INTERVIEW
人間椅子
2023.09.06UPDATE
Member:和嶋 慎治(Gt/Vo) 鈴木 研一(Ba/Vo) ナカジマ ノブ(Dr/Vo)
Interviewer:清家 咲乃
メロディは口ずさめたほうがいいと思うんだよね。 飽きが来ない感じで覚えやすいって難しいんですけど
-「人間の証明」ではみなさんがサビで同じメロディを歌うので、アンセム的な印象があります。
鈴木:KISSみたいな曲を作りたくて(笑)。去年ライヴ("END OF THE ROAD WORLD TOUR")を観に行きまして、そしたら"やっぱいいなぁ"と。KISSは全員歌って全員コーラスやるってところがかっこいいので、この曲も3人が全員でドーンと出る部分をたくさん作ろうと思って。まだライヴではやってないけど、KISS的な動きができればいいなぁと思っています。
和嶋:どの曲もコーラス入ってたりするんですけど、我々はあまりコーラスが上手くないなぁっていう結論を見たんですよ(笑)。あんまりハモらないっていうか。
鈴木:そうそう。
和嶋:特にサビでハモろうとすると上手くいかなくて、ユニゾンでやったほうがいいなということに結構前に気がついて。ハモってるのもありますけど、基本ユニゾンでやったほうが一体感出るし我々に合ってるなという。
-全員が歌えるバンドもなかなかないですよね。
鈴木:どうなんですか? みんな歌えるんじゃないですか、どのバンドも。ヴォーカルの人に遠慮して他の人が歌ってないとかじゃなくて?
-いや~、そうじゃないと思いますよ。
鈴木:そうですかねぇ。
和嶋:自分が歌ってないときは喉を休められるので、この形態のほうがいいと思いますけども。偶然ですけど、高い音が得意な人もいれば低い音が得意な人もいるので。全員が高かったらどうなったんでしょうね。Glenn HughesとDavid Coverdale(ex-DEEP PURPLE)みたいになって、どっちがいいところを歌うかで揉めそうでしょ、どっちも歌上手いと。ユニゾン効果としてはさ、鈴木君声低いじゃないですか。僕はまぁまぁ高くて、ノブ君声高いでしょ。で、ユニゾンすると倍音出るんだよね。たぶんノブ君の声でそれになるんだと思うんですけど。女性の声が聞こえる感じになるんですよね。エンジニアさんも言ってますから。
-ノブさんだけでも結構倍音が多いですよね。
和嶋:そうですね。それが強調されるのかな? ユニゾンすると。
ナカジマ:なのかもねぇ。でも俺だけではないんじゃないのかね。
和嶋:合わさらないとね、その音出てこないんですよ。面白いですよね。
-戦隊モノを思わせる「宇宙電撃隊」には度肝を抜かれました。
和嶋:ちょっと新しいページを開けてみようかなと。自衛隊に"宇宙作戦隊"というのができたんですよ、実際に。それに驚きまして。名前がヒーローものじゃないですか。それにちなんだ曲を作りたいなということで、どうせなら遊んでみようかと。昭和のヒーロー・ソングみたいな感じになればなと考えました。
-テルミンも使われてますよね。
和嶋:そうです。「宇宙の人ワンダラー」もですけど、"宇宙"って付くととりあえずテルミンを入れてみたくなりまして。間違ったUFOの解釈みたいでいいなと(笑)。"ベントラ、ベントラ、スペースピープル"の部分は鈴木君が"ぜひ入れたい"ということで。
鈴木:雑誌"ムー"のかなりの読者である和嶋君には"ベントラ"を歌詞に入れるのはすごく抵抗があったみたいですけども、結局入れてくれて。結果としては良かったんじゃないかと。
和嶋:ベタすぎて最初は抵抗あったんですけど(笑)、これが入ってよりキャッチーになったと思いますよ。
-今回、小説を題材にした曲というのはないんでしょうか。
和嶋:それはやらないようにしたんですよ。そっちに引っ張られちゃうので。どっちかというと自分たちの言葉でやりたかった。あ、「人間の証明」は森村誠一の小説のタイトルがかっこいいと思ったので借りましたけど(笑)。
-「未来からの脱出」はディストピアを歌った曲ですね。
和嶋:ディストピア的なものをノブ君の声で歌うと、すごいストレートにいくなぁと思ったので。「さらば世界」の別側面という感じかもしれないですね。"共に行かん"って意味合いがあったり。"~じゃないぜ"はノブ君しか言えないと思うんで、そういう言葉遣いにしたんです。朝から万全の体制で歌入れに臨んだんじゃなかったっけ。
ナカジマ:あの歌入れのときはそうでしたね(笑)。エンジニアさんと相談して"声が一番出るのは起きて4時間から5時間経ったところ。ちゃんと朝もご飯食べて、体調整えてきたときが一番歌がいいよ"と。だからそれをバカ正直にやってみて。歌入れが12時すぎから始まるので、7時半ぐらいに起きて、ご飯食べて。スタジオに行ったらチェックをちょっとして、もう12時半ぐらいから歌い出して。でもこれ、2度に分けたんですよ。"サビのところはすごい高いから別の日に録ったほうがいいんじゃないか"って研ちゃん(鈴木)とかのアドバイスがあって。ちょっと身体休めて、サビの部分だけ別の日に録って。もちろんその日もちゃんと身体を整えました。
和嶋:いや~、ヴォーカリストの臨み方ですよね(笑)。
ナカジマ:アスリートみたいだな(笑)。でも上手くいきましたよ。
-エネルギーが伝わってきました。「蛞蝓体操」はギターのフェイザーの質感もいいですよね。
鈴木:特に歌にはなんにも掛かってないんだけど、ギターに掛かってるとそれが全部を覆ってるような錯覚になりますよね。
和嶋:「未来からの脱出」の歌はすごい高い音で、この曲はたぶん一番低いんですけど、その気持ち悪さをギターで補足する感じで。
-最後の「死出の旅路の物語」は台詞が入っていますが、あれは"ヨハネの黙示録"ですか?
和嶋:そうです。それが実は裏のテーマというか。でもそれをまんまやると、あまりに怖い歌になっちゃうし、誇大妄想みたいに聴こえてしまう。まあ誇大妄想に聴こえてもいいんですけど、もっと身近に、個人的な人の死を表わす感じにシフトできないかなと思って作った曲です。だから本当は"第1のラッパ~"とかやりたかったんですけど、そうすると本当にハルマゲドンの歌になってしまってあんまり良くないだろうと。人が浄土に行くための関門があるよ、みたいな比喩としても言えたらいいなということでこうなってます。それで台詞のところは預言者が大声で語るみたいな感じになればいいと思って。
-アルバム・タイトルは仏教用語ですが、ここにはキリスト教的なものが入っているのが面白いですよね。西洋っぽい、クラシカルなフレーズもあって。
和嶋:イントロとか平歌の部分は、いわゆる和声音楽的に聴こえればいいかなと思ってやりましたね。でもそこに和風もやっぱり入れたいと思って、Bメロ後半から和風にしてます。間奏の最後とかに和音階で入れたり、和洋折衷になればと。童謡みたいなサビにしたかったんです。
-やっぱりどの曲もメロディがすごく耳に残りますね。
和嶋:そこは意識してるんですよ。30数年やってきたなかでいろいろ音楽の形態が変わって、始めた頃はなかったデスヴォイスとかが出てきて。それで、やっぱ我々はギター・ソロもあり、そしてメロディがある歌がいいよねっていうのを常に意識してやってきてたから、今回もやっぱりメロディは大切にしています。口ずさめたほうがいいと思うんだよね。聴いて覚えやすい、わかりやすいメロディは今後も心掛けたいかなぁ。飽きが来ない感じで覚えやすいって、難しいんですけど。
-10月からはツアー"人間椅子 2023年『色即是空 ~リリース記念ワンマンツアー~』"が始まりますね。
鈴木:11ヶ所ありますけど、どれひとつとして同じセットリストはやらないですよ。
和嶋:以前よりはお客さんとコミュニケーションできる雰囲気ではあるので、それが楽しみです。我々は今年で34年目になるんですけど、アルバムを作って、それをみなさんに聴いていただくっていうことをずっとやってきて。今回もまた聴き応えのある、そして今までにない部分もあるいいアルバムができたと思うので、ぜひこの新譜の生演奏を聴きに来てほしいと思います。
鈴木:アルバム発売記念ツアーではいつもそうなんですけど、マニアックな曲を聴き逃して後悔しないようにぜひ足を運んでください。いかにもライヴから外れそうな曲はこのツアーでしかやらないので(笑)。
ナカジマ:アルバムももちろん自信を持ってみなさんに聴いていただきたいと思ってるんですけど、ツアーはもう、ホームページでも"コロナ以前のようにやります"って言ってるので。これから先、よほどの何かがない限りは今まで通りにやろうと思ってるので、ぜひみなさん今まで通りのつもりで来てください。