FEATURE
BUCKCHERRY
2013.10.10UPDATE
2013年10月号掲載
Writer 藤崎 実
カリフォルニア産ハード・ロックのカリスマ・バンド、BUCKCHERRY。今年2月にリリースされた“7つの大罪”という壮大なコンセプトを扱った前作『Confessions』も好評な彼等が、長き活動の賜物とも言える珠玉の名曲群を集めた初のベスト・アルバムをリリースする。
GUNS N' ROSES、MOTLEY CRUEといった煌びやかで妖しく、キャッチーなメロディが魅力的な“LAメタル”からの流れを汲むパーティー・ロックやパンク・ロックといった音楽性が根底にあるBUCKCHERRYだが、THE ROLLING STONES、AEROSMITH、AC/DCといったロック史に残るバンドの歴史をも内包している硬派な面を持つハード・ロック・バンドだと言うことも前提として知っておいてほしい。
1995年、ロサンゼルスでJosh Todd(Vo)とKeith Nelson(Gt)が運命的な出会いを果たしBUCKCHERRYが誕生した。若さゆえ多少の未熟さは残りつつも、既に1stアルバム『Buckcherry』の時点で世界観、サウンド共に完成されていたという事実は、如何に彼等が突出したバンドだったかということを物語っている。名曲「Lit Up」から幕を開けるオープニングからの鮮烈な流れは、数あるロックの名盤の中でもトップ・レベルの爆発力を誇っている。今回のベスト・アルバムにもオープニング曲として「Lit Up」が収録されているのは粋な演出である。
ライヴ・パフォーマンスも好評だったBUCKCHERRYは、その勢いを保ったまま勝負作である2ndアルバム『Time Bomb』を2001年リリース。かなりの良作であったのだが反響は少なかった。その影響もあったのか徐々に彼等の活動に暗雲が立ち込めていく。相次ぐメンバーの脱退が続き、遂に2002年にはJoshまでもがバンドを脱退。1人残されたKeithはBUCKCHERRYの解散という苦汁の決断を下すのだった。
2005年になるとJoshとKeithの2人が核となり、新たなメンバーを加えた新生BUCKCHERRYが誕生する。しかし、本当の意味での復活への道は決して平坦なものではなかった。3rdアルバム『15』は、本国ではレーベルが決まらずインディーズ作品としてリリースするなど苦境に立たされる。しかし、彼等は自信を持って制作した楽曲を武器に、地道な宣伝活動やライヴを重ねることでバンドとしてのレベル・アップをしつつ着実にファンを増やし続けていった。
2006年、『15』からシングル・カットされた「Sorry」が全米チャート9位にまで登りつめる大ヒット。その後の活躍は正に快進撃と言っても過言ではない。リリースされる作品は世界中で売れ続け、BUCKCHERRYはシーンの第一線へと返り咲き、再びハード・ロック・シーンを賑わす存在となる。経験豊富なメンバーがバンドという集合体である自身を意識し、最善の結論を選び出せるしっかりとした目を持っているからこそ、苦難を乗り越えて成功を掴むことが出来たのであろう。このベスト・アルバムは言うなれば、ロック界の荒波をくぐり抜け鍛えられてきたBUCKCHERRYの歴史の縮図である。
“SEX, DRUG, ROCK'N ROLL”を体言している本物のハード・ロックが聴きたいのならば、BUCKCHERRYのサウンドを手にすればいい。最高にエキサイティングな時間が過ごせることを約束しよう。
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