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INTERVIEW

人間椅子

2023.09.06UPDATE

人間椅子

Member:和嶋 慎治(Gt/Vo) 鈴木 研一(Ba/Vo) ナカジマ ノブ(Dr/Vo)

Interviewer:清家 咲乃

今年バンド生活34年目を迎えるハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンド、人間椅子。2013年、2015年の"OZZFEST JAPAN"出演、複数の楽曲提供やタイアップ、2020年のヨーロッパでのワンマン・ツアー開催などを経て、まさに再デビューといった勢いのある活躍を見せてきた3人が2年ぶりとなるオリジナル・アルバムを世に放つ。23枚目にしてこれまでにない新機軸もあり、変わらずそこにある中軸もあり。移ろいゆく世界のなか、それでも彼らが生き生きと躍動できる秘訣は、本作を通じて感じ取れるはずだ。

-アルバム・タイトルの"色即是空"は以前「虚無の声」(2017年リリースの20thオリジナル・アルバム『異次元からの咆哮』収録)などの楽曲でも印象的に使われていましたが、時間を経てこの言葉に対する解釈に変化は?

和嶋:"この世のものには実体がない"ということを表わした言葉で、以前はわりとそのまま字面で使ってたというか、ある種の若干のニヒリズムみたいな感じで捉えてたんですけど。仏教的に言うとこの世の苦しみからの解脱を目指して、いろいろ修行したりして生まれてきた考え方なので、根底には"苦しみを乗り越える"という動機があってのこの言葉だなと。つまり"移ろいゆく現象を前にして煩悩にとらわれたり、その執着にとらわれる必要はない。そこから逃れることが幸せだ"という言葉だなと解釈して、ここのところのなかなか落ち着かない世界に対して、この考え方でいけば乗り越えられるのではないかな? という意味でタイトルにしました。いわゆる絶望をメッセージとするのはあまり良くない。やっぱり聴いてくださる方々と一緒にこのあとも時代を乗り越えて、楽しみとか幸せを求めて生きていきたいという想いがあったので。

-音源発表のあり方も移ろっていってますが、人間椅子はアナログを発売しつつサブスクも活用されていて。そこに対して抵抗はなかったですか?

和嶋:我々はあんまりないと思う。だって人に聴いていただくのが一番じゃないですか。若い人は取っ掛かりとしてまずサブスクじゃないですか? とすれば、そこをやらないと聴いてもらえないのかなと思ったりしますし。ただレコード世代ですから、出せる状況にあるうちは盤は出したいと思ってますけど。デビューした頃はアナログ出したいと思ったんですよ。その夢が今叶ったというのはありまして。今回のはアナログにしたらすごいかっこいいです。そちらは11月発売ですね。

-表現方法も変化して、いろいろと規制がかかってきています。

和嶋:特にここ数年は感じますね。あんまりあからさまな表現は規制されるというか、昔より言葉は選ばなきゃなと。ダメと言われている言葉の内容も変わった気がしますよ。以前は差別的なことがたぶん一番ダメだったんですけど、今は"死"とかも普通に言うのはダメですよね。音楽ジャンルはまだ大丈夫かなと思うんですけど、だんだん難しくなってきたなという気はします。

-"地獄シリーズ"の楽曲では残虐な表現が特徴ですが。

鈴木:"地獄シリーズ"はやりすぎていい加減飽きたというか、自分が(笑)。最近"生きものシリーズ"でやってるんですよ。

-前回は蟷螂(2021 年リリースの22ndオリジナル・アルバム『苦楽』収録曲「恍惚の蟷螂」)、今回が蛞蝓(「蛞蝓体操」)で。

和嶋:気がつきませんでした。一般的にきれい、かわいいとされるところからは外してんの?

鈴木:そんなことはない。一般的に蛞蝓はかわいくないと思われがちだけど、まぁよくよく見てくださいよ。

和嶋:愛嬌はあるかもしれない。

-以前はヴォイス・レコーダーを使って曲を作られていたそうですが、そこも変わってきたりしてますか?

鈴木:スマホになりましたよ。そのほうが全然音がいいということに気づきまして。

和嶋:でもリフは未だにヴォイス・レコーダー使いますよ。鈴木君はMTRを数年前に購入して。

鈴木:すご~く簡単なMTRなんですよね。和嶋君とかノブ君はドラム入れて録音するんだけど、自分はまどろっこしくてもう全部クリックで(笑)。なんだったら俺あれでいこうかなと思ってんだよね。よくあるじゃん、ドッツ、ドッツ......って。

ナカジマ:ヴォイス・パーカッション!?

和嶋:それ手間かかるんじゃないの?

鈴木:いやいや。クリック聞いてさ、ドコドコデッ、ドコドコデッ......。

-ノブさんもそういう感じで作られてるんでしょうか?

ナカジマ:俺はもうちょっと簡単なGarageBandを使ってて。ドラムも打ち込めるし、ギターとベースも録れるし。シーケンサーだから、作っちゃったらそれを切り貼りしていけば。でもあれ、テンポ・チェンジはできないんですよ。シーケンス機能を使ってるぶん、僕はもしかしたら数歩だけIT革命が起きてるかもしれないですね(笑)。

和嶋:バンドで集まらずにデータでデモのやりとりして、それで曲作ってくってよく聞くけど、生のグルーヴを大事にしたいですね。デモで作ったのは1回置いといて、曲ができればイチからバンドで合わせて。デモ作ってかっこいいと思ってもなんかテンポが不自然に速かったりとか、バンドでやらないと気持ち良さみたいなのはわからないところがある。

-今回、アルバムの中で「星空の導き」がすごくきれいな曲で。

和嶋:よくハード・ロックとかメタルで1曲毛色の違うのが入ってるじゃないですか。そういうのを入れたいなということでアコースティックなバラードを。

-そこから締めに向かうのかなと思ったら、「蛞蝓体操」が入るという。

鈴木:そこで1回終わったと見せかけて最後にグッとくる、みたいな感じのとこじゃないですか。そのあたりは。

-それで言うと「さらば世界」も、終わったと見せかけて最後にまたキメがありますよね。

和嶋:うん。自分の思い込みかもしれないですけど、クラシックってそういう大仰なことやるイメージがあって。クラシック的に、ドラマチックに聴こえればいいなと。

鈴木:クラシックってよく、その曲を知らない人が隙間で間違って拍手しちゃうけど、この曲を聴いてこなかった人はあそこで拍手する。

和嶋:(笑)そういう大仰なドラマチックさを演出したかったので、大きなブレイクが欲しかったんですよね。

-なるほど。"色即是空"という言葉に前向きな意味を見いだしたということでしたが、「さらば世界」の歌詞は絶望的でもあって。

和嶋:いったんそういう心境になってるという感じですね。

-でも中間部には温かみを感じます。

和嶋:例えば何かしら自分の中での決別や決意みたいなものがあったとして、そのあとに訪れる幸せな世界というか、そういうのを表現したかったのでここは明るく。まぁ歌詞は抽象的ですけど。大作をやっぱり数曲は入れたいなというのはありましたね。でも対比だと思うんですよ。全部そうだと聴いてるほうも疲れるし。メリハリのある感じにいってるかと。

-「生きる」ではカウベルが入ってきたり。

和嶋:楽しい感じを。曲もあんまり長くないですし、懐かしいロックの感じを目指して。

-ライヴでやって気持ちいいかどうかも考えますか?

鈴木:どの曲もそういう部分はあるかもしれませんね。

和嶋:あると思いますよ。生演奏で表現できることを想定してやってますね。だから1曲の中で突然楽器持ち替えるとか、そうしたらたぶんよりドラマチックに聴こえるんだけど、そういうことはやらないようにしてます。