FEATURE
BUCKCHERRY
2013.03.14UPDATE
2013年03月号掲載
Writer KAORU
2008年のLOUD PARK来日時に、ギターのKeith Nelsonにインタビューをさせてもらった。“ロックはセックスできないけど、ロックンロールはセックスできる”という名言が飛び出し、目から鱗が落ちたものだ。そう、BUCKCHERRYの奏でるロックンロールは、一貫してセクシーでグラマラス。タトゥーだらけのシェイプされたボディで腰を振り、満員のフロアに“Cocaine!!!”と大声で叫ばせる。キケンと隣り合わせにある、徹底したロックンロールの美学を追求しているバンドなのだ。
BUCKCHERRYの歴史は、今から18年前の1995年から始まった。JoshとKeithはタトゥー・アーティストを通じて知り合い、ロサンゼルスで活動を始めた。1997年にリリースされた1stアルバム『Buckcherry』には、不滅のアンセム「Lit Up」が収録されており、一躍その名が知れ渡ることとなる。2000年にはグラミー賞にもノミネートされた。しかし2ndアルバム『Time Bomb』がリリースされた翌年の2002年、メンバーの脱退が相次ぎ、残されたKeithは解散の決定を余儀なくされる。Joshはソロ活動もしていたが、2005年にはBUCKCHERRYの再結成が発表された。2006年の3rdアルバム『15』をオールタイム・ベストに選ぶリスナーは多く、よくありがちな、バンドの再結成後のがっかり感なんて、彼らには無縁なのだということを世に知らしめた。非常によく出来たアルバムで、なんと300万枚のセールスを記録。そして2008年に『Black Butterfly』、2010年には『All Night Long』と、アルバムをコンスタントにリリース。バンドの個性は、今や他の追随を一切許さない確固たるものとなった。
そして2013年。遂にニュー・アルバム『Confessions』がリリースされた。既に聴いたリスナーも多いだろうが、皆さんはどう感じただろうか?いやはや、随分と冒険したなと思ったのではないだろうか。今作はJoshの半生がテーマとなっており、それがキリスト教で言うところの“七つの大罪”という壮大なテーマへと結びついたという。Joshはこのテーマで映画の脚本も手掛けたそうだが、確かに1曲1曲が、映画の1シーンを見ているかのような気持ちにさせられるものばかりだ。アルバム全体を通して語られるストーリーに重点が置かれており、音で情景を表現するそれぞれの楽器のメロディやアレンジ、どれをとっても秀逸だ。1曲ごとのファースト・インプレッションという意味では、これまでのアルバムに比べるとそこまで高いものではないのだが、何度も聴いていく内にアルバムの世界観にどんどん引きこまれていく。喜怒哀楽の“哀”の感情が印象的に描かれており、Joshはレコーディング時に感情移入をし過ぎて、一時歌録りを中止する場面もあったそうだ。これだけ素のJoshを曝け出した作品は初めてなのだから、計り知れないほどの苦悩を経て制作されたのだろう。ド頭を飾るBUCKCHERRY印のアッパーなロックンロール・ナンバー「Gluttony」を始め、意味深な歌詞の「Seven Ways To Due」、ドラマチック過ぎる「Sloth」、そしてよく練られたメロディが頭に残る「Lust」など、従来のBUCKCHERRYファンだけでなく、全てのロック・ファンに聴いて欲しい良曲が揃っている。ストーリー・テラーとしてのBUCKCHERRY。大きな新基軸を打ち出した意欲的なアルバムだ。
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