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INTERVIEW

来門(RED ORCA)× Ali Tabatabaee(ZEBRAHEAD)

2022.11.05UPDATE

2022年11月号掲載

来門(RED ORCA)× Ali Tabatabaee(ZEBRAHEAD)

RED ORCA:来門(Vo)
ZEBRAHEAD:Ali Tabatabaee(Rap)
インタビュアー:村岡 俊介(DJ ムラオカ) Photo by 川野晴都
Interview interpreted and translated by 安江 幸子

-ご自分で歌詞を書くときに、第三者の視点が必要だなと思うことはありますか。

来門:そういうときはありますね。そのほうが楽っちゃ楽です。歌詞を20年も書いているともう言葉を出し尽くしてしまった感があって、いつも同じことを言っているなと思ったりして。

Ali:誰だっけ、"もう自分の思ったように曲を出すことができない。言いたいことを全部言ってしまったから"なんて言っていた人がいたなぁ。まぁ言いたいことはわかるよ。さて何を言おう? みたいに思ったんだろうな。俺の場合その状況が変わったのがパンデミックだった。俺たちがパンデミックで経験したことは、それまでまったく経験したことのなかったことだったから、またインスピレーションを貰ったんだ。うまく言えないけど、君の言っていることは完全に理解できるよ。ただ、最近の俺はそういうふうには思っていないんだ。それはおそらく、この約3年間家の中で過ごして、いろんな心配ごとがあったからだと思う。パンデミックから生きて抜け出すことができて、その経験をインスピレーションにすることができたことに感謝しているんだ。また言いたいことがたくさんできたからね。

-来門さんはいかがでしょう? コロナ禍の約3年を経てまた言いたいことが増えてきましたか。

来門:そうですね。ただ、パンデミックが起きる前から、倒れても俺たちは立ち上がろうぜみたいなのをずっと歌ってきたんで、だからこそ、今こそ俺のリリック......やってきたことを実現しなくちゃいけなくて。それをみんなに見せて、それをみんなといい感じで一緒に盛り上がれたらいいなと。自分の書いた言葉を証明するのが今だと思うんだ。

Ali:そうだ、それからもうひとつ言いそびれてしまったけど、君が日本語と英語をミックスして歌っているのがすごくクールだと思う。

来門:イタリア語でも歌えるよ。母がイタリア人なんだ。

Ali:マジか!

来門:まぁ、Non capisce Italiano(僕はイタリア語がわからない)だけどね(笑)!

Ali:おぉ。最高じゃねーか!

来門:いやいやいや......Non capisce Italiano(笑)!

Ali:イタリアに行ったことある?

来門:ああ、何度か。でも最後に行ったのは高校生の頃だったから......うわぁ、30年近く前だね。

Ali:Adrianはスペイン語とドイツ語が話せるんだ。マルチリンガルな環境ってすごく役立つよね。新しい言語を学ぶのもそうだけど、いろんな意味で。

来門:そう。それもあって、いつかはRED ORCAもアメリカでライヴをやりたいと思っているんだ。英語も勉強し直したい。(留学してから)もう20年経っているしね。

Ali:俺も毎日は使っていなかったよ。俺はイラン生まれだからペルシャ語を話すんだ。

来門:マジか! それは知らなかった!

Ali:アメリカに来たときは6歳だったから英語なんてまったく話せなかった。でもイラン人なんて近所にいなかったから......。

来門:イラン出身だからそんなにハンサムなんだ。

Ali:(照笑)学校はスペイン語圏の子たちだらけのクラスに入れられて、周りはスペイン語しか話せない子ばかりだった。俺はペルシャ語を話していて、先生はスペイン語で教えていて、どうやって勉強すりゃいいんだ? と思ったよ。最終的にはできるようになったけど。うちの家族は今でもみんなペルシャ語で話しているんだ。言語は練習しないと難しくなるっていうけど、俺は家族とはペルシャ語で話しているから維持できている。それには感謝しているよ。練習しないと忘れてしまうからね。

来門:本当だよね。俺の英語も消えてゆく......。

Ali:大丈夫だよ。アメリカにおいでよ! 遊びにだけでも。

来門:ああ。アメリカは素晴らしいところだよ。

Ali:日本も素晴らしいところだよ。

来門:日本も素晴らしいところだ!

