INTERVIEW
ZEBRAHEAD
2022.10.12UPDATE
2022年10月号掲載
Member:Ali Tabatabaee(Rap)
Interviewer:菅谷 透
世界に元気を注入するZEBRAHEADが、ついに第2の故郷へ帰ってくる! 2020年に開催を予定していたジャパン・ツアーがコロナ禍により延期となってしまい、結成25周年の2021年には長年フロントマンを務めたMatty Lewisが脱退と、苦難の時を過ごした彼ら。しかし、転んでもただでは起きないのがシマウマたちだ。新ヴォーカルにAdrian Estrellaを迎え第3章のスタートを切ると、新体制でデジタルEP『III』を発表。アメリカやヨーロッパでのライヴを経て、約3年ぶりの来日となるジャパン・ツアー振替公演を10月末に控えている。さらにメンバーが全面協力した来日記念盤も発売されるとあって、まさにパーティーへの準備は万全と言えるだろう。Ali Tabatabaeeに近年の活動や、来日について訊いた。
なんらかの形で日本に恩返しがしたくてね。いつも見守ってくれているし、長年俺たちをサポートしてくれているから、とにかく感謝の気持ちを形にしたかったんだ
-まず、パンデミック以降の活動からうかがいます。2021年にはMatty Lewis(Vo/Gt)が脱退しましたが、バンドはすぐに次のチャプターへと進んでいく声明を発表しました。簡単ではない決断だったと思いますが、どのようなことがバンドを続けていく原動力になったのでしょうか?
Mattyがやめるつもりだと知ったときは動揺したよ。パンデミックが始まって将来が見えなかったし、またツアーできるのかどうか、ショーができるようになるまでどのくらいかかるかもわからなかったし。だから数週間時間をおいてからBen(Osmundson/Ba)に電話したのを覚えているよ。"どうする? 物事がノーマルに戻るまで1年と想定するとして、お前は続けていきたいと思う? それとも活動休止にしてどうするか考える?"ってね。あいつは"俺はまだやり終えていない"と言った。"俺はまだワクワクしているんだ。こんなに長い間ツアー活動を続けてきて、俺たちの良さを理解してサポートしてくれるファンがいる。俺はまだやり終えていない。終わらせたくないんだ"。俺も個人的に同じことを考えていたけど、これは俺たちの人生にとって重大な話だから、自分の考えを誰にも押しつけたくなかった。それからDan(Palmer/Gt)にも電話したけど、Danも続けたいと言うだろうというのは俺はわかっていた。あいつは"やろう、やろう"というタイプのパーソナリティだからね。そうやって3人で話した時点で、前に進もうということになった。それで今度はMattyのあとを誰に務めてもらうか、という話になった。Benが、何年か前に見たバンドのシンガーが超才能があるやつで、前から一緒にやりたいと思っていたんだと言い出したんだ。それがAdrian(Estrella)だった。Benが"Adrian Estrellaってやつなんだけど......"と言ったら、Danが"オー・マイ・ゴッド! 俺の友達だよ!"って返してきたから、"Adrianに連絡して、興味があるかどうか聞いてみてよ"って言ったんだ。たしかDanがAdrianと一緒にバーに行って、飲んで(笑)、興味があるかどうか聞いたんじゃないかな。Adrianは"Danが1杯奢ってくれて「お前がZEBRAHEADの新しいシンガーだ」って言われた"なんて言ってるけどさ(笑)。あまり選択の余地がなかったんじゃない(爆笑)?
