INTERVIEW
BUCKCHERRY
2025.06.12UPDATE
2025年06月号掲載
Member:Josh Todd(Vo)
Interviewer::山本 真由 Translator:安江 幸子
LAのハード・ロック番長、BUCKCHERRYの11作目となるアルバム『Roar Like Thunder』が完成した。イケイケな見た目と楽曲とは裏腹に、長年硬派でストイックなクリエイティヴを継続している彼等。今作も、BUCKCHERRY節満載の痛快なピュア・ロックンロールを鳴らし、そのエネルギッシュなサウンドの健在ぶりを見せつけてくれた。インタビューでは、フロントマンのJosh Toddに新作や音楽に関わる姿勢等について詳しく語ってもらった。
-約2年ぶりのフル・アルバム 『Roar Like Thunder』の完成、おめでとうございます。前作『Vol. 10』(2023年リリース)は、その名の通り10作目という節目の作品でもありましたが、反響も大きかったのではないでしょうか。前作からの約2年間を振り返ってみて、いかがですか?
君も言ってくれた通り、あれは節目の作品だったよ。俺たちは全部のアルバムにものすごい努力を注ぎ込んでいるけど、やっぱり10枚目ということもあって、大きな出来事だったね。そして今回もまた、いつものように前進していくだけさ。今回も全力を注いだよ。スタジオに入る前に考えたのは、"徹頭徹尾ロックしているものを作りたい"ということだった。バラードは入れないことにしたんだ。カバー・ソングもね。その結果がこれということだ。とても気に入っているよ。
-"100パーセントBUCKCHERRY!"という感じのストレートなロックですよね。勢いがあってとても気に入っています。
ありがとう!
-以前のインタビュー(※2023年6月号掲載)では、アルバムをリリースしてツアーをしながらもう次のアルバムに取り掛かるというような、BUCKCHERRYの制作スタイルを教えていただきましたが、今作もリリース・スパンを考えると、従来通りのスケジュールで制作されたということでしょうか?
まさにそんな感じだね。しかも自然な流れでそうなるんだ。計画してそうなったわけじゃなくてね。俺はクリエイティヴであり続けるのが好きなんだ。書く必要がないときも曲を書いていたい。Stevie(D./Gt)と俺は、『Roar Like Thunder』を作ってからすでに5曲くらい書いているんだ。そんな感じでコンスタントに曲を書いているから、普段あまりアルバムのことは考えていないんだよね。ある程度時が経って、"そろそろあの「箱」を開けてアルバムを作ってみようか"という気になってから考えるんだ。そうするといいスタートを切ることができる。
-ということは、2~3年くらいのスパンでアルバムを作るのは自分で必須にしているわけではなく、DNAに組み込まれているような感じでやっているのでしょうか。
そうだね。だからこの生業に入り込んでいったようなものだよ。たくさんアルバムを作りたいしね。音楽のキャリアには素晴らしい側面がたくさんあるんだ。そのうちの1つが何もないところから何かを作ること。すごくエキサイティングだし、今日までずっと楽しんできている。何かに長けたいと思ったら、上達するにはやり続けていくしかないんだ。だから絶えずソングライティングという筋肉を鍛えているよ。
-あなたにとって曲を書くのはワークアウトのようなものなんでしょうか。
ははは、ある意味ね(笑)! 同時に心と魂のセラピーでもあるんだ。
-1999年のデビュー・アルバム(『Buckcherry』)以来そのスパンでリリースし続けていますが、それが負担になったり、つらいと思ったりしたことはありますか? "また名盤を作らないといけない"というようなプレッシャーですとか。
うーん、あまりそういうふうには考えないかな(照笑)。今を精一杯生きるのが好きだね。いつもシンガーとして成長途上だと思っているしね。ソングライターとしても一人の人間としても。曲を書くのも上手くなっていると自分では思っているよ。あまり振り返らないというか、常に今自分のいるところに集中して、現時点で最高の自分になって最高のアルバムを作ろうとしているんだ。
-なるほど。ある意味、前回より良くなる必要はないのかもしれませんが、結果的にそうなっているんですね。
まぁ、そのあたりはファンが決めることで俺の裁量ではないけどね。でも俺はこの作品を気に入っているし、情熱を持っている。そういう作品を出す。そしてそれをアルバムと呼ぶ。そういうことさ。それからツアーに出るんだ。
-前の作品と同じように、満足できるものができたら出すと。
そうだね。ゴールはいつだって、最初から最後までいい曲が詰まったものにすることだよ。しっくり来なかったり、自分たちのスタンダードに合わなかったりするものがあったら、そう思わなくなるまで作るのをやめないんだ。
-そのパワーというか、モチベーションはどこから来るのでしょうか?