-お互いのラップ・スタイルですが、相通じる部分を感じますか?

Ali:近いものはあると思うよ。君たちと同じで、俺たちもいろんなスタイルの音楽を組み合わせようとしているからね。そこにヒップホップとラップを被せている。それが共通点なのは間違いないね。

来門:そうだね。

Ali:それにどっちもロックのジャンルに入ると思うし。

来門:どんなことを基準に自分のラップやリリックを歌ってるんですかね? メイン・テーマはどんなもの?

Ali:俺の場合はその時々の情勢によるな。例えば俺たちは最近「No Tomorrow」(2022年10月配信リリース)という曲を出したばかりだけど、あの曲のベーシックなコンセプトは、家で"この2年間あれもこれもできたはずなのに"と思っていたことがきっかけだった。日本にも行くはずだったのに全部頓挫してしまって。もしかしたらもう二度と行けないかもしれない。そこまで考えたこともあった。そうこうしているうちに思ったんだ。なんで俺たちはとかく"あとでやるから"と言ってしまうんだろう? ってね。"今すぐやる"と言うべきところを。もしかしたら次の日なんてないかもしれないのに。

来門:なるほど。

Ali:あの曲のコンセプトはそういうふうにしてできたけど、コンセプトはいろんなところから生まれてくるんだ。例えば1日中テレビを観ていたらコメンテーターが何かいいことを言っていて、"これだ!"とひらめいたことをメモったりスマホに記録したりしておく。

来門:映画を観たときとか。

Ali:映画もそうだし、なんでもネタ元になるよ。友人の発言から"それいいね"と思ったことを記録して溜めておくんだ。で、曲作りを始めたら、"この言葉を意味が通じてなおかつクールな形で使うにはどうすればいいだろう"と考える。なんでもインスピレーションになるよ。俺にとっては毎回違うんだ。

来門:質問があるんだ。リリックがどうしても書けないときってある? 俺の場合はカフェで半日、というか6時間くらいねばって考えても"I am"しか書けないことがあって。

Ali:俺もそういうことがあったよ。ただ座ったまんま"あ......"と固まっていたことがあった(笑)。でも今はもうそういうことはしないんだ。まずは離れる。いったん離れて他のことをやってからまた戻るんだ。

来門:それはいいアイディアだね。

Ali:皿洗いをしたりジョギングに行ったり。ジョギングしながら"I am......"と考えているうちに、急にファッキンなくらい言葉がするすると出てくるんだ。そうしたら大急ぎで走って帰って、それをメモる。頭の奥では気づかないうちにずっとその続きを考えているんだよね。そこで身体を動かすと、俺の場合は答えが開けてくるんだ。すごく変なシチュエーションで。

来門:なるほど。スポーツとかで身体を動かすということだね。わかる気がするな。スノボとかバスケットボールとか。でもKanye West(現YE)とかA TRIBE CALLED QUEST、JAY-Zもそういうときがあるのかな?

Ali:時には1ヴァース書くのに3週間かかることもあるって言ってたのを聞いたことがあるよ。

来門:マジか!

Ali:そうそう。"ときどきスタックしてしまうんだ。それにあまりにたくさんのことを言語化しすぎてこれ以上何を言えばいいかわからない"って。1ヴァースずつ、3週間ずつかけて書いているんだってさ。

来門:なんてこった......。

Ali:誰でもそういう時期を通るものなんだろうね。まぁJAY-Zはなんでもフリースタイルでできてしまうからそういう苦労はないかもしれないけど(笑)。でも大半の人間は同じじゃないのかな?

来門:ワオ! ありがとう。すごく自信になったよ。JAY-Zは別として(笑)。

-そういう生みの苦しみを経て、RED ORCAの新曲「beyond the wind」は、プロデュース/エンジニアリングなどすべての工程をバンド・メンバーで担当しています。DIY的な感じですね。ZEBRAHEADも『Ichi-go Ichi-e -Japan Special Edition』(2022年10月リリースの来日記念盤)を出したばかりですが、最近の作品はどうやって制作を行っていますか? オールドスクールで同じ部屋に集まって作っているのか、それともファイル・シェアリングを多用しているのか。