-(笑)
まぁそんなわけで、ラッキーにもAdrianが興味を持ってくれて、すぐに一緒に曲を書き始めたんだ。
-すぐにですか。
ああ。すごい団結力だったよ。楽だったね。Adrianは俺とよく似ていて夜型なんだ。午前2時半にAdrianから歌詞がテキスト・メッセージで送られてきて"おい、この歌詞どう思う?"なんて書いてあったりする。"最高じゃねーか! こっちはどう?"みたいな感じでやりとりするのが日常茶飯事だよ。真夜中にアイディアを送り合ってね。あいつはみんなとウマもすごく合うんだ。本当にいいやつだから、早くみんなにも会ってほしいよ。超才能があるしね。俺たちは本当にラッキーだ。曲を書き始めたら、やっぱりまだ自分たちはやることがたくさんあると気づいたよ。それだけじゃない、前とは違ったヴァイブがあったんだ。あいつはバンドに新しいエネルギーをもたらしてくれた。曲を書くのもワクワクするしね。というわけでAdrianがバンドに入ってからいくつかショーをやって、少しツアーもしたけど、すごく楽しいよ。
-ツアーはすでにアメリカやヨーロッパを回っていますが、Adrianとオーディエンスとのケミストリーはどんな感じですか。
グレイトだよ。Adrianはすごいショーマンなんだ。ショーが始まってもいないうちからファンのいるところに出ていくしね(笑)。1日中ファンと一緒に過ごしたりしている。ショーが終わってからもね。もうみんなAdrianのことを知っているし、みんなあいつが大好きなんだ。すごい愛されキャラだし、ビッグ・パーソナリティ(器が大きい、存在感がある、個性が強い)の人だからね。超フレンドリーで......最高だよ。それにあいつのおかげで俺たちも感謝の気持ちが強まるんだ。あいつにとっては何もかもが新しいから、何にでもワクワクしている。それを見ていると俺たちもあらゆることにまたワクワクできるようになったんだ。本当にクールなことだよ。
-昨年11月には、新体制第3章25周年記念のデジタルEP『III』を発表しました。おそらくAdrianも大きく関わっていると思いますが、リリースからしばらく時間の経った今、同作をどのように認識していますか?
今はショーが再開して小規模なツアーもいくつかやったあとなんだ。新曲もたくさん演奏した。そのおかげで、新曲に対するありがたみが増えた気がするんだ。新曲をやるっていうのは普段よりちょっとエキサイティングになれる。20年以上演奏している曲もあるから、新曲をやるのが新鮮でエキサイティングなんだ。それだけじゃない、新曲に対するオーディエンスの反応がまた素晴らしい。みんな俺たちのカタログを昔からよく知っているけど、新曲に対しては......昔の曲よりもとまでは言わないけど、共感してくれていて、俺たちと同じくらいワクワクしてくれているのがわかるんだ。
-Adrianは昔の曲をどう歌っていますか? どう溶け込んでいるのでしょうか。
あいつはヴォーカリストとして本当に才能があるよ。声域も広いし、どんな声にだってなれる。しかもすごい努力家だしね。"Adrian、ライヴでは古い曲もたくさんやらないといけないから、なんとか覚えてくれ"って曲を渡したら、家に帰ってもずっと練習している。一緒に練習するときは軽々とやってのけてるようにすら見えるんだ。練習で集まるときにはすべてを心得ている。でももちろん俺たちも、あいつが"ここが確信持てないんだけど"と言ってくれば、どうすればあいつにとってベストな歌い方になるか一緒に考えるし、アドバイスもするけど、古い曲をちゃんと歌いこなしていると思うね。家で時間もちゃんとかけているみたいだし、リハーサルでもよくやっているよ。
-勤勉であること、ユーモアのセンス、彼がライヴで醸し出すヴァイブなど、すべてバンドにぴったり合っているのですね。
ああ、奇妙なくらいにね(笑)。それにさ、ほら、歳を重ねると新しい友達を作ることもなかなかないだろう? 一緒に育ったのでもない限り、共通点がたくさんある人に出会えることもそうないし。でもAdrianの場合はなぜかそうなんだ。ツアーで同じバスに乗っていても、昔から友達だったんじゃないかと思うくらい。全員と気が合っているし、すごくいい関係で運がいいよ。
-そんなみなさんが、"Ichi-go Ichi-e Tour 2022"でようやく日本に戻ってきますね。そして来日記念盤として、EP『III』に新曲やライヴ音源を加えた『Ichi-go Ichi-e -Japan Special Edition』もリリースされます。まさに日本のファンには嬉しい作品となりますが、こちらを制作するに至った経緯をうかがえますか?
そりゃ正直言って、日本が大好きな場所だからだよ! デビュー当時から応援してくれているし、世界一のファンがいるし。嘘じゃない。日本が大好きなんだ。日本に行くのはいつもワクワクするし。パンデミックで......そうそう、この前もBenと話していたんだけど、"こんなに長い間日本に行かなかったことってなかったんじゃないか"ってね。
-ですよね。
日本に行って長い付き合いのファンや友人たちに会えることが、どれだけ俺たちにとって大切なことなのかを示したかったんだ。そのためにはどうすればいいか話し合って、"日本だけに宛てたアルバムを出そう"ってことになった。アートワークも日本仕様で、ブックレットもいろいろ工夫したんだ。
-そうなんですね!
EP『III』と全収録曲のインストと、それから新曲「No Tomorrow」。さらに「In A Crowd Alone」という新曲も入れた。なんらかの形で日本に恩返しがしたくてね。いつも見守ってくれているし、長年俺たちをサポートしてくれているから、とにかく感謝の気持ちを形にしたかったんだ。
-ありがとうございます。では、そんな収録曲についてうかがいます。新体制第1弾の楽曲となった「Lay Me To Rest」は、ピアノのイントロから始まり、シリアスで激しいサウンドが意表を突く、新章の幕開けに相応しい楽曲ですね。
この曲に取り組み始めたのは、パンデミックが......まだあるのは知っているけど、パンデミックの全盛期に、メンバーがいろんな人を失ったのがきっかけだったんだ。家族や友人をコロナで失ったからね。この曲は俺たちにとって、歌詞的にも感情的にもとてもリアルなんだ。サビを美しく歌ったあとですごくヘヴィになるのは、みんなのパンデミックに対する怒りや喪失感を表現している。俺にとってもバンドにとっても、これからもスペシャルであり続ける曲だと思う。Adrianと出会って、一緒に曲を作り始めたときの曲だからね。だからこそこの曲を最初に出したかったんだ。初めてあいつと書いた曲で新しい経験ができた曲だし、絶対に最初に出したいと思っていたよ。
-この「Lay Me To Rest」の楽曲コンセプトだけでなく、ジャパン・ツアーや来日記念盤のタイトルにも日本語の"一期一会"が用いられています。この言葉のどのようなところに惹かれたのでしょうか? 日本の茶道に由来する言葉で、すべての出会いを特別だと思って扱いましょう、というような意味ですが。
そう、出会いがどうやって、あるいはどの程度人生に影響するかわからないからね。例えばAdrianがバンドに入ったのだって、Benが何年も前に彼に会ったことがあって、あいつを覚えていたのがきっかけだった。しかもDanとも知り合いでね。そういう不思議な縁が何年も前の出来事から派生して、今じゃあいつはバンドのメンバーだ。その何気ない出会いが、結果として俺たち全員の人生を形作ったということになる。それで、みんなで話していたんだけど、人生の様々な出来事や出会った人たちのことをしっかり見ておいて、そういったものが自分の人生を変えてくれることに対してオープンでいないといけないなって。願わくはいい変化、いい影響を与えてくれることに対してね。そういう出来事や出会いは毎日のように訪れるものだし、特にパンデミックの世の中では、いつすべてを失ってしまうかわからないからさ。
-たしかに。
そんな感じで(一期一会のコンセプトが)とても大切なものになっていった。実はBenの腕にはこの言葉のタトゥーがあるんだ。
-そうなんですね。
何年も前に入れたものだけどね。俺に意味を説明してくれて、素晴らしい考え方だなと思ったよ。それで日本向けの今回のリリースについて考えていたとき、そのコンセプトをひもとこうという話になった。すごくタイムリーな言葉だし、俺たちの人生にとって大きな存在だからね。
-なるほど。日本人で日本語を母国とする身として、非常に共感できました。続いて「A Long Way Down」は、第1弾とは打って変わってポップなサウンドを用いた爽やかな楽曲ですね。
これもAdrianと曲を書き始めたころにできたものなんだ。"こんな感じの曲を書こう"とかそういう制約は一切設けなかった。ある日、たしかBenの家に集まっていたときだったと思うけど、"ポップでアップビートなヴァイブのある曲を書こう"という話になって、それから1日で書き上げた。エネルギーを感じてもらえる曲だと思うよ。すごく自然な形で生まれた曲で、"うわ、最高じゃねーか"って自分たちでも驚いたからね。3、4週間後とかまで何回も手を入れるとかそういう必要がなかったんだ。1日経ったころには"もうほとんど完成したに近いな"と言っていたよ。すごくアガったね。聴いてくれればそれが伝わってくると思う。なかなか珍しい経験だったよ。
-あの曲のMVはツアー生活に戻れて嬉しい気持ちがよく現れていましたね。
すごく久しぶりだったから嬉しかったんだ。俺自身もいち音楽ファンとしてもう長い間ショーを観に行っていないしね。あのMVは、今のご時世に旅するというのはこういうことだというのを見せたかったんだ。まだいろいろ混乱が起こっているときにサウンド・チェックはどうやってやるかとか、ファンとはどうやって交流するのかとか、そういうのをMVを観ている人たちにも経験してもらえればと思ってね。大半の人はあの当時まだあまりショーを観に行ったり旅に出たりしていなかったから。