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INTERVIEW

BRAHMAN

2018.02.03UPDATE

2018年02月号掲載

BRAHMAN

Member:TOSHI-LOW(Vo)

Interviewer:石角 友香

どんな時代でもメッセージや歌は個人に届くものであってみんなで共有するものじゃない


-あと、「AFTER-SENSATION」はバンドのアンサンブルが浮き上がったりまた沈んだりっていう体感を与えるダイナミズムがあります。

こんなことしないでしょ? っていうことをやってる気はしますね(笑)。

-この曲はすごくいい意味で手作りの発明だなと。

コンピューターではできないですね、たぶん。発想がないだろうな、こんなのは(笑)。できたのを聴いたら"簡単にコピーできます"って人たちはいっぱいいるけど、俺らは0から1にするって作業をやってるわけで。でも、栄光なき発明家でいいっていうか。まぁ結局、一定の基準があるから誰もコピーできないんだと思うんですよね。俺たちは自分たちの基準というか、一般的じゃないから。あんな、テンポが遅かったり速かったりする曲はやらないじゃないですか? 普通は間のテンポをとるかってなっちゃうんだけど、そこは間を取らない。どっちもグッとくるところを探す。だから途中でグッと捻じ曲げるんですけど、捻じ曲げ方も上から捻じ曲げんのかとか、下から捻じ曲げんのかとか、いろんな方法をやってみて、一番気持ちいい捻じ曲げ方を見つけて。それを悪いことじゃないと思ってるから。イン・テンポですべてがクリックどおりの音楽なんていいとは思ってないし、どっか俺が好きなバンドはみんな時空を曲げてしまうような瞬間があるし。それをクセと呼ぶのか間違ってると言うのかわかんないけど、とにかく自分はそういうのが好きだから、それが結構出たかな? とは思ってる。

-この曲の構成に、浮沈の多い現実を投影してしまう部分もあるし。

でも、逆に言うと自分次第でそれもどうにもなるというか、そんな気もするし。時代がいい悪いとかない。そんなこと言ったら、俺は江戸時代を最高だと思ってるから。世の中が良くなるのか悪くなるのかは関係なく、自分たちがこの時代に生きてるわけだからそれはもう強く生きていくべきであって、そのなかで音楽があるっていうのは、やっぱ俺は豊かなことだと思う。

-"(今の)日本ヤバい"って言ってるだけじゃダメだろうって焦燥感に駆られがちですが。

世の中の究極って、そうなったらなったで、その状況を自分らしく生きるしかないんですよ。そういう強さを個体として持つべきであって、そのなかでメッセージや歌は個人に届くもんだと思ってるし、そもそもみんなで共有するもんじゃないと思ってるし。逆にみんなで共有するから戦争が起きるわけでしょ? 賛同するんじゃなくて"行かねぇ"ってひとりで拒むってことが、やっぱりある瞬間においては勇気ある大正解になる時代になるんじゃないかな? 「雷同」という曲はそれに近いかな。ほんとの意味で(弱さが)わかっていれば、そういうことは起きないはずなんですけど、みんなわかってないですよね。自分が痛いように相手も痛いのに......そう考える心がなくなっちゃってる。ずっと言っているんですけど、想像力がないですよね、一部の今の人たちは。だって自分がそういうふうに言ってるってことは相手も同じことを言うってことだし、自分が一方的に攻撃できるなんて思ってる? 相手も仕返ししてくるよ? っていう。ほんと、こっち側から発信することしかみんなわかってなくて。温かい意味でもそういうことあるじゃない? ってことですよ。

-話を広げてしまいましたけど、BRAHMANって形が定まらないじゃないですか。パブリック・イメージ的には硬質なものだと思われてるかもしれないけど。

あぁ、違いますね。硬いものを砕くのは柔らかいものですからね。水や空気は岩を削りますから。ただ形がみんな欲しいっすよね。形が定まらないのは不安だから。明日のことなんて誰もわかんないのに、さもわかったように安心を買うっていうだけであって。もう一瞬一瞬を生ききることにしか答えはないので、それが積み重なったときに初めて時間なんだ、時代なんだ、答えなんだってことが出てくるっていう。それを俺たちはこのアルバムというものでやれてるってことはとても幸せだなと思ってます。

-日本人って一概に言っちゃうのは違うかもしれないけど、でもやっぱ日本人だからわかるものもBRAHMANの音楽にはあるし。

どこの世界でもスタンダードとして受けるものとかも素晴らしいと思うし、だけど俺はこんな極東の島国にパンクが流れ着いて約40年経ったその面白さ、それがガラパゴスだとしても、そっちの方が興味あるというか。それがただの追っかけじゃない、流れ着いて形がまったく変わって独自の進化を遂げたものでありたいと思ってるし。

-「満月の夕」収録の意味も大きいと思います。阪神淡路大震災から23年ということを思うと大きすぎる曲でもありますが。

だから俺らは23年は背負えないんですよ。でもこの6年は見てきた。この6年の意味としての、東日本大震災からの「満月の夕」は俺が歌ってるってことなんで。なんかそういう意味で、今の時代に生きていくための「満月の夕」を歌ったことを記録しておくべきだなと思ったんです。それは次の世代で震災が不幸にも起きてしまったときに、この歌は瓦礫の街の人たちを照らす歌になるはずなんで、逆に今のタームで俺たちが歌ったっていうことはちゃんと記録しようと。それは次世代に対するものだし、次世代のミュージシャンが、どうそういうものに取り組むか?っていう。23年前はそれを最初に始めた人の物語。で、俺たちはそれを見て、何をすべきか? っていうことを1個更新したと考えてて。被災地でライヴハウスを作ったりとか、フェスを作ったりとか。でも今度は違う人たちがどんどん俺たちを飛び越えてするべきだし、それを始めないと間に合わない。歌もミュージシャンも無力じゃないんだよってことは伝えなければ、やっぱ自分たちがやったこの6年間は意味がないから、この曲を歌いました。

-続けていることによって普遍的なバンドになってきたなぁと思います。

面白いですね、普遍的なバンドになるために変わってくっていうのは。変わり続けることが普遍だとすれば、それはすごく真理だと思います。

-そして今の段階で(※取材は1月後半)武道館(2月9日に開催する"八面玲瓏")まで2週間を切りましたけど、いかがですか?

いや、なんにも思ってないというか。個人的に喉手術したりしてて、身体も治りきってないのかわかんないけど、とにかくそれでいいんだと思ってるんです。ダメだったらダメなりにやればいいし、それも新しい自分だから。そういう気持ちでちゃんと(ステージに)立てるかどうかっていうのも自分の中で大事なんです。2月9日に間に合えば間に合う意味があるんだろうし、間に合わなければそしたらまたやれってことなのかもしんないし、いろんな意味を自分で感じるかどうかってことが大事なわけであって。そういう意味で言えば、とっても意味のある1日になるんだろうなって予感しかしてないし。

-BRAHMANが武道館でやらなかったら変でしょって気すらしますもん。改修工事に入るからって理由でどんどん公演が決まっていってるバンドもいるけど。

まぁ、勢いや集客があったらできないハコじゃないし。でもそういう意味じゃない武道館をやりたいなぁと思ってるんで。じゃないと24年目のバンドで武道館やっても、なんの意味もないというか。だったらもうちょっと怒髪天ぐらい苦労ヒストリー欲しいわとか思うし(笑)。

-(笑)そして武道館が終わると長いアルバムのツアー(3月から6月にかけて開催するツアー"Tour 2018 梵匿 -bonnoku-")が始まります。

アルバムのツアーはどっちかというと自分たちに曲を叩き込むためにやってるんで。何やる? ってアルバムの曲に決まってんじゃんっていう。それがツアーの頭とケツでどんだけ変化するか、そういう意味でいうと自分たちも楽しみだし、叩き込んでかなきゃいけないツアーだと思ってますね。