INTERVIEW
来門(RED ORCA)× Ali Tabatabaee(ZEBRAHEAD)
2022.11.05UPDATE
2022年11月号掲載
デジタル・ロックやラップを採り入れた独自のミクスチャー/ラウドロックを奏でるRED ORCAがデジタル・シングル「beyond the wind」をリリース! このたび、ヴォーカル 来門が以前から愛聴しているZEBRAHEADが待望の来日ということで、来門とAli Tabatabaee(ZEBRAHEAD)の対談が実現した! 互いにバンドでラップを担当するふたりだが、音楽との出会いやこれまで聴いてきたアーティストなどそれ以外の共通点も多く、リスペクト溢れる対談でグッと親交を深める時間となった。
RED ORCA:来門(Vo)
ZEBRAHEAD:Ali Tabatabaee(Rap)
インタビュアー:村岡 俊介(DJ ムラオカ) Photo by 川野晴都
Interview interpreted and translated by 安江 幸子
日本のバンドの何が好きって、いろんなジャンルのミックスの仕方が実にクリエイティヴだってことなんだ。すごく革新的だと思う(Ali)
-まずは初めに来門さんは昔からZEBRAHEADを知っていたと思いますが、ZEBRAHEADのアルバムを買ったりライヴに行ったりした経験はありますか?
来門:実は"WARPED TOUR JAPAN"で観たことがあるんだよね。
Ali:マジか!
来門:4年くらい前、幕張メッセで"WARPED TOUR JAPAN"があったとき。
Ali:あのときか!
来門:みんな出ていたとき。
Ali:あのショーのアフター・パーティーがあるっていうからとあるバーに行ったら、そこがSMクラブだったのを憶えているよ。
来門:えっ(笑)。
Ali:そんなところでいろんなバンドがくつろいでいたんだぜ? たしかうちのギタリスト(Dan Palmer)がお尻ペンペンされていたはずだよ(笑)。
来門:うわぁ(笑)。
Ali:あのパーティーの記憶はそんなところだね。
-来門さんは彼(Dan)のお尻ペンペンは見ていないんですね(笑)。
Ali:(※"彼"を自分と勘違いして)俺じゃねーよ(笑)!
来門:見てない見てない(笑)。
-叩かれたのはDanですよね?
Ali:うん。俺がバラしたってあいつには言わないで(笑)。
来門:OK(笑)。
-ZEBRAHEADのライヴを観たのはそれが初めてだったんですね。
来門:はい。もちろんZEBRAHEADの噂はずっと聞いてます。大スターだしね。
-CDを買ったり、他のショーに行ったりしたことはありますか?
来門:『Phoenix』をずっと聴いていたんだ。あれは最高だよ!
Ali:ありがとう! あれは5年くらい前のアルバムだったかな。
-2008年のアルバムのようです。
来門:2008年か~! 素晴らしいアルバムだよね。
-来門さんは結構長い間あなたの音楽を聴いているようですね。
Ali:嬉しいよ。ありがとう。そんなに長い間聴いてくれているなんて思いもよらなかったからありがたいね。
-『Phoenix』を聴いて、どんな印象を持ちましたか。
来門:何もかもがスーパー・ポジティヴだよね。やっぱり音楽は楽しまなくちゃ絶対意味がないと思っているんで。聴いてすごく元気が貰えるし、さっきもZEBRAHEADの音楽を聴いているとスケボーがしたくなるよねなんて言っていたんだ。
Ali:嬉しいね。ありがとう!
-Aliさんはマンウィズ(MAN WITH A MISSION)をはじめとした日本のバンドに精通しているので、そういった他の日本のバンドと比較してRED ORCAを聴いてみてどう感じましたか?
Ali:ここ数日間ずっと聴いていたんだ。
来門:本当に? ありがとう!
Ali:対談前に音を送ってもらってね。今日もここに来るまでの車の中で聴いていたよ。"RED ORCA聴いた?"なんてメンバーに聞いて、車の中でかけていたんだ。みんな"なんだこれ! ファッキンなくらいイケてるじゃねーか"と言っていたよ。
来門:嬉しいね!
Ali:いろんなスタイルがあるのがいいよね。どの曲も違って聞こえる。しかもいろんなスタイルをミックスしているところが好きなんだ。君の声も素晴らしいし。君はラップも歌もやるのが、俺の好きなタイプの音楽に近いんだ。パーカッシヴなところもすごくクールだと思う。みんなも夢中になって聴いていたよ。
来門:ワオ! 嬉しくて泣きそうだよ!
Ali:あまりに気に入ったから"そうだ、Tシャツおねだりしようかな"なんて思っていたところだったんだ(笑)。
来門:どうぞどうぞ(笑)。
-RED ORCAは他の日本のバンドと比べてどんな感じですか?