(※即答で)情熱! これは俺にとって夢の仕事なんだ。だから大変なことではないし、"labor of love(金目当てではなく好きでしている仕事)"なんだよ。何年も何年もアルバムを作らずにやっていけるバンドがいるけど、俺には理解できないね。メンバーの気が合わないとかそういう理由かもしれないけど、俺は楽しみながらアルバムを作っているんだ。
-そうやってコンスタントに素晴らしい作品を出してくださってありがとうございます。新作『Roar Like Thunder』については、特にコンセプトは設けていないそうですが、制作するにあたっての大まかなイメージはあったのでしょうか?
"俺が書き得る最高の曲を書きたい"という感じだったね。俺は歌詞を全部書くし、メロディも多くを書いているから、それができるかぎりいいものになるようにした。Marti Frederiksen(プロデューサー)とStevieとのコラボを心から楽しんでいるよ。すごく楽しいし、たくさんのことを学ぶことができる。俺だけじゃない。3人ともプロセスの中でたくさんのことを学んでいるんだ。毎回そのひとときが楽しみだし、3人で同じ部屋に入っていろいろやるのが楽しいんだ。
-どんどん曲を作って、アルバムに入れるべきものを選んでいった感じなのでしょうか。曲はたくさん書きましたか。
それはね、こういうことだよ。俺は"BUCKCHERRYの何がスペシャルなのか"を熟知できるくらいに、BUCKCHERRYのアルバムを作ってきた。だからBUCKCHERRYらしくない音、BUCKCHERRYらしくない感覚というのが肌で分かっている。BUCKCHERRYの曲の多くは俺の魂から出てきたものなんだ。俺が全部歌詞を書いているし、内容の多くは俺の人生に関するものだからね。俺のパーソナルな人生、世界観。それをいかにまとめるかということだね。
StevieやMartiは何がBUCKCHERRYをスペシャルにするものなのかを分かってくれていて、寄り添ってくれる。特にStevieはね。Steveは2005年くらいからこのバンドにいるし、19の頃からの知り合いということもあって、コラボはものすごく楽しいし、BUCKCHERRYの範疇に入らない曲だって作っているよ。曲を一緒に書くこと自体が楽しいからね。
-そうやってBUCKCHERRYらしい曲、あまりそうでない曲もどんどん書いていって、その中からアルバムに入れるべきものを選んだのでしょうか。
そうだね。Stevieとはファンク・ソングも書けばダンス・ソングも書くんだ。そうしているうちに"なぁ、これすごくいいからロック・ソングにしてみようぜ"なんて話になる。"コード進行を付けてギターを入れたらどうなるかな"なんて言うと、あいつがすごいものを作ってくれて、一気にBUCKCHERRYらしい曲になるんだ。そういうことが起こる。またあるときには......ほら、Stevieも俺もいろんなタイプの音楽が好きだからさ。ロックだけじゃないんだ。だから、自分たちがハッピーになる曲を作っていくだけだよ。
-今作では、先程名前が出ましたが、Marti Frederiksenをプロデューサーとして迎えていますね。彼とは20年近く前に曲(2005年リリースの3rdアルバム『15』収録曲「Crazy Bitch」)を一緒に書いて以来、4thアルバム『Black Butterfly』(2008年リリース)でタッグを組んで、今回も含めて何度も一緒に作っていますね。
ああ(笑)。
-今作に彼を起用したのも自然な流れだったのでしょうか。
そう、君も言っていたように、最初にコラボしたのは『15』の頃に遡るんだ。その後『Black Butterfly』を一緒に作った。その当時のメンバーとは、自由にいいソングライティングをするということができなかったんだ。その問題が解決してからは......まぁそのあたりは詳しく話すつもりはないけど、楽になった。何がBUCKCHERRYにとってベストなのを考えるとき、頭を悩ませる必要がなくなったんだ。
-ここしばらくはメンバーも固定化されていますしね。
そう、もう長い間同じメンツだよ。Stevieは最古参のギタリストだし、Kelly(LeMieux/Ba)ももう10年くらいになるのかな。Francis(Ruiz/Dr)ももう5年くらいいるし、Billy(Rowe/Gt)も5年くらいかな?
-同じようにMartiに参加してもらうのも自然の流れなのですね。今回もソングライティングを一緒に?
ああ。アルバムを作るときは、いつもMartiを"6人目のメンバー"と呼んでいるんだ(笑)。それくらい楽な流れだよ。