MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

INCUBUS

2024.05.01 @東京ガーデンシアター

Writer : 吉羽 さおり Photographer:古溪一道(INCUBUS)、伊東実咲(BAND-MAID)

ベーシストにNicole Row(Ba)が正式加入し新体制となったINCUBUSが、アジア・ツアー("INCUBUS ASIA TOUR 2024")の一環として6年ぶりに来日。東京ガーデンシアターで一夜限りのスペシャルなショーを行った。

まずスペシャル・ゲストとして登場したのは、昨年の10周年記念の北米ツアーで親交を深め、4月17日にINCUBUSのMike Einziger(Gt)と共作した新曲「Bestie」をリリースしたBAND-MAID。「Choose me」からダイナミックなアンサンブルを聴かせた。中盤では小鳩ミク(Gt/Vo)の紹介でステージにMikeを呼び込むと「Bestie」を一緒にプレイ。"Bestie"らしく、Mikeはステージに登場するやメンバーひとりひとりとハグをして、ステージでの共演を喜んでいたのが印象的だ。KANAMI(Gt)、小鳩、Mikeのトリプル・ギターで披露した「Bestie」は、BAND-MAIDの歌心に西海岸の風が吹き込むオルタナティヴな1曲で、エモーショナルでラウドなバンドの曲の中でいいアクセントになっている。ミドル・バラードからラストのドライブ感溢れる「DOMINATION」まで、馬力たっぷりに駆け抜けるステージで魅せた。

昨年脳腫瘍の手術によりツアーを離脱し、脱退となったBen Kenney(Ba)に代わり、サポートを務めていたNocole Row(PANIC! AT THE DISCOのライヴ・サポートなどで活動)が加入後初めての日本でのステージとなったINCUBUS。このライヴの後日には、2001年にリリースしバンドの名刺代わりとなった4thアルバム『Morning View』を、新体制で再レコーディングした『Morning View XXIII』がリリースとなったが、『8』(2017年)以来長くフル・アルバムが出ていないなか、約6年ぶりの来日である。この日を待ち望んだファンのシンガロングや歓喜の声は、ひと際大きい。

暗めの照明のもと、「Quicksand」のディープなアンサンブルで、会場の空気をじっくりとバンドのムードで染め上げていくスタートから、続く『Morning View』収録の「Nice To Know You」では一気に大合唱を巻き起こす。スタンドマイクを両手でグッと掴んで歌うBrandon Boyd(Vo)ならではのスタイルもまた、観客を沸かせ、その声を大きくさせる感じだ。映像の演出を交えドラマチックに盛り上げていった前半のハイライトは、「Sick Sad Little World」でのそれぞれの見せ場のあるアンサンブル。MikeとNicoleが、左右で向かい合って呼吸を合わせ、フレーズを掛け合い、José Pasillas(Dr)が、縦のビートから横のビートまで柔軟に紡ぎながらアンサンブルの温度を上げ、サイケデリックな映像と相まった間奏パートでさらにグルーヴに乗っていく演奏は、グラフィカルであり、叙情的だ。たっぷりとその音で酔わせたあとに来る「Circles」のヘヴィなリフは、カンフル剤のように刺激的に響き、続く「The Warmth」や「Pardon Me」ではBrandonがフロアにマイクを向け、観客のシンガロングのボリュームを上げていった。DJ Kilmore(Chris Kilmore/Turntable)のスクラッチも気持ち良く響く。

フロアから掛かる声にNicoleが笑顔を覗かせ、Nicoleのベース・ラインから痺れるような低音がモダンな「Karma, Come Back」へと続き、ライヴは後半に折り返した。久々の日本でのライヴであり、セットリストではアルバム『Morning View』を中心にその前後の作品からの曲が並んだが、後半ではさらにカバー曲が盛り込まれ、THE BEATLES「Come Together」やPORTISHEAD「Glory Box」、そしてギタリストMIYAVIをゲストに迎えてDavid Bowie「Let's Dance」を披露。イギリスのアーティストばかりのカバー曲となったが、シックで深みあるアレンジで聴かせるカバーと、長くライヴで重ねてきただろう「Are You In?」や「Warning」、「I Miss You」といったシンプルで、アンサンブルの間合いやグルーヴ感で聴かせる曲との馴染みも良く、また初期の「Vitamin」は逆に曲の持つ爆発力がさらに冴えて観客を沸き立たせる。

コロナ禍の2021年に、アルバム『Morning View』の発売20周年にあたり、アルバムの全曲を披露するオンライン・コンサート("Incubus Morning View Anniversary Stream")を行ったINCUBUS。そこでの手応えをもとに、さらに20年という時間とライヴで進化/深化を遂げてきた収録曲を、新体制でパッケージしたのが5月にリリースした『Morning View XXIII』だ。もともと、海の見えるマリブの邸宅に数ヶ月暮らしながら制作し、リラックスしたなかで、実験的アイディアを重ねバンド・マジックで形にしていった『Morning View』だが、その曲たちの骨格やテンション感は変えることなく、『Morning View XXIII』は、曲のさらなるポテンシャルを引き出したエヴァーグリーンなロック・アルバムになっている。やりすぎず、音の引き算も洗練され、何より新たなメンバーが加わったことでのフレッシュな空気感があるのだ。今回のライヴでは、キャリア20年以上のバンドに言う言葉ではないかもしれないが、瑞々しさを放っていたように思う。

本編ラストの「Drive」でBrandon、Mike、Nicoleがステージ中央のモニターに腰を掛け、語り掛けるようなフレンドリーさで会場をひとつにし、アンコールでは大合唱必至の「Wish You Were Here」から、Mikeによるピパ(琵琶)の音色が凛と響く「Aqueous Transmission」と続いて、興奮で熱くなった会場に爽やかな風を吹かせた。前回の来日からの約6年を埋めるようなボリュームとなった今回。新たな作品もまた近いうちに聴けたりするのだろうか。期待や欲も募る一夜となった。


[Setlist]
■BAND-MAID
1. Choose me
2. モラトリアム
3. Bestie
4. Manners
5. Daydreaming
6. DOMINATION

■INCUBUS
1. Quicksand
2. Nice To Know You
3. Anna Molly
4. Stellar
5. Sick Sad Little World
6. Circles
7. The Warmth
8. Pardon Me
9. Karma, Come Back
10. Come Together(THE BEATLESカバー)
11. Absolution Calling
12. Vitamin
13. Glory Box(PORTISHEADカバー)
14. Are You In?
15. Warning
16. I Miss You
17. Megalomaniac
18. Let's Dance(David Bowieカバー)
19. Drive
20. Wish You Were Here
21. Aqueous Transmission

  • 1