FEATURE
Ave Mujica
2025.12.11UPDATE
2025年12月号掲載
Writer : 米沢 彰
"運命への反攻"と"狂気と危うさ" ハイテンションなライヴ・チューン
今や節目のイベントはドーム規模にまで成長し、海外でのツアー展開等も含め日本が誇る音楽コンテンツの1つの柱となった"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクト。その中でも一際異彩を放つヘヴィ・メタル・バンド Ave Mujicaが、3rdシングル『'S/' The Way / Sophie』をリリースする。今作を"新章幕開け"と評する背景について、ここまでの彼女たちの歩みとメディア・ミックスによる展開を紐解きながら綴ってみたい。
2023年より覆面(仮面)バンドとして始動したAve Mujicaは、バンド名と役名以外の一切が伏せられたミステリアスなグループとしてその歩みをスタートした。2023年6月から9月まで放映されたTVアニメ"BanG Dream! It's MyGO!!!!!"ではMyGO!!!!!との関係性の片鱗を描き出しつつ、6月には"Ave Mujica 0th LIVE「Primo die in scaena」"を中野サンプラザで開催。さらに9月には初となるミニ・アルバム『Alea jacta est』をリリースと、徐々にバンドがその姿を現していく。以降、シングル、ミニ・アルバムと音源のリリースを重ねながら、ライヴもその会場を大きくしていった。2025年1月からはAve Mujicaを中心に描いたTVアニメ"BanG Dream! Ave Mujica"の放映がスタート。回を重ねるごとに明らかになる数奇な運命と深まる謎、そして壊れていく精神に対するSNS上の反響も大きく、"令和最大級の鬱アニメ"として大きな話題となった。そしてアニメ終了後すぐの4月には1stアルバム『Completeness』をリリースし、同月の"MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」"で、3年越しに紡がれてきたストーリーが結実した。
単に事柄だけを並べ立ててみてこの濃密さとなることにも驚かされるが、各所に張り巡らされた伏線や次に繋がる細部の表現が緻密に積み重ねられており、この2バンドが本当にこれらのストーリーを背負って音楽活動をしていると信じさせる強烈なリアリティがそこにはある。Ave Mujicaはバンド誕生時から背景に不幸を背負い、運命に翻弄されながらも進んでいく姿を見せてきたが、そのリアリティの源には彼女たちが奏でるシンフォニック・メタル、ゴシック・メタルという音楽ジャンルの持つテーマとの共鳴も大きく寄与しているように感じられる。宗教、耽美、運命といった壮大なドラマ性に、死と救済等、ジャンルとして常にこれらのテーマを内包してきた音楽性を選択したことは、ある種の必然だったのかもしれない。歌詞には常にそれらのテーマがちりばめられ、特に"運命"、"不幸"、"呪縛"、"闇"等のネガティヴな方向の表現がその大半を占めてきたことがAve Mujicaの表現の核となり、個性豊かな5人が見せる世界観を1つの方向に束ねてきた。
2023年のアニメ放映から、もっと言うと2022年のMyGO!!!!!の始動からの一連のストーリーが、2つのバンドのそれぞれの活動と2本のアニメとして展開し、そして2バンドの共演による合同ライヴで完結するかのようにも思われたが、2バンドの共演に先駆ける形でアニメの続編制作決定が発表、合同ライヴはあくまで結節点として位置づけられ、ここからはさらに新たなストーリーが紡がれていくことが明らかになった。
そんな背景を持ってリリースされる今作は、1曲目となる「'S/' The Way」がバンドにとっての明確な転換点のように感じられる。タイトルの通り"S/(Slash:切り裂く)The Way(Way:道、転じて運命)"と歌い上げることがテーマとなっており、"道を切り裂く"ことで運命に対し反攻を開始する姿勢が明確に表現されている。残酷なまでの運命や偶然に翻弄され、その翻弄される様を、あるいは受容して前に進む様を歌ってきたこれまでのAve Mujicaの姿勢との"わかれ道"とまで言っても過言ではないかもしれない。その音楽性は郷愁すら感じさせる古き良きハード・ロック・チューンに仕上がっており、疾走感溢れる展開とツイン・ギター・ソロも織り込んだ見せ場の多い構成はライヴで盛り上がること必至。
儚さと力強さの両面を巧みに使い分け、楽曲をドラマチックに歌い上げるドロリス/三角初華(Gt/Vo)の圧倒的な歌唱力が前面に押し出されながらも、そのドロリスとのユニゾン、ツインでのギター・プレイでゴリゴリのサウンドを生み出すモーティス/若葉 睦(Gt)、ギターともドラムとも完璧なユニゾンをキメてバンドのヘヴィなサウンドを支えるティモリス/八幡海鈴(Ba)、歌うようにリズムを叩き出すアモーリス/祐天寺にゃむ(Dr)、縦横無尽にメロディに華を添えるオブリビオニス/豊川祥子(Key)と、多彩なメンバーがそれぞれの役割を果たしながら駆け抜ける。"世界が止まって いま わたしのものになる"と歌い上げる通り、運命に翻弄され続けたAve Mujicaが自らの意志のもとに道を切り拓くような今後を予感させる楽曲だ。
