MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

人間椅子

2014.09.20 @恵比寿LIQUIDROOM

Writer 荒金 良介

人間椅子がニュー・アルバム『無頼豊饒(ぶらいほうじょう)』を引っ提げ、"二十五周年記念ツアー 〜無頼豊饒~"と題した全10公演のワンマン・ツアーを敢行。今日はそのツアー・ファイナルとなり、会場は四隅までビッシリ観客で埋め尽くされていた。しかもバンドのキャリアを物語るように、人間椅子と共に歳を重ねてきたと思われる年配のかただけじゃなく、20代前後の若い人たちも多く詰めかけ、幅広いファン層に支えられている点も人間椅子の強みだろう。着物と袴を着た和嶋慎治(Gt/Vo)、顔面白塗りに袈裟を着た鈴木研一(Ba/Vo)、リーゼントで決めたナカジマノブ(Dr/Vo)のメンバー3人が揃うと、「新調きゅらきゅきゅ節」で幕を開けた。いきなり強力リフとキャッチーなサビが観客を強襲し、フロアもジャンプして活気づく。次は和嶋に代わり、鈴木がコブシを効かせた独特な歌い回しで、1stアルバム『人間失格』収録の「りんごの泪」を披露。その後に"奇しくも今日はナカジマノブ君の誕生日! 二十五周年だからこんなに来てくれたけど、二十六周年はこんなに来てくれないよ"と鈴木が冗談っぽく言うと、会場は歓喜と爆笑に包まれる。そして、"ソールド・アウト、びっくり! 新旧取り入れてやります"と和嶋も言っていたが、まさにベスト・オブ・人間椅子な選曲で大いに楽しませてくれた。「蟲」の後半で和嶋はJimi Hendrixよろしく歯でギターを弾いたり、鈴木のキャラの立ったヴォーカルに引き込まれる「地獄の料理人」など、70年代ハード・ロックを基盤に持ち前の親しみやすい人間味を存分に振り撒く。かと思えば、小説"1984年"(George Orwell著)にインスパイアされた「隷従の叫び」、暗澹たるサウンドで迫る2ndアルバム『桜の森の満開の下』収録の「太陽黒点」も演奏し、文学的重みをも備えた多彩なアプローチで観客の心を奪い去っていた。

後半戦に突入すると、ナカジマが口を開き、"リキッドのみんな楽しんでるか! アニキって呼んでくれ。人間椅子二十五周年、俺は十周年だけど、今日が1番楽しい。じゃあ、俺が歌ってる曲"と前置きして、最新作収録の「宇宙船弥勒号」をプレイする。溌剌とした伸びやかな歌声が場内に広がり、和嶋や鈴木とはまた違う声色で魅了した。本編は「針の山」で締め、和嶋は子供のようにステージ上でピョンピョン飛び跳ね、また和嶋と鈴木がお互いの背中を合わせて楽器を弾く場面も実にかっこ良かった。

そしてアンコールに入ると、鈴木がハッピー・バースデイ・ソングを歌い、和嶋がケーキ(*ふんどし姿のナカジマが映ったフォト付き)を持ち込み、さらにはドラムのチューニング・キーボルダー(from和嶋)と、いつか"笑点"のカバーをするときのためにというラッパ(from鈴木)のプレゼントまで用意され、ナカジマもご満悦の様子だった。それから和嶋がアコギ片手にセピア色の郷愁を誘う「リジイア」を披露。バンドはWアンコールにも応え、ここで嬉しい報告があった。12月3日に二十五周年記念ベスト盤&バンド・スコア、加えて、来年1月24日にはなんと23年ぶりに渋谷公会堂でワンマン公演を行うことが告げられ、観客からは拍手喝采が起きた。その高まった興奮を焚き付けるように、最後は魅惑の激重グルーヴで巻き込む「なまはげ」で大団円を結ぶ。ライヴ中に和嶋も"おやじ再デビュー!"と嬉々とした表情で言い放っていた。二十五周年を迎えた現在の人間椅子は、酸いも甘いも知り尽くし、大きな意味で原点に立ち返ったような気持ちになっているのかもしれない。ハード・ロック少年としての変らぬフレッシュさと、遊び心や余裕を併せ持つ貫禄漲るバンド・サウンドは脂が乗りまくっている。今日のライヴを観れば、若者も純粋に"楽しい!" "かっこいい!"と感じ入り、人間椅子にハマっていくのも頷ける。このまま三十周年、四十周年と突っ走ってもらいたい。

  • 1