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INTERVIEW

BUCKCHERRY

2023.05.26UPDATE

2023年06月号掲載

BUCKCHERRY

Member:Josh Todd(Vo)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

コロナ禍の真っ只中で制作された『Hellbound』から2年、BUCKCHERRYが通算10枚目となる最新作、その名も『Vol. 10』をリリース。時代の閉塞感を打ち破るハードでグラマラスなロックンロールや泣きのバラードなど、徹頭徹尾"BUCKCHERRY節"が楽しめる、記念すべき10枚目に相応しい痛快なアルバムとなった。バンドの顔でもあるフロントマン、Josh Toddが『Vol. 10』についてや自身のソングライティングの在り方についてなど、大いに語る最新のインタビューをお届けしよう。


『Hellbound』は俺たち史上最高傑作のひとつに入ると思ってはいるけど 楽しいことをこよなく愛するロックンロールに戻りたかったからね


-記念すべき10枚目のアルバム『Vol. 10』がいよいよ発売されますね。アルバムを作り終えた今の率直な気持ちをお聞かせください。

とてもいい気分だよ。10作目のアルバムというのは個人的にかなりの達成感がある。バンド全体としてもすごく力を入れたアルバムだから、早く聴いてもらいたくて待ち切れないよ。リリースは俺たちにとって"ケーキのアイシング"みたいな感じなんだ。できあがってからもう何ヶ月か経っているからね。

-そうだったんですね。結構早い時期に完成したのでしょうか。

完成したのは、去年の10月くらいだったかな。

-それもあって、このアルバムのツアーを早めに始めたのでしょうか。SKID ROWとツアー("THE GANG'S ALL HERE")をしていましたよね。

ああ。新作を早めに認識してもらうためにそのプロセスを前倒しにしたんだ。シングルの「Good Time」もドロップしてね。すごく楽しかったよ。

-ショーの中でもすでに「Good Time」をプレイしているのですね。

ああ。

-ファンの反応はいかがでしょうか。

すごくいいよ! みんな、昔から聴いている曲みたいにシンガロングしてくれるんだ。クールなことだよ。

-歌詞も覚えやすいですし、自然に身体が動き出しますよね。

そう! それこそが"素晴らしいロックンロール"だと俺は思っているんだ。昔もそうだったよね(※にっこりと笑う)。

-前作『Hellbound』(2021年リリース)は世界的なパンデミックの直後に制作されたアルバムでした。ロックダウン中のことは前回のインタビュー(※2021年6月号掲載)でも話していただきましたが、音楽業界が活況を取り戻しつつあるなかで、そういった環境の変化は『Vol. 10』の制作に影響を与えましたか。

俺たちにとっては本当に良かったと思うね。『Hellbound』の頃アメリカはカオスの真っ只中でさ。コロナ禍だけじゃなくて(大統領)選挙もあったし、他の問題に関しても抗議行動がいろいろ起こっていたこともあって、変なエネルギーがたくさん渦巻いていたんだよね。そういうものが「No More Lies」や「Hellbound」なんかに織り交ぜられていったと思う。今回は"楽しく過ごそう"ということに焦点を戻したんだ。『Hellbound』は俺たち史上最高傑作のひとつに入ると思ってはいるけど、楽しいことをこよなく愛するロックンロールに戻りたかったからね。俺たちがBUCKCHERRYを愛する理由、そしてBUCKCHERRYが聴いて育ってきたお気に入りのアルバムたちを愛する理由を取り戻したかったんだ。

-『Hellbound』という最高傑作のひとつを作ったあとだからこそ、今回のようにハッピーなロックンロール・アルバムを作ることができたのかもしれませんね。

そうだね! と言ってもオール・ハッピーというわけではなくて、例えば「Pain」みたいにディープなところを突いたものもあるけどね。このアルバムには間違いなく緩急のダイナミクスがある。「Good Time」もあれば「Let's Get Wild」もあるし、「This And That」は楽しい部類に入るね。踊り出したくなるグルーヴやテンポがあるんだ。

