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LIVE REPORT

人間椅子

2023.11.06 @Zepp Haneda(TOKYO)

Writer : 杉江 由紀 Photographer:西槇 太一

白塗り地獄和尚に、昭和の大文豪、そしてテキ屋のアニキ。人間椅子の近影を何も知らない人が見たとしたならば、3人の御姿はそのようなふうにも見えかねない。少なくとも、彼らが和製BLACK SABBATH的なロック・バンドであり、すでに34年のキャリアを誇っているということは、ある程度HR/HMに精通した者でなければわからないのではなかろうか。

ちなみに、筆者の場合は1989年に人間椅子がTBSテレビ系列"三宅裕司のいかすバンド天国"(通称:イカ天)に初出演した際、テレビをリアルタイム視聴していて「陰獣」の怪演ぶりに驚いたクチであり、実はそれから10年後の1999年に彼らが8thアルバム『二十世紀葬送曲』を発表した際には、とある音楽雑誌にてインタビューをしたことがあったりもする。

あれから世紀も変わり、それどころか約四半世紀の時が経った今、このたびは久方ぶりで人間椅子のライヴに接することとなったわけだが、なんとZepp Haneda(TOKYO)にて開催された"人間椅子 2023年『色即是空 ~リリース記念ワンマンツアー~』"の千秋楽は、チケット完売の満員御礼状態。そのうえ、各地においても過去最大動員数を記録してきたというではないか。人間椅子を取り巻く現況は、とても喜ばしいものであるらしい。

そして、最新作にして23rdアルバムである『色即是空』の内容に沿うかたちで、ナカジマノブ(Dr/Vo)の打ち鳴らす銅鑼の音が響く「さらば世界」から始められたこのライヴ。昨今の"曲は短ければ短いほどイイ"とされる風潮をものともしない8分超えの大曲に観客たちが沸く光景を生み出しながら、人間椅子ならではの3ピース体制を生かした様々な楽曲たちを、新譜だけにとどまらぬかたちで打ち出していくことになった。

"いよいよツアー・ファイナルです。それなのに、嗚呼、それなのに。私は椅子に座った情けない姿での演奏をお見せすることになり、申し訳ございません......"(鈴木研一/Ba/Vo)

なんでも、鈴木は今回のツアーを前にして持病の脊柱管狭窄症が急に悪化してしまったそうで、ツアー初日の宇都宮公演のときは遠征先にて寝ることもままならず、もちろん歩くのも大変な事態に陥っていたそう。

"今回のツアーで、鈴木君は基本的に座って演奏していたじゃないですか。大御所感が漂ってましたし、まさに身をもって「人間椅子」になっておりました!!"(和嶋慎治/Gt/Vo)

はてさて。ここは笑っていいのか、どうなのか......。ただ、幸いツアー中に鈴木はだいぶ回復していくことができたそうで、実際この夜のライヴでも時折は立ち上がってベースを弾きながら歌っていたほか、ライヴ後半では椅子をスタッフに撤収してもらったうえで、終始オーディエンスを煽りながらの派手なパフォーマンスも見せてくれていたほど。

と同時に、和嶋慎治も心酔するギタリスト Tony Iommi(BLACK SABBATH)に倣った愛用SGを自在に鳴らしながら、様々な楽曲でこの場に集ったメタラーたちを大いに歓喜させていたことは言うまでもない。ドラマー ナカジマノブについても、マラカスやパーカッションを取り入れた多彩なプレイを見せたり、自作曲の「未来からの脱出」では力強く伸びやかなヴォーカルも披露してくれていた。

また、アンコールでは『色即是空』から和嶋の友に向けて作られたという鎮魂歌「星空の導き」を聴くことができたうえ、最後には無敵の代表曲「無情のスキャット」で最高の盛り上がりを見せながら、このツアーは"無事に"終幕を迎えるに至った。人間椅子だからこその圧倒的な怪演ぶりは、来年の35周年にもきっと健在であり続けるに違いない。


[Setlist]
1. さらば世界
2. 悪魔一族
3. 狂気人間
4. 地獄大鉄道
5. 屋根裏のねぷた祭り
6. 新調きゅらきゅきゅ節
7. 杜子春
8. 蛞蝓体操
9. 死出の旅路の物語
10. 死神の饗宴
11. 今昔聖
12. 未来からの脱出
13. 宇宙電撃隊
14. 針の山
En1. 星空の導き
En2. 洗礼
En3. 無情のスキャット

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