Ave Mujica「'S/' The Way」(TVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード Divinez デラックス決勝編」ED映像)
続く「Sophie」は1曲目と対をなすように絶望に塗りこめられた"狂気と危うさ"をこれでもかと表現し、今後への不安をリアルに掻き立てる楽曲。悲鳴そのものとも言えるスクリームを挟みながら"この '不幸' を呪って"と歌う様からは、物理的あるいは精神的な死の淵を覗き込むAve Mujicaのこれまでとこれからのストーリーへの想像が、勝手に頭の中で膨らんでいく。モダン且つヘヴィなサウンドに、シンコペーションを多用した独特のリズムと歌っているかのような自在なストロークで聴かせるツーバス、それに華を添え楽曲を拡張するストリングスとピアノのサウンドが、バンドの真骨頂を発揮した音楽性を鳴らす。
Ave Mujica - Sophie (Official Music Video)
いずれの楽曲もライヴでの盛り上がりが目に浮かぶハイテンションな楽曲であり、これまでもライヴで見せてきた通り、圧倒的な完成度と表現力で引き込まれる世界を見せてくれることになるだろう。Ave Mujicaのライヴはそのテーマ通りもはや演劇や作品に近く、MCなし、音楽のみでバンドの世界を表現する。それに対しオーディエンスはその世界を"全身で受け止める"という、まるで体験の現場として機能している。その中にあって、この2曲は展開の豊かさと表現の深さの両面から今後のライヴにおいて重要な楽曲になることは間違いない。
まずは手始めに、今月来月と東阪で開催される"Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」"でのパフォーマンスに期待。直訳すると"さらに前に進む"というタイトルを冠した公演であることも踏まえ、ライヴで彼女たちが見せる世界の進化と深化を楽しみにしている向きも相当に多いことだろう。さらに来年3月には再びの共演となる[MyGO!!!!!×Ave Mujica ツーマンライブ「"moment / memory"」]、その翌月4月から5月にかけては東名阪福4都市のZeppを回る"Ave Mujica LIVE TOUR"も開催が発表されている。実際のライヴで彼女たちがどんな成長を見せてくれるのか、ここまでのライヴがどれも圧巻のパフォーマンスだっただけに勝手に期待してしまう。
"バンドリ!"としては夢限大みゅーたいぷを描いたTVアニメ"バンドリ! ゆめ∞みた"の放送を2026年とアナウンスしていることから、"BanG Dream! It's MyGO!!!!!/Ave Mujica"アニメ続編シリーズはまだもう少し先の話になりそうだ。アニメによるストーリーテリングなしに、2つのバンドのその先の物語がしばらくはライヴと音源を中心に展開していく。その中で違いや成長を見せていく難易度は明らかに高く、凡百のバンドには無理な注文というものだが、彼女たちならやってくれる。そんな期待を抱かせてくれるシングルを携え、Ave Mujicaの新章が幕を開ける。
▼リリース情報
Ave Mujica
3rd SINGLE
『'S/' The Way / Sophie』

【数量限定生産特装盤】CD+Blu-ray+GOODS
BRMM-10999/¥17,050(税込)

【Blu-ray付生産限定盤】CD+Blu-ray
BRMM-11000/¥11,000(税込)

【通常盤】CD
BRMM-11001/¥1,650(税込)
[ブシロードミュージック]
NOW ON SALE!!
▼LIVE INFORMATION
"Ave Mujica 6th LIVE「Ulterius Procedere」" ※会場チケットSOLD OUT
2025年12月14日(日)東京国際フォーラム ホールA
2026年1月15日(木)グランキューブ大阪 メインホール
[配信チケット] ※東京公演のみ
¥5,500(税込)
販売期間:~12月21日(日)22:00
配信期間:~12月21日(日)23:59
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▼TOUR INFORMATION
"Ave Mujica LIVE TOUR"
4月17日(金)Zepp Fukuoka
4月26日(日)Zepp Namba (OSAKA)
5月1日(金)Zepp Nagoya
5月4日(月・祝)Zepp Haneda (TOKYO)
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