INTERVIEW
LOVEBITES
2024.08.21UPDATE
2024年08月号掲載
Member:asami(Vo) miyako(Gt/Key)
Interviewer:吉羽 さおり
8月28日にリリースとなるLOVEBITESのニューEP『LOVEBITES EP II』。このタイトルやアートワークから、デビューEPとなった2017年の『THE LOVEBITES EP』を思い起こす人も多いだろう。最新作は、2022年に新ベーシストとしてfamiが加入し新体制となったメンバー5人でイチから作り上げる最初の作品となる。その初期衝動にも似たエネルギーを曲に封じ込め、さらに鍛え上げられた最新形のアンサンブルで、LOVEBITESのヘヴィ・メタルを提示する作品でもある。現在、初のワールド・ツアー"THE THIN LINE BETWEEN LOVE AND HATE WORLD TOUR"の真っ只中であり、8月には初の韓国公演も実施し手応えを得た。アクセルを踏みっぱなしのなかでリリースとなる『LOVEBITES EP II』について、asami、miyakoに話を訊いた。
リードやシングル以外にもすごい曲がある!というのがLOVEBITESの作品の良さ
-ニューEP『LOVEBITES EP II』は、ベースのfamiさんが加入した現体制でイチから作り上げた初の作品です。まずは作品に向かう上でのテーマ、モードはどういうものでしたか。
asami:famiが入って最初に作り上げる作品ということで、デビュー時の7年前の初期衝動を思い起こしてみようってところから作り始めたので、それでタイトルも"LOVEBITES EP II"がピッタリだとなったんです。原点回帰ではないですけど、そんな気持ちから始まって、今の私たち5人という進化した状態で作れた作品になりました。
-制作にあたっては、2017年のデビューEP『THE LOVEBITES EP』を何度も聴いたとうかがっています。改めて7年という時間が経た今、『THE LOVEBITES EP』はどんな作品でしたか。
miyako:最初はまだ曲もないし、LOVEBITESと言えばこんなヘヴィ・メタルだよねっていうのがない状態じゃないですか。手探りをしながらやりたいことをやって、自由に型にハマらずに作っていた時期なんですよね。何枚もアルバムやEPを作っていくと、自分の中でもある程度、こうすればいいんでしょ? こんなのが好きでしょ? じゃないですけど、勝手に型ができていて。その型がきっとLOVEBITESの良さでもあったと思うので、その型は崩さずに、今回さらにパワーアップするにはどうしたらいいのかが本当に難しい作品だったんです。同じことを焼き増ししても仕方がないし、昔のあの曲に似てるなとかあれと一緒だなって思われたら意味がないので。進化するにはどうしたらいいんでしょう......? うん、わからないなって思いながら(笑)、作っていった作品でした。
-たしかに進化とはなんぞやを提示するのは難しいところですね。
asami:そうですね。最初の『THE LOVEBITES EP』って、いろんな種類の曲が入っていたのがすごく良かったと思うんですよ。そういうのをもう一回作ってみないかという気持ちで、いろんなパターンの、且つ今の私たちがどのくらい詰め込めるかを試行錯誤した作品になったんじゃないかなって。結構、制作時間もかかりましたしボツ曲だらけでした(笑)。miyakoは何十曲も作っただろうし、他のメンバーもリフを考えるとか、何日も何時間もかけていろいろやったんですけど、その中でも厳選した5曲になりましたね。
-miyakoさんはいつ頃から今作に向けて曲作りをスタートしたんですか。
miyako:曲作り自体は前作『JUDGEMENT DAY』(2023年リリースのアルバム)のツアー("JUDGEMENT DAY TOUR 2023")終わりからですね。追加公演のKT Zepp Yokohamaを終えたのが昨年の10月だったので、それ以降はずっとやっていたと思います。
-最初の段階はとにかく曲を作るという感じで。
miyako:そうですね。ただなかなか。これは毎度そうなんですが、80点の曲って量産できるんですけど、80点じゃ皆さん満足してくれないじゃないですか。