Ali:最初の4、5曲はパンデミックが始まった頃に書いていたから全員家で作業して、お互いのパソコンからアイディアを送り合っていた。そうして曲の骨組みができてきたところで、プロデューサーのPaul Minerとオレンジ郡にあるBuzz Bomb Studiosという彼のスタジオに入ったんだ。でも全員で入ったのはレコーディングのためだけだったね、密になることを心配していたから。でもレコーディングは大事だったから、レコーディングのときだけ全員揃ってスタジオ入りしたんだ。最近はワクチンもブースターショットも打ったあとだから、顔を合わせる回数が増えたよ。

-検査とかもちゃんと受けて。

Ali:ああ。みんな親も年取ってきているし、不必要にウイルスを持って帰らないようにしたいからね。検査して、ちゃんとマスクもして、レコーディングが終わったらあとはそれぞれの作業を個別にやっていたよ。

-「beyond the wind」はすべてリモートだったのですよね。

来門:"全部"ではなかったけどね。最初はリモート・ワークで作るんですけど、レコーディングのときはみんなで集まってって感じ。

Ali:今は誰かが必ずパソコンを持っているしね。家でもずっと使っているし。テクノロジーのおかげだよ。

来門:テクノロジー!

Ali:テクノロジー(※来門とハイタッチ)! いやでもほんと、最高だよ。よくあることなんだけど、昼間パソコンの前にいても何も浮かばなかったとしても、朝4時くらいに急に何かアイディアを思いついたらすぐ送ることができるもんね。テクノロジー(笑)!

来門:テクノロジー!

Ali:そんな時間でもヴォーカルを録音してみんなに送るとかできるからね。リモートと対面のコンビネーションがベストなんじゃないかな。

-曲を作るときはそうすると、わざわざソングライティング・セッション・デイを設けるというより、できたアイディアを、その都度クラウドのような共有の場に投げておくような感じなのでしょうか。そこからアイディアを交換していくような。

来門&Ali:そうだね。

-典型的な作曲プロセスというとどんな感じでしょう?

来門:そっちは何人で曲を作ってるの?

Ali:5人。

来門:うちは俺か金子(ノブアキ)君だね。ドラマーの。金子君がだいたいトラックを作ってくる。草間(敬)さん――マニピュレーターの人も曲を作ってきて、僕もたまーに作る感じですね。ドラマーはイケてるトラックを作っているよ。俺のはクソだけど(笑)。コードなんて3つしか知らないし(笑)。

Ali:それだけあれば十分じゃん(笑)!

来門:いわゆるパワー・コードしかできないんだ(笑)。

-ということは、RED ORCAは3人で作っているんですか。

来門:とりあえず、今はそうです。6人中3人。

-ZEBRAHEADの場合はいつも5人なんですか。

Ali:大半はね。たいていはDanがギター・パートを送ってくるところから始まるんだ。パンデミック以降は特に、ギター・パートが送られてくると、俺はその中から気に入ったループを見つける。クレイジーすぎてその曲の中でも意味を成さないようなものが見つかることもあるけど、そのループにインスパイアされてラップを作る感じなんだ。そのループを土台に自分のパートを書いて送り返して......という感じに何往復かやりとりする。そしていざレコーディングというときになると、ドラムが変わることが多いね。というのも、普段ドラムの音は打ち込みのやつを使っていて俺たちのスタイルとは違うから、そのあたりを調整して、もっとロックやパンク色の強いドラムスにするんだ。

-ライヴ感のあるドラムス?

Ali:そう。でも作り方はそのときによって違うんだ。俺がクールなループを見つけて、BPM 170くらいのを送って、そこにDanが"よし、これにクールなリフをつけよう"なんてつけてくれるときもあるし、ベース・ラインから先のものもあるしね。Adrianが"いいメロディができた"って持ってきてくれるときもある。そうやって取り組んでからスタジオに行って、そこでドラムの出番が来るから、それに合わせて調整するんだ。

-あなたとDanから始まるものが多いのでしょうか。

Ali:いや、そのときによるね。たいていはAdrian、Ben、Dan、俺かな。アイディアが浮かんだらとりあえずお互いに送ってみるんだ。そしてそれをベースに組み立てていく。

来門:天才なバンドだな~。

Ali:それはどうかな。俺たちは5人がかりで曲を書いているからね。そっちは2、3人だっていうのにさ(笑)! そっちのほうが天才じゃん!

来門:いや、俺は0.3人分だから(笑)。