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INTERVIEW

BUCKCHERRY

2023.05.26UPDATE

2023年06月号掲載

BUCKCHERRY

Member:Josh Todd(Vo)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

歌詞を書く身としては、ちゃんと自分の感情を"感じる"ことが大事だと思っているんだ いい感情もあれば悪い感情もあるけど、全部感じられることが大事


-さっき話に出てきた「Pain」がアルバムの締めくくりでもおかしくはないと感じました。先ほど曲順の話も出てきましたが、「Pain」が最後の曲になった可能性はありましたか。実際はもう1曲サプライズがあって、Bryan Adamsの名曲「Summer Of 69」のカバーが収録されています。この曲を選んだ理由などがあれば教えてください。

「Summer Of 69」はボーナス・ソングみたいな感じなんだ。ラストは間違いなく「Pain」だね。

-えっ、そうなんですね。ということは、締めくくりはあくまでも「Pain」で。

そう。「Summer Of 69」は"11曲目"ではあるけど、投入した形なんだよね。スタジオでパパッと作った曲だから。よくライヴで楽しむためにやっている曲なんだ。マネージャーのLarry Mazerが"これは素晴らしいね。いつかぜひレコーディングしてくれ"と言っていて、"OK"と言ったらことあるごとにせがまれて、ようやく最後にレコーディングしたんだよ。そうしたらみんな気に入った。まるでBUCKCHERRYのオリジナルみたいに聞こえるよね。それで最後につけ足すように収録したんだ。

-ということはライヴで前からやっていた曲だったんですね。

ああ、時々演奏しているよ。

-もしかしてファンのお気に入りのカバー曲でもあって、10作目の記念に入れたかったというのもあったのでしょうか。

いや、あくまでマネージャーのためだったね。彼が欲しがっていたから"OK"という感じで(笑)。

-日頃の感謝を込めて、みたいな。

そうだね。それに否定しようがないくらい素晴らしい曲