであり、彼ら自身がキッズの目線でショウを心から楽しんでいるからである。私が一番感動したのは、Oliがモッシュ・ダイブしてきたキッズ一人ひとりに笑顔で手を取り、マイクを向けている光景だった。オーディエンスが暴れれば暴れるだけ満面の笑みで見渡している姿は彼自身が心からファンと一緒に楽しんでいる証拠だ。Oliの左の掌に彫られた"HIGH FIVE!"は正にこのために、ショウでオーディエンスと手を合わせるためにあるのである。
「Crucify Me」や「Blessed With The Curse」では4thアルバムのテーマである、彼らの欲、絶望といった人生の葛藤が曲だけでなくパフォーマンスにもうまく表現されている。それは例えば3rdまでの作品にはあまりなかったLee(Gt)のクリーン・メロディや、Jonaの美メロ的要素満載なクリーン・コーラス等の表現だと言える。こういった工夫は既にレコーディングの段階から意図していたものと考えられるが、やはり実際に目にすることでよりその作品の意味が理解でき、より一層味わえる。日々ツアーで世界中を飛び回っているために、少々Oliの声に擦れがあったかもしれない、しかしそんなことも「There Is~」ではむしろプラスとなっている。「Blessed~」の間奏で彼が膝を着いて天を仰ぎながら"皆オレと一緒に歌ってくれ!お前らのために歌ってるんだ!"と泣きそうな声で届く限りに叫んでいた姿は強烈な印象を残し、私自身涙しそうになった。
オーディエンスをがっつり引っ張り続け、「Anthem」で本編を終わらせるとたちまちアンコールの声が会場に響き渡り、メンバーが再びステージに戻ると即座にオーディエンスから「Chelsea Smile!」の掛け声が。そしてそれを耳にしたDr. Mattが笑顔で親指をグッ!と立てていたのが少し可愛らしかった(笑)。そして3rdからの長編楽曲「Suicide Season」で一旦会場をエモーショナルにし、最後の最後に、待ってました!と最強チューン「Chelsea Smile」でもう会場は完璧に出来上がり。Oliの"3、2、1、GO!!"の掛け声にモッシュ・キッズも最後の力をここぞとばかりに振り絞り、メンバーそしてオーディエンス、会場全てが最高潮に達した。
メンバーがファンの手を取り合ってステージを去ってからも歓声はずっと鳴り止むことを知らず、それは会場にいた全ての人が全力を出せた最高なショウであったことを実感できた瞬間であった。
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