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INTERVIEW

INCUBUS

2024.04.11UPDATE

2024年04月号掲載

INCUBUS

Member:Brandon Boyd(Vo)

Interviewer:山本 真由 Translator:原口 美穂

約6年ぶりとなる来日公演"INCUBUS ASIA TOUR 2024"を5月に控えたINCUBUS。今回は、長年にわたり彼ら独特のグルーヴのあるサウンドを支えてきたベーシストのBen Kenneyが病気で離脱を余儀なくされ、新たなメンバーとしてPANIC! AT THE DISCOのライヴ・メンバーだったNicole Rowを迎え、新体制で初の日本公演となる。本インタビューでは久々の来日を前に、そんな彼らのここ数年の近況や、日本での思い出、5月にリリース予定の再録アルバム『Morning View XXIII』についてなど、フロントマンのBrandon Boydに詳しく語ってもらった。

前回インタビューさせていただいたのは、アルバムとしては最新作の『8』をリリースした2017年でした(※2017年4月号掲載)。その際のインタビューで宣言していた通り、『Trust Fall (Side A)』(2015年リリースのEP)の続編にあたるEP『Trust Fall (Side B)』を2020年にリリースしていますね。こちらのリリースまではかなり時間がかかったようですが、結果的にかなり満足のいく作品になったのではないでしょうか。

あのEPはパンデミックのときにリリースしたから、新譜が出ても世の中はそれどころじゃなかったんだよね(笑)。だからあまり強い印象はなかったかもしれない。でも、それは仕方ないし、ひとつの作品を"Side A"と"Side B"という形で数年の時間を挟んでリリースしたことで、僕らにとってはキャリアの中でも興味深いチャプターを刻めたと思う。

-全体的な印象としては"Side A"のほうが激しい楽曲が多く、"Side B"はもっと豊かな表現を見せるようなバラエティに富んだ作品という感想を持ちました。期間が空いたことや、曲を量産できたことで、選曲に変化はありましたか?

そうだね。たしかに"Side A"はロック色が強いかもしれない。まぁでも、"Side B"にもその要素はあるけどね。5年という歳月を挟んでいるから、ふたつの作品ではその期間の違いやバンドの進化を見ることができる。それがこのプロジェクトの面白さだと僕は思うね。実は今、僕たちは新しい作品を制作中なんだ。新しいバンド・メンバーのNicoleと一緒にね。彼女は以前、PANIC! AT THE DISCOに在籍していたんだ。だから彼女は、僕らにまったく違う世界をもたらしてくれているし、彼女と一緒に演奏するのは本当に素晴らしい経験なんだ。彼女の音楽性や実際の演奏方法にバンド・メンバーが反応することで、また面白い変化が生まれているよ。半年以内にとりあえずシングルをリリースする予定だけど、すごく楽しくてエキサイティングなものになりそう。僕らは、その方向に進みさらに進化しているところなんだ。

-そのNicoleですが、彼女は昨年もサポート・メンバーとしてINCUBUSのライヴに参加していましたね。正式メンバーとなった決め手やきっかけはどんなことだったのでしょうか?

彼女は、本当にユニークな視点を持っている。僕たちはもう何年も一緒にバンドをやってきてるから、彼女の新鮮な視点が加わることはバンドにとってすごくいいことだと思う。Nicoleは、とても新しくてユニークなものをもたらしてくれているんだ。だから演奏していてすごく楽しいよ。

-昨年はベーシストのBen Kenneyが脳腫瘍の手術後の回復のため休養していましたが、その後の彼の様子はいかがですか? INCUBUSの音楽に欠かせないグルーヴを持った彼のベースは、バンドにとってはもちろん、ファンにとっても大きな存在だと思います。

彼のことは彼が語るべきだと思う。彼はまだバンドに戻る準備ができた状態ではないから、悲しいけれど僕らは彼がバンドを離れるというその決断を愛情を持って尊重し、受け入れたんだ。

-Nicoleを知ったきっかけは?

Benが勧めてくれたんだよ。彼が直接知り合いだったわけじゃないんだけど、BenがNicoleの存在を知っていて、彼女が本当に才能あるミュージシャンだから連絡を取ったほうがいいと勧めてくれたんだ。で、Nicoleに連絡をとってバンド・メンバーになってくれるか尋ねたら、幸運にも彼女からOKが出た。そういう流れで彼女がバンドに加わったんだ。

-パンデミックをはじめ社会情勢も不安が続いた時期がありましたが、バンドとしてはどのようにファンとの交流や音楽活動を行っていたのでしょうか? ポジティヴに活動を続けられた秘訣などはあったのでしょうか。

あの時期は全世界にとって奇妙な時期だった。バンド・メンバーで集まって一緒に音楽を作ることが僕たちの一番の望みだったけど、あの時期は残念ながらそれができなかった。だからみんな別々に活動していたんだ。もしかしたら、あの時期は全員にとって必要な時間だったのかもしれないし、みんな作曲という作業から離れてみる必要があったのかもしれない。そういう時期があったほうがソングライターとして、作詞家として、アイディアという燃料をためることができるからね。そしてその後、僕はプロデューサーの友人と一緒にソロ・レコード(2022年リリースのアルバム『Echoes & Cocoons』)を作ることになったんだ。あの作品は自宅のスタジオでレコーディングしたんだよ。あとはINCUBUSとしてもリモートで何曲か作ったし、あれはあれで楽しかったし面白かった。それとロックダウンの終盤ぐらいにみんなで集まって、レコードをさかのぼってライヴストリームで演奏したんだけど("Incubus' Morning View Anniversary Stream")、あれも楽しかったな。

-また今年は、2001年にリリースしたアルバム『Morning View』を再録した『Morning View XXIII』を5月10日にリリースすることが発表されていますが、再録作品を制作することになった経緯や、レコーディングの感想などを教えてください。

理由はふたつあって、まずつまらないほうから話すと、マスターを所有しているレコード会社から再録する権利を取り戻したんだ。だからまた『Morning View』をリリースすることができるようになった、というわけ。でもまぁ、これはつまらない業界的な理由だね。そしてもうひとつのクリエイティヴで楽しいほうの理由は、さっき話したライヴストリーミングをやってみて、それが楽しかったから、"あのライヴストリーミングがすごく上手くいったから、あれをリリースしようか"という話になったんだ。コンセプトとしてはクールなアイディアだと思ったんだよね。で、ミックスの作業までいったんだけど、そのとき、その音源が"素晴らしい"とは思えなかったんだ。あのアルバムを再びリリースするなら、作品に敬意を表しながら、今の僕たちが世に送り出していくようなものにしないといけないと思った。僕たちにとっても、僕たちのキャリアにとっても、そして長年にわたってこのアルバムを愛してくれた多くの人たちにとっても、とてもインパクトのあるものにしなければいけないってね。バンドのみんなと、バンドとして何かをリリースするなら、本当に素晴らしいものでなければならないと話し合ったんだ。今の僕らが誇りに思えるようなクオリティのもの。そういうわけで、また録り直すことにしたんだよ。結果、本当に美しいものができあがったし、僕たち全員が誇りに思える作品に仕上がったと思う。僕ら全員ですべてを演奏するっていう昔ながらのやり方はそのままで、再録でもそのアプローチを取った。でも、『Morning View』は世界中の人々に愛されている作品だけど、まったく同じアプローチを取るのもどうかなと思って、いくつかの曲はほんの少しだけひねりが加えられているんだ。演奏方法をちょっと変えたりしてね。このインタビューを読んでくれているリスナーの人たちがアルバムを聴いたら、その微妙な違いがわかると思う。オリジナルはオリジナルですでに存在しているし、新しいバージョンではちょっとアップデートを加えてもいいんじゃないかと思ったんだ。前のほうが好きなら、すでにリリースされているそっちを聴いてもらえればいいしね。

-新作フル・アルバムを制作中とのことですが、それはどんな作品になる予定ですか?

それはまだわからないな。Nicoleが入ってくれたから、彼女が新しいものをもたらしてくれているぶん、これまでとはまた違う、進化した内容になると思う。それがどんなものになっていくかは、これからわかっていくはずだよ。