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LIVE REPORT

ADAM at

2021.12.14 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 石角 友香 Photo by 新見真心

さすがに自ら"Japanese No.1 Instru Metal Band"と称してるだけあって、もはやピアノ・ジャズやインスト・バンドにとどまることなく、しかも首謀者 ADAM atの噺家顔負けのトークスキルも相まり、翌日筋肉痛必至のセットリストと、発声厳禁ながら笑いを禁じえない全方位のエンターテイメントが実現していた。今年6月リリースのアルバム『Daylight』を携えてのツアーだが、コロナ禍の影響で容易には有観客のライヴを開催できなかった2021年。溜まりに溜まったパフォーマンスへの熱は選曲の幅広さにも繋がっていたようだ。

SLIPKNOTやKORNを彷彿とさせるロゴの巨大バックドロップが目に入り、耳にはラジオ・トーク番組風の会場BGMが飛び込んでくる。すでに情報は渋滞気味。そこにオンタイムでADAM atと4人のサポート・メンバー、ダンサーふたりの計7人がステージに登場し、さらに脳内大渋滞。畳み掛けるように、ラテンとブラストビートが掛け合わされた「カルラテン」でスタートした。前方は椅子席だが誰も座っちゃいない。即座に橋本孝太とSYUのクランチなギターがザクザク刻まれる「ヤマネコア」、ADAM atの"踊れー!"の一声でスタートダッシュの勢いに拍車がかかって、メジャー・キーの「Your 7 Story」へ。明るく流れるようなピアノのフレーズはまるで歌のようでもあり、アンサンブルはダンス・ミュージックでもある。ダンサーがワイパーを煽ればフロアも即応。冒頭から凄まじい一体感だ。"ちょっとはしゃぎすぎたな。一応、ジャズ・バンドだけど"と笑わせ、イントロこそ洒脱なメロディだが、ブレイクして本編に突入すると、マス・ロック且つフュージョンライクな「ジャズ・ザ・リッパー」へ。ベースの永田雄樹(JABBERLOOP/POLYPLUS)の高いスキルもフィジカルを直撃する。

健康第一を留意するあまり"ありがとう!"を"オリゴ糖!"と言ってしまったなどなど、ダジャレを頻発するADAM at。初見の客をがっさりフェスで持っていってしまうのも納得である。プレイヤーを立てるセットリストも明快で、永田と山田祐大(Dr)のリズム隊対決が見どころの「URAMICHI瓢箪いろは坂」は、スカの範疇を超えた手数の多さ。さらに"あんたの拍手も俺らの楽器!"と言うと「Install」では3連のクラップが発生し、乾いた音を響かせる。まさに全員参加。ラウド且つファストなナンバーもあれば、この曲のようにどこかサーフ・テイストすらある曲調まで、振り幅の大きさも飽きさせない理由だ。また人力でビルドしてドロップまで構成する「Karakusa Trick」はEDMにも似たカタルシスを生み出し、オーディエンスは足を止める暇がない。開かれたメロディ・ラインは「Oroppas」に引き継がれ、頭上で回るミラーボールの速度すら速く感じられる。いや、実際、こんな速度で回るリキッドルーム(LIQUIDROOM ebisu)のミラーボールは見たことがなかった。サンバ調なのにエモやギター・ロックのライヴの如く手を挙げて、しかも踊る。ADAM atのライヴならではの光景だろう。

"ライヴ楽しいのよ。思い出にしてもらったら夢でも会えるし"とか"毎日頑張って、でもここに来たってことは逃げてきたって人もいると思う。好きな音楽があるところに"と、グッとくる言葉を発しながら、渋滞に巻き込まれて、ポンピングを間違って5回やってしまい"ア・イ・シ・テ・ル"になってしまったとか、くだらない話でも笑わせるADAM at。全身全霊でファンの脚力も腹筋も崩壊させるつもりだ。

そこから大きなギャップのあるスケール感たっぷりなピアノ・ソロに入り、歌が乗っても違和感のない「幻想陰翳ディストピア」。そしてまだ火曜日だけど土曜日の気分で、と16ビートのソウル・フレイバー漂う「サタデーナイトフルット」で、今度は横ノリを自然発生させる。この曲から「Dancer In The Lake」、「Silent Hill」の3曲でJABBERLOOPからもうひとり、トランペットのMAKOTOも参加し、アレンジの幅を広げた。ラウドなアンサンブルもいいが、ソウル寄りのグルーヴも緩急がついてライヴ巧者ぶりを見せた感じだ。

情報が渋滞する展開はまだまだ続く。物語の朗読が流れ始めると、ステージ上でセット・チェンジが行われ、橋本がタム、永田がカホンを担当してのおとぎ話調の「猫と竜」が、グッとこれまでのムードをカーム・ダウンさせる。が、朴訥とした時間は一瞬。今年もタワーレコードのジャズ・チャートに2作の新作がTOP10入りしたことに感謝を述べつつ、"この時期、お歳暮にCDどうでしょう? 個人事業主の方は経費で落としてください"という強引すぎる曲紹介で、怒濤の圧で迫る「ケイヒデオトセ」に突入した。ピアノの低音での厚いコード感をはじめ、すべてがヘヴィ且つラウド。音源ではSKINDREDのBenji Webbeが担当しているデス声をADAM atとSYUが発し、"ケイヒデオトセ!"と叫ぶことはできないフロアからは無数の拳が上がる。エクストリームな体感からサスペンスフルなピアノ・フレーズで繋いだのは「零」。クラシカルな旋律ながらクランチなコードで走り続け、スカ・ビートの合間にベースやドラム・ソロも挟んでいく。さらにピアノの高速フレーズを弾きながら"踊れー! リキッドルーム! 今日は踊る日だろー!"と叫ぶADAM at。ステージ上もフロアもどこまでタフなんだ......。

そのあと、メンバー紹介の中でSYUが江頭2:50のモノマネで"おい、マジか!?"とネタで笑いを発生させた流れで「Oi-Majika」。さらにのぼりも登場させてのスカ・ビートの「五右衛門」。日本的なメロディを盛り込んだ軽快に踊れるこの曲では、ヲタ芸も真っ青なノリすら楽しく、ステージにエネルギーを送るようなタフさも。ここまで18曲、ほぼノンストップで走ってきたバンドとファン双方を讃えるような拍手を聞き、ADAM atは"あんたらの明るい顔が見られて良かった。いろいろあったけど、今年のひと文字って言われたら「光」だな"と、ニュー・アルバムのタイトル・チューンである「Daylight」を本編ラストに披露。心地よい風を感じるようなアンサンブルが、様々な困難をかいくぐり、1本でも多くライヴを実現しようと前を向いてきた2021年の終わりに相応しかった。

アンコールも早々に登場したADAM atは、12月24日で10周年を迎えることを告げ拍手を浴びるも、すぐ30年以上のバンド歴を誇るフラワーカンパニーズやニューロティカ、怒髪天の名前を挙げ、彼らにしたら10年なんて"ふーん"だろうと言う。バンドマンへのリスペクトを感じた瞬間だ。恐るべきことにアンコールも5曲。"来年もNHKプロ野球ダイジェストに使ってもらえたらいいなぁ"と言いながら、再びMAKOTOも参加して「六三四」などを演奏し、ポップネスとカオスが混在する濃厚なライヴが終了した。言葉というメッセージを介さないぶん、直感で踊り始めたらもう止まらないし、笑い合えば誰も疎外しない。ADAM atをインストやジャズで形容するのはもはや無意味。いや、見事だった。


[Setlist]
1. カルラテン
2. ヤマネコア
3. Your 7 Story
4. ジャズ・ザ・リッパー
5. URAMICHI瓢箪いろは坂
6. Install
7. Karakusa Trick
8. Oroppas
9. 幻想陰翳ディストピア
10. サタデーナイトフルット
11. Dancer In The Lake
12. Silent Hill
13. 猫と竜
14. ケイヒデオトセ
15. 零
16. Echo Night
17. Oi-Majika
18. 五右衛門
19. Daylight
En1. Refresh
En2. Spring Field
En3. 六三四
En4. MONOLITH
En5. ToT

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