-『Vol. 10』のレコーディング・プロセスについてお聞きします。アルバムの制作はいつ頃からスタートされたのでしょうか。先ほど"10月には終わっていた"と聞いてちょっとびっくりしたのですが......たしか前作のツアーは238公演ありましたよね? 12月までツアーが続いて、オーストラリアにまで行っています。いったいどうやって時間を捻出したんでしょうか。あなたの勤勉ぶりはもちろん知っていますが......。スタートはいつ頃だったのでしょう。

俺たちは毎回、ツアーが終わるのよりずっと前に次のアルバムのことを考え始めるんだ。今回の場合は『Hellbound』で使わなかった曲がたくさんあった。あのアルバムのときはものすごくたくさん曲を書いたからね。それと、Stevie(D./Gt)と俺はツアーがひと区切りついて地元に帰るたびに少しずつ曲を書いていたんだ。ツアーの合間に2~3週間くらいオフがあることがあったから、その時間を使って数曲書いてはレコーディングしていた。デモ段階のラフなやつをね。そのあとStevieと俺とでナッシュヴィルに行って、Marti(Frederiksen/プロデューサー)とソングライティング・セッションをやったんだ。9日間、ぶっ通しで曲を書いていたよ。9日間で9曲書き上げたんだ。

-すごいですね。

いいかい、Martiと俺とStevieが集まると、俺たちは完全に集中してベストを尽くすんだ。Martiも俺も、他では経験したことのない魔法のような独特のエネルギーが生まれるんだよね。『Hellbound』のときも同じだった。ともあれ、俺たちはMartiのところに曲を書きに行ったんだ。3人で書いた曲はほぼすべてアルバムに収録されたよ。『Hellbound』のセッションで書いた曲はほんの少ししか使わなかったね。それらを練り直して作ったのが「This And That」と「Turn It On」だったんだ。

-その2曲は『Hellbound』のとき書いたものを作り直して今の新しい形にしたのですね。

「Turn It On」と「This And That」はStevieと俺が『Hellbound』用に書いたけど、そのときはアルバムに入らなかったんだ。

-前回のインタビューでもMartiと一気に何曲も書き上げたと言っていたような。ということはクリエイティヴな意味での勢いも前回と同じような感じだったのでしょうか。

Martiと俺とStevieは曲を書くスピードがものすごく速いんだ。『Hellbound』のあと、俺はMartiにこう言った。"2週間でアルバムを1枚、最初から最後まで作り終えたい"ってね。"2週間で10曲入りのアルバムを、初めから終わりまで休み一切なしで作りたい。オフ日はなしだ"と言ったら彼は"ノー、休みの日はないとね。無理だよ"なんて言うから"いや、俺たちならできる"と言ってやったよ。そこから時は流れて『Vol. 10』の(ソング)ライティング・セッションだ。俺たちは10日間ノンストップで作業した。そうしたらアルバムのほとんどがその10日間の中でできたんだ。そうしたら彼が俺にこう言っていたよ。"あのさ、俺たちならできるんだな"ってね。"そう言っただろう?"と返してやった。"できないわけがないと思っていた"ってね! でも相当集中的だから、たぶんあまりいいアイディアではないんだろうな。10日目にはみんなかなり疲れていたしね。さすがに少しだけ休憩を入れたよ(笑)。

-(笑)それでも、エネルギー全開でこれらのエネルギッシュな曲を作ることができたというわけですね。

そうなんだよ。1日の流れを説明しよう。朝起きるだろう? 12時にスタジオに入って、2時間歌う。丸1曲を2時間歌い続けるんだ。それから俺が出ていくと、今度はStevieとMartiが入って新しい曲を作る。このときは曲だけだ。午後5時くらいにはその曲が俺のところに送られてくるから、それに対して俺がひと晩中歌詞を書く。それを翌日レコーディングするんだ。来る日も来る日もそんな感じだった。