asami:うん、難しいよね。LOVEBITESはリリースのペースが早いので、この曲はちょっと前のあれに似てるんじゃないかなとか、ここはこの間の曲と一緒じゃんとかっていうのが出てきちゃうんですよね。そこでいかに私たちらしさを残しつつ、新しいものを作り上げるかは本当に難しいもので。これLOVEBITESっぽいねっていうのは必要なんですけど、かといって、同じじゃダメじゃないですか。そこの境目というのが本当にいつも難しいんです。
-そういう制作の中で最初にできていったのはどの曲ですか。
asami:「Where's Identity」が早かったんじゃないかな。
miyako:そうだね。前の作品のときにもあったデモだもんね。
-最初にできたのがスラッシーでかっこいい曲っていうのは、次の曲へのいい勢いにもなりそうですね。
miyako:スラッシュは絶対に入れたかったので。
asami:他にもスラッシュの候補はあったんですけど、最終的に今回はこっちを完璧な形に構築しようかと決まったんです。
miyako:最近のLOVEBITESのスラッシュ系の曲は、かっこいいけど暗いというか、闇を感じる曲が多かったんですよね。LOVEBITESの初期ってもっとカラッとしたスラッシュ・メタルというイメージがあって、それを超えるのがしんどかったんです。リフが残らないねとか、ライヴで盛り上がっている絵が浮かばないねとか。挑戦はずっとしていたんですけど、なかなか思った通りの曲ができなくて、やっとライヴでやったら盛り上がりそうだし、いい感じのスラッシュ・メタルに仕上がったんじゃないかなという曲ができて。まだファンの方には聴いていただいてないので、どう聴いてくれるかドキドキなんですけど。
-ライヴが楽しみな曲ですよね。asamiさんの歌詞についてはどうですか。
asami:私はスラッシュな曲では問題提起をする歌詞を書きたいなと思っていて。今回も、SNSで炎上するとか世の中そういうことが多いじゃないですか。息苦しいし、顔が見えない人たちからの攻撃を受けてしまう世の中で、真実かどうか分からないものに翻弄されてしまうことも多いと思うので、それぞれの意思はどこにあるんだ? っていうことを歌いたいなと思ったんです。
-今作では、己をより強固に確立していくとか、いろんなしがらみや無駄なものから解き放たれて自由になるとか、自分の正義に対して恐れるなとか、強いメッセージを放つ歌詞が多いなと感じます。
asami:そうですね。asami節というか、今までもそんな歌詞を書いてきたんですけど、新たにこの5人で進んでいくにあたってもう一度、そういう強い気持ちで進んでいきたいなって思いがあったので、それが強く描かれているのかもしれないです。
-特に意識したメッセージやワードはありましたか。
asami:曲ごとに違うんですけど、全体的には、とにかく前に前に強く向かって行こうというメッセージが込められていると思いますね。私たちの目標である武道館でのライヴや、その先に行きたいところも明確にあるので。それに向かってみんなで進んで行きたいなっていう気持ちが、「Someone's Dream」とかには一番書かれているかなと思います。
-「Someone's Dream」はまさに共に物語を紡いでいこうという曲ですよね。ではそれぞれの曲についてもお伺いしていきます。本作からの1stシングルとなった「Unchained」がEPの1曲目となりますね。LOVEBITESならではの華麗さがぎゅっと一曲に詰まった内容ですが、どのように作っていった曲ですか。
miyako:これは制作の最後の最後に滑り込みセーフでできた曲ですね(笑)。"LOVEBITES EP II"と言うからには、みんな最初のEP『THE LOVEBITES EP』を思い起こすわけじゃないですか。『THE LOVEBITES EP』は「Don't Bite The Dust」でスタートしていて、新しい曲がそれと同じような曲だと、みんなどうしたって「Don't Bite The Dust」のほうが思い入れが強いし、ライヴでもたくさんやっているから打ち勝てないと思うんです。でも「Don't Bite The Dust」をいかにして超えるかという枠の曲は、絶対に入れたかったんですよ。なぜなら"LOVEBITES EP II"だから。ただやっぱり、なかなかできなかったですね。"超えてないな。うーんもう一声!"みたいな感じで(笑)、何曲同じような曲を作ったんだろうってくらい量産したなかで、やっと「Unchained」のもととなるデモができて。自分も曲を作りすぎて疲れちゃってたし、客観的に分からなかったので、メンバーに"これならどうですか"って投げたら、"来たじゃん!"となったわけなんです。その"来たじゃん!"っていうのはなんだったの?
asami:先に他の4曲はできていたんですけど、どうももう1つパンチに欠けるなって思いがあって。他の4曲はいい曲ではあったんですけど、miyakoが言ったように"LOVEBITES EP II"ということで、とにかく明るいリードが欲しかったんですよね。いい意味で何も考えずにみんなで一緒に歌えて騒げる、ノリのいい曲が欲しいなと思っていたなかで、なかなかそれが生まれなくて、最後の最後にもう一回miyakoに頑張ってもらって、これだ! っていう曲がきたんですよね。もちろんそのデモが素晴らしかったのもあったんですけど、曲を構築していくときに私も携わらせてもらって。みんなで一緒に歌えるサビがどうしても欲しかったので、サビはもっとキャッチーにいこうって最後まで相当力を入れたかな。"Be Free/Anywhere you want"ってリフレインのところは、これじゃない? というのができあがるまではかなり時間を使いましたね。それが生まれてきたのが今となれば一番良かったです。その瞬間はメロディと同時に──
miyako:もう歌詞が出てきたもんね。
asami:そう(笑)。そのノリで歌詞も一緒に乗ってきちゃうのって、一番大事なんですよね。歌詞まで想像できちゃうのが、これだ! っていう感じなので。そこでこの曲ができたかな。
miyako:ややこしいメロディってなかなか覚えづらいですしね。すでにMVは出してるので聴いてくれている方も多いと思うんですけど、仮にMVを出さずに突然ライヴでやっても、1番のサビを聴いて、2番のサビではもうみんな歌えるだろうなってくらいシンプルだし、キャッチーなメロディができたから、勝ったなと思いました。ライヴで絶対に盛り上がるわって、絵も浮かびましたね。
-この曲に至るまでにも曲をたくさん作っていたということですが、できたらその都度メンバーに聴かせていくんですか。
miyako:そうです。できたらいつも曲のリンクを送って"感想教えて"っていう感じで投げていくんですけど、メンバーとスタッフの反応は分かりやすいですね。微妙だと何も言ってこない(笑)。作った本人に"微妙じゃない?"とは言えないに決まってるじゃないですか。私も逆の立場なら言えないし。だから"聴いたよ"くらいのリアクションになると思うんですけどね。みんながいい曲だと思う曲は、"めっちゃいいやん!"ってすぐに来るので分かりやすいんですよね。今回良かったんだな、今回はあかんかったか、みたいな感じで。
-なかなか気持ちが削られるところもありそうですね。
asami:そうだよね。頑張ってくれてるからにはなるべくは構築していきたいので、サビをもうちょっと頑張ったらいいかもとか、ちょっとここはこうしようかとか、私はなるべく言うようにしてます。
miyako:言ってくれるんですけど、経験上、"めっちゃいいからさらにここをこう変えたらいいよね"っていうのは、いいパターンになっていくことが多いんですが、"強いて言うならリフがもうちょっと......"みたいなニュアンスだと、リフとなると曲の根幹部分になるので、根幹を変えるとなったらイチから作り直したほうがいいんですよね。だから意見によっては、これはボツだなって振り分けます。
-そんなステップを踏んでいって、これぞという感じでできたのが「Unchained」だった。
asami:めっちゃいい! ってなったよね、2人で。明るくて、いいナンバーだと思います。