DISC REVIEW
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不変の実体を持つものなど存在せず、万物は移ろいゆくという考えを表す"色即是空"という仏教用語を冠した23rdオリジナル・アルバム。死生観にもとづく抽象的な歌詞など一見難解に思える部分もあるかもしれないが、ひとたび聴けば耳を離れないメロディは広く親しまれる楽曲の要件を充分に満たしている。緩急をつけつつラストにかけて盛り上がる構成はまさにオリジナル・アルバムという表現形態の醍醐味。骨太なハード・ロック・サウンドにはソリッドさがあり、各パートの仕事が明確でありながらもグルーヴが湧出する一体感も備える。8分超えの壮大なTrack.1「さらば世界」で幕を明け、力強くディストピアに警鐘を鳴らすTrack.9「未来からの脱出」、圧倒的にヘヴィな"生きものシリーズ"のTrack.12「蛞蝓体操」などバラエティ豊かで、特にドゥーミーに始まりMETALLICA調のメイン・リフで走り出すTrack.7「宇宙電撃隊」は、数ある人間椅子の楽曲の中でも異彩を放つサブカルチャー・テイストのポップネスが楽しい。 清家 咲乃