-そんな生活をしていたらあまり睡眠時間が取れなかったのでは。

いや、書いて、歌い終えたら寝るだけだよ。

-睡眠も集中的なのかも(笑)。

ああ。寝る頃には疲れ切っているよ(苦笑)。ヘトヘトで、8時間ぶっ通しで寝るんだ。

-『Hellbound』ではMartiをプロデューサーとして起用すると決める前の段階で、すでにStevieとデモは作り始めていたとおっしゃっていましたが、本作はアルバム制作が決まった時点でMartiも全面的に参加したのでしょうか。

今回も大いに関与していたね。アルバムの大半で作曲に関わったし。彼は6人目のバンド・メンバーみたいなものなんだ。曲を書くときにいいケミストリーがあるし、本当に才能のある男だよ。シンガーやメロディの扱いにものすごく長けているし、本人も熟達したミュージシャンなんだ。歌もうまいしね。そういうものが相まって、彼と一緒に仕事するのはすごく楽しい。それだけじゃなくて、彼は俺のいいところを引き出してくれるんだ。ほら、誰にだってソングライティングの強みと弱みがあるだろう? 全員両方あるんだ。俺は自分の得意なものを持ってきて、彼も自分の得意なものを持ってくる。Stevieもね。それぞれがお互いの強みを引き立てて、最高の状態になる手伝いをするんだ。優勝するのはいつもベストなアイディア、曲、メロディ、歌詞......ベストなものがいつも勝つ。そういうメンタリティにはそれまでなっていなかったから、すごくいいことだよ。

-あなたの一番いいものを引き出してくれると同時に、あなたに"弱み"なんてものがあるとすれば、それを補完してくれるような人だと。

彼はあらゆるタイプのアーティストといつも曲を書いているから、俺が考えつかないような案を出してくれることがあるんだ。俺が歌っていると、"ヘイ、Josh。このラインはこうやって歌ってみないか?"と言って、音や単語を別の方向へ向けてくれる。あるいは"このヴァースは語数が多すぎるから、何語か取り出したほうがいい"なんて言うから、"なんだって?(※いぶかしげな顔)"と返すと、"そう、数語削るんだ"と。例えば「Feels Like Love」がそうだったね。あ、もしかしたら違う曲だったかもしれないけど。そうだ、『Hellbound』のときは「No More Lies」がそうだったね。俺のメロディ・ラインに対するアプローチは、実際にレコーディングされたやつよりもとはうんと忙しかったんだ。彼は俺に数語削らせることによってより良いフロウを出そうとした。実際そうしてみて初めて、"あぁ......たしかにこっちのほうがいい感じだな"と思ったよ。そういう小さな工夫を、Martiとは長年仕事していくなかでいくつもやってきたんだ。彼が提案してくれた方向性が俺の考えとは違うものだったら、俺は彼を信じてそっちの路線を行ってみる。たいていはそっちが正しいからね。それが彼の嫌いなところなんだけど(笑)、通常は彼の方向性が合っているんだ。

-(笑)まぁでも彼もあなたを信頼していて、あなたに新しい要素を取り入れる柔軟性があるとわかっているからこそ、提案するのだと思いますよ。

そうだね(※にっこりと笑う)。

-アルバム・タイトルも実にシンプルですね。やはりバンドの歴史におけるひとつの節目となる作品ということで、思い入れがあったのでしょうか。

そうだね、Martiと再会したときにそう言ったんだ。彼と再会して『Hellbound』を作って、彼と一緒に仕事するのはなんて楽しいんだろうと思ったよ。彼なしではもう1枚だって作りたくないね。とにかく作りたくない。と本人にも言ったんだ。彼がアルバムを作り続ける限り、俺たちも作り続けるよ。