Ali:一般論になってしまうけど、日本のバンドの何が好きって、いろんなジャンルのミックスの仕方が実にクリエイティヴだってことなんだ。一筋縄じゃいかない気がする。アメリカだとそのへんがかなりストレートで、例えばラップ×ロックというと、そのまんまのことが多いと思う。でも日本のバンドがそれをやると、できあがったものがものすごくクールなんだよね。いったいどうやって着手するのかすら俺にはわからないくらい。すごく革新的だと思うんだ。俺が好きな日本のバンドはいろいろあるけど、共通点はそこにあると考えているよ。
-その要素をRED ORCAにも感じているということですね。
来門:ありがとうございます。
-ZEBRAHEADの結成は1996年、RED ORCAは2019年始動ではありますが、来門さんのキャリアはそれよりずっと遡ります。
Ali:そうなんだ。
来門:何せファッキンな44歳だからね(笑)!
Ali:俺なんてもう数ヶ月で50だよ。
来門:嘘っ!
Ali:本当だよ。君は俺よりうんと若い。
来門&Ali:イェ~イ(※握手)。
来門:23歳くらいに見えるよ!
Ali:そんなことないよ。顔なんて垂れ下がってきているし(笑)。
来門:俺も(笑)! それにしても50手前だなんて信じられないよ。
Ali:ああ、2月に50になるんだ。ジジイだよ(笑)。
来門:いやいやいや。
-来門さんの別バンド、SMORGASは1997年結成とほぼ同タイミングでバンド活動を本格的にスタートしています。影響を受けたアーティストも近いものがあるんじゃないかと想像しますが、それぞれ影響を受けたアーティストを教えてください。
Ali:ラップするんだよね? 子供の頃はどんなラッパーを聴いていた?
来門:BEASTIE BOYS、それからもちろんRAGE AGAINST THE MACHINE、日本のラッパーも何人か。
Ali:いいね。
来門:NASも。
Ali:ああ、俺も聴いていたな。俺は音楽を聴くようになったのが6年生くらいだったかな。その頃はバスケットボールに夢中で、一緒にプレイしていた仲間たちがヒップホップしか聴かなかったんだ。ウォーミングアップのときにデカいブームボックス(重低音ラジカセ)を持ってきて......当時はN.W.Aが多かったな。なんでかはわからないけど、それを聴くとみんなハイパーになっていた(笑)。それがきっかけで音楽が好きになったんだ。初めて音楽に感情をかき立てられたのもこの頃だった。試合に臨む気合を入れてもらっていた感じだね。そうやってヒップホップばかり聴いていたんだけど、ハイ・スクールに入ってうちのベーシストのBen(Osmundson)に出会ったら、あいつはパンクとメタルしか聴かないヤツだった。あいつがNOFXとかを教えてくれたんだ。
来門:ああ、NOFXね。
Ali:それでもっとロックを聴くようにギアチェンジした。でももちろんBEASTIE BOYSも大好きだし、A TRIBE CALLED QUESTとか......。
来門:A TRIBE CALLED QUEST! 最高だよね。
Ali:君の曲を聴いたとき、きっと似たような音楽を聴いて育ってきたんだろうなと思ったよ。
来門:もちろん俺もNOFXとかを聴いていたよ。ハイ・スクール時代。GREEN DAYももちろん聴いていたし。
-来門さんはロックから入ったのですか? それともAliみたいにヒップホップから?
来門:俺はロックからだね、NOFXとか。君はバスケットボールをやっていたと言っていたけど、俺はハイ・スクール時代スノボをやっていたんだ。"メロコア"って英語でも言う?
Ali:言うよ。
来門:OK。メロコアを聴いていたんだ。FACE TO FACEとか。
Ali:FACE TO FACEね。17歳くらいのときにうちの近所でプレイしているのを観たことがあるよ。
来門:マジか!
Ali:激混みだったね。そこで彼らを観たのはとても印象に残っているよ。
来門:ちなみにどこ出身なの?
Ali:俺が育ったのはカリフォルニア州オレンジ郡のラ・ハブラというところなんだ。彼らがプレイしていたのはフラートンで、俺のハイ・スクールもフラートンにあった。
-LA郊外ですか。
Ali:ああ。(車で)45分くらい南に行ったところだよ。
来門:いいなぁ、LA。ウェスト・コースト!
-やはり共通点があるのですね。Aliはバスケットボール、来門さんはスノボと、スポーツから入って。
Ali:俺もスノボをしていたよ。もっと若い頃にね。
来門:ベアマウンテン? あそこは最高だよね。
Ali:行ったことあるんだ?
来門:いや、行ったことはないんだ。俺が住んでいたのはニューヨーク州だったから。と言ってもNYCじゃなくて、ポキプシーとかそのあたり。森だらけでさ、森の中の刑務所みたいなところだったよ(笑)。
-人里離れて隔離されたような街だったのでは。
来門:そうそう。でもすごくいい高校生活でした。最高でした。
-ポキプシーの高校に行っていたんですね。
来門:そうそう。
Ali:だからNASなのか(笑)。
来門:ロックは子供の頃から聴いていたけど、ヒップホップを聴くようになったのは20代に入ってからなんだ。22歳くらいからだったかな。
Ali:それでもまだ結構若い頃だよね。
来門:うん。メロコアのほうが、メロディがあるから感情の移入がしやすくて。その頃(高校時代)は英語がまだ全然わかっていなかったから、ヒップホップとかが全部聴き取れなかったんですよ。今も大したことないけど。
Ali:いや、上手に話せているよ。
来門:いやいや。それにヒップホップはギャングスタとかそういう内容ばかりで、俺はいい子だったから。
Ali:俺もその部分は共感できてないよ(笑)。
来門:(笑)
Ali:実は俺も似たような感じだったんだ。A TRIBE CALLED QUESTを知ったとき、彼らのラップがそういう内容じゃないって知って、"この人たちみたいなラップをもっと聴きたい"と思ったからね。
-彼らはもっと洗練されていますからね。
Ali:そう。友達とつるむとか、そういう日常のことを歌っているものが多かった。だから共感できたんだよね。
-Aliさん、来門さん共にラップ担当ですね。バンドの編成にラップがいるのはかなりマイナリティだと思いますが、活動していくうえでラップ担当ならではの悩みや思うことはありますか?
Ali:俺にとって一番大きかったのは、みんなシンガーに対してはいろんなアイディアを持っているんだ。プロデューサーとかね。でも俺の扱いにはみんな苦労していた。プロデューサーはロックが守備範囲だから、ラップにはあまり精通していなくて、むしろラップが嫌いな人もいてね。だからときどき孤立無援状態だなと思うこともあった。クールにラップできたと思えても"音程がない。ちょっと変えられないか"なんて言われたりしてね。そういうことが一時期あったけど、ラップにもっと理解のある人たちと仕事するようになってからはとても助けてもらったよ。それからオレンジカウンティで育っていると、ポップ・パンク・ミュージックっていうのはどこにでもありふれているけど、ヒップホップのヴァイブは感じられないんだ。でもその環境が俺たちにはむしろ有利だったと思う。少しは目立つことができたからね。みんなポップ・パンクが好きでヒップホップはあまり興味がないから、俺にとっては最初少し不満だったけど、今にしてみれば俺たちにはプラスに働いていたかもしれないなと思う。
-来門さんはどうでしょう、ヴォーカルもラップも両方担当する身としては、どのように周りとご自分を差別化してきたのでしょうか。
来門:ロックを歌うのもラップを歌うのも、基本的には同じだと思うんだよね。ビートの取り方が違うだけで、たぶん一緒だと思う。メロディも韻を踏むし、ラップも韻を踏むから歌い方の違い。ラップだから、メロディだからってことじゃなくて、ビートが違うだけだと思う。
Ali:なるほどね。たしかに似ているとは思うよ。俺も両方できるくらい歌がうまかったら良かったんだけど。俺は叫ぶのは得意だけど、歌うのは苦手なんだよね。
来門:俺も。
Ali:そんなことないよ!
来門:コンピューターのおかげだよ(笑)。今はコンピューターが調整してくれるから、俺の本当の声は♪~(※調子っ外れの鼻歌)だよ! でもCDでは♪イェーイ(※きれいな歌声)になっているんだ。わかるだろう?
Ali:(爆笑)テクノロジーの進化はすごいよね。
来門:ああ(笑)。
-ZEBRAHEADはAliさんがラップ担当でAdrian(Estrella)がヴォーカル担当とふたりで分けていますが、分業のメリットはどんなところにあるのでしょうか。
Ali:ライヴであいつが歌う番になったら、俺は好きなドリンクを飲めることかな......というのは冗談で(笑)、ヴォーカルでコラボ相手がいるというのは、曲にコラボ相手がいるのと違うからクールだと思うんだ。ヴォーカル的には共通の土台を見いだして、その曲を両方にとって共感できて理に適っているものにしないといけない。その作業が俺にとっては昔から興味深かったんだ。Adrianと一緒にやるようになって発見したことがひとつある。あいつは自分のパートを作るのがとても上手なんだ。例えば俺が自分のパートを先に書いたとする。そうするとあいつは俺が言わんとしていることをしっかりと理解して、その意味がちゃんと通じるように自分のパートを作ってくれるんだ。
-補強してくれるんですね。
Ali:そうなんだ。逆もまた同じで、あいつが素晴らしいアイディアを持っているとする。そうしたらあいつはきちんと説明してくれるから、俺がそのあと自分のパートを作りやすいんだ。すごくコミュニケーション上手だし、コラボ上手でもあると思う。それが俺たちの最大の違いじゃないかな。君は全部自分で書くから、自分の言いたいことがはっきりわかっているし、自分の考えていることを誰かに解釈してもらう必要がないからね。俺がひとりだったらそういう面がメリットだと思うんだろうな。
来門:たしかに。