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INTERVIEW

ESKIMO CALLBOY

2019.11.06UPDATE

2019年11月号掲載

ESKIMO CALLBOY

Member:Kevin Ratajczak(Vo/Key)

Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)

-その結果、新鮮な響きの曲が生まれたと思います。それから「Hurricane」のビデオですが、あれは面白かったです。メンバーと1日を一緒に過ごす権利を手にしたファンが、メンバーとワイルドに交流を楽しむ様子を一人称視点で描いているユニークなものですよね。「MC Thunder」(『The Scene』収録曲)などにも近い、既存のファンがあなたがたに求めるテイストがふんだんに散りばめられた曲ですね。

(笑)おかしな話があって、俺はそのアイディアを気に入っているんだけど、まず「Hurricane」の曲自体のことを考えたんだ。アゲアゲのサマー・ソングだよなと。それをベースにビデオをどうするか考えて、"ESKIMO CALLBOYならではの典型的な1日"みたいなものにしようということになった。となるとみんな俺たちがストリップ劇場に行くとか(笑)、ポーカーをやっている姿を想像するんだろうけど......。

-(笑)

でも、そんな姿はいろんなビデオで曝しすぎているからね。女の子、食べ物、アルコール三昧。そりゃそういうのでも面白いっちゃ面白いけど、もう出尽くしちゃっているし。それで"じゃあ俺たちが本当に好きなことはなんなんだ?"と考えたんだ。で、俺たちはゴーカートでドライブするのが好きなんだよね。それを取り入れることにしたんだ。じゃあどうやって撮るかという話になって、一人称の目線で撮ることにした。実際に経験している人の目線でね。ちなみに、ビデオの中で主人公が"ゴールデン・チケット(ESKIMO CALLBOYと1日を過ごせる券)"を手に入れるけど、実はドイツ、スイス、オーストリアで売られる、デラックスCDボックス・セットの商品の中に1枚だけ同じものが入っているんだ。

-らしいですね。ラッキーな人は誰になるんでしょう。

実際にあのビデオの主人公になることができる。その人と俺たちで、1日好きなように過ごすんだ。きっと楽しい日になるよ!

-その様子がFacebookに上がるのを楽しみにしてます。そして、「Disbeliever」は前作で広げた音楽性をさらに推し進めた印象がありますが、この楽曲のコンセプトやできた過程を教えていただけますか? また、兼ねてよりBRING ME THE HORIZON(以下:BMTH)の影響を公言していますが、この曲は特にその影響が強いと感じました。

うん、そうだね。「Prism」と「Disbeliever」は、今のこの時代のラップ・ミュージックだって俺たちは考えているんだ。

-なるほど。

よくプロデュースされているし、クールでオーガニックなサウンドだ。それが、今回俺たちが重視していることなんだけどね。"オーガニックなサウンド"という言い方が適切なのかはわからないけど......Billie Eilishって知ってる? アメリカの女の子なんだけどさ。彼女が"s"の音を歌うときは、自分が彼女の隣に立っていて、歌っている息遣いを間近で感じているような感覚になるんだ。あれに近い感じかな。俺たちが音楽を始めた頃は何もかもポイントぴったりに合わせておくべきものだった。例えば、ドラムだったら(※口でボン、チャク、ボン、チャクとややゆったりめのリズムを取る)こんな感じで、そこに何か加えるとパターンみたいになるんだよね。動いているような感じがとても特別で好きなんだ。音的に進化するのも好きだしね。そういう要素を「Prism」と「Disbeliever」の2曲には入れた。聞こえるときもあるし、聞こえないときもあるけど、確かにずっとそこにあるんだ。あと、BMTHはそういうサウンドを完璧なものにしたバンドだと思う。BMTHがアルバムを出すときはいつも、音楽シーン全体で初めての何かがあるんだ。彼らが出すアルバムは必ずみんなが大好きな1枚になる。新作(『amo』)もとても実験的だよね。正直俺はすべての曲をクールに思っているわけではないけど、そうする必要だってないんだ。それでも、彼らはまた新しい何かを始めたんだなって思う。BMTHは今よりさらにビッグなバンドになると俺は確信しているよ。

-あなたたちが、BMTHやLINKIN PARKといった影響を受けた音楽を吸収して、自分の解釈で今回のような曲を作っているところが興味深いですね。「Prism」も同じことが言えると思います。あの曲は個人的にお気に入りだそうですが、LINKIN PARKを髣髴とさせる非常にメロディのきれいなモダン・ロックですね。アルバム本編を締めるに相応しい普遍的な楽曲だと感じました。

そうだね。俺もそう思うよ。あれは俺たち自身の今の音楽に対する、姿勢を表しているんだ。すごくポジティヴだろう? ヴァースはとてもポップな感じで、メインストリーム的で、コーラスの部分は両手を広げて相手を受け入れているような。あのサウンドがとても気に入っているんだ。あの曲はプリズムのことを歌っている。比喩的な意味でね。自分自身の価値がわかっていない人たちのことなんだ。自分が世界の役に立てるほどの人間じゃないと考えていたり、とてもシャイで新しいものにトライする勇気がなかったりするとき、この曲がそれでもことを起こすための強さを与えてくれる。プリズムに当たる光のようにね。光がプリズムに当たると、もとはただのひと筋の光だったのが、広がって様々な色を帯びるようになる。それと同じでどんな人もただのひと筋の光なんだけど、その光がプリズムに当たると色が変わる。時にはプリズムひとつあれば自分の潜在能力を知れることがあるんだ。

-自分の輝かせ方を知ると言いますか。

その通り。この曲のビデオを撮るんだけど、すごくクールなものになる予定だよ。頭の中で思い描いているままのものが実現できるといいけど。世の中には一見して不利な立場にいそうな人が本当にたくさんいる。障害を持っている人たちとかね。でも、それをものともせず、人生を謳歌している人たちがいる。そのアティテュードを歌にしたかったんだ。

-歌詞がわからなくても、ポジティヴな感じでアルバムが終わっている印象がありましたが、そういうことだったんですね。ところでボーナス・トラックがたくさんありますが、「Supernova (Piano Version)」と「Prism (Electro Version)」も楽しませてもらいました。原曲に負けないくらい魅力的に仕上がっていますね。特に「Supernova (Piano Version)」は、ピアノ・サウンドでエモーショナルさが倍増しています。他の曲でピアノ・バージョンにしてみたい曲がありましたら教えてください。

それぞれどんな形でアレンジできるかはその曲自身が自ずと決めると思うんだよね。全部の曲がピアノ・バージョンに向いているわけじゃない。でも、どの曲が候補になるかという話はメンバーとしたよ。今後数週間で、アコースティック・セットをやるとしたらどの曲がいいかを、もっと話し合うことになっているんだ。で、俺個人としてはピアノをステージでもぜひ弾いてみたい。もしかしたら次のツアーで取り入れるかもしれないな。そうなったらクールだよね。

-そうですね。ところで、もうひとつ曲についての質問です。「Made By America」ですが、マシーナリーなリフ・ワークや無機質なコーラスが非常にかっこいいですね。"Made By America"というタイトル通り非常にアメリカンなサウンドに感じましたが、この楽曲のコンセプトやできた過程を教えていただけますか?

それはすぐできた曲のひとつだったんだよね。曲によっては延々と時間がかかるものもあるんだ。作り始めてみて最初は気に入るんだけど、続きをどう書くかがわからなくなってしまうことがある。でも、この曲はほんの数日でできあがったんだ。実際に何日間でというのは忘れたけど、とにかくすごく早かったんだ。トピックはアメリカ人の生き方についてなんだ。今は世界中がアメリカを見ている。アメリカのライフ・スタイルとか。まるでアメリカがロール・モデルかのようにね。でもそうする価値があるかというと違う気がするんだ。みんなインスタでビッグになって金持ちで有名になりたいみたいな感じだけど、それって本当に努力して目指すべきものなのか? ってことなんだよね。あの曲はそういう懸念を表しているんだ。ドイツでもいい製品、トレンド、モダンなものはみんなアメリカからやってくる。でも、それっていいことなのか? いつも他人のほうを向いているのっていいことなのか?

-そうとは限らないと思いますよね。ドイツにはドイツ独特の、日本には日本独特の良さがあるわけで。

そう。アメリカは主な影響元の国だけどさ、自分たち自身が持っているものを育てていったほうがいいと思うんだよね。それに今アメリカにはとても"スペシャルなリーダー"がいるけど、今のアメリカが理想としてついていきたい、お手本にしたい国かというと、ちょっと問題が多すぎる。あの曲はそういうことを歌っているんだ。

-少し世界情勢に触れている感じの歌なんですね。

ちょっと批判的にね(笑)。

-12月からスタートするツアーは過去最大規模になるとのことですね。どのようなツアーなのでしょうか?

あらゆる意味で規模が大きくなるよ。正直言って全部の会場が大きくなったわけじゃないんだよね。例えば最大のヘッドライン・ショーは、キャパが埋まるかも今はわからないけど、4,000人収容できるところなんだ。俺たち的にはかなりデカいよ。プロダクションの規模も大きくなる。LEDのスクリーンも使うし、ステージに階段を作るとかね。人としてだけじゃなくて、バンドとしても、それらにまつわるいろんなことも成長しているんだよ。そういうものをすべてひっくるめて過去最大規模のツアーになるんだ。

-そのツアーで日本まで足を伸ばす予定はありますか?

そうなるといいけどね。日本のマーケットについて、ユウスケをはじめ日本の親しい人たちといろいろ話したんだけど、問題があることもあるんだ。俺たちはまだメインストリーム・バンドじゃないからね。アンダーグラウンド・バンドの中で特別なバンドのひとつではあるけど。でも、日本にはいつだって行きたいと思っているよ。君が日本人だから言っているわけじゃない。俺が絶対的に気に入っている国のひとつなんだ。だから、いつだって行きたいと思っているけど、同時に簡単なことじゃないってことも知っている。俺たちのことを招聘してくれる人たちだって金にならないと困るだろうしね。それを考慮するのは大事なことだよ。でも、新作をみんなが気に入ってくれてツアーさえ組めたら、次の瞬間にでも飛行機に飛び乗りたい気分なんだ。実は俺の夢のひとつは最近結婚したから日本にバケーションで行くことなんだけどね。

-そうなんですね! おめでとうございます。

ありがとう。新婚旅行で日本に行きかけたんだけど、俺は今学生なんだよね。バンド活動のかたわら経済学と経営学を学んでいるんだ。その期末試験の勉強があったから、勉強ができるように1ヶ所に滞在できるような国に行かざるを得なかった。でも、もし来年日本に行くのが実現したら、キャンピングカーでも借りて妻と一緒に旅したいね。

-ぜひそうしてください。ハネムーンということで。

本当にそうしたいよ。ジャパン・ツアーから帰るたびに俺が日本のことをどれだけ好きかを妻に力説しているんだ。どれだけ日本の食べ物が大好きかとか、人々や街の素晴らしさとかをね。するといつも"私もぜひ見たい!"って言われるんだ。

-奥様はまだ来日経験がないんですね。

うん。正直言って日本は高くつくからね。飛行機代もかかるし、現地でも食べ物の値段が高いし。でもいつかは妻を連れていきたいんだ。

-うまくいくといいですね。せめてジャパン・ツアーが実現して、奥さんも連れていくことができれば。

そうなったらクールだよね。

-最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

さっきも言ったけど、日本は俺が史上最高に大好きな国のひとつなんだ。俺たちがアルバムを出すたびに行きたいと思う国でもある。今回のアルバムは完全な自信作で、どの曲もひとつ残らず気に入っている。だから、俺たちと同じように日本のみんなにも気に入ってもらえることを願っているし、俺たちを新たに知ってくれる人たちがいることも願っているんだ。もし機会ができたらまたぜひ日本に行ってみんなで盛り上がりたいね! 本当に大好きだよ。日本には心から惚れ込んでいるんだ。

-だからこそ、激ロックでも濃いコラムを書いてくださっていたんですね。

激ロックさえ言ってくれれば、また何週間か何ヶ月間か喜んで書くよ! 激ロックとのインタビューはいつも楽しいからね!

-ありがとうございます! またお話しできる機会を楽しみにしています。

こちらこそありがとう! できれば日本で対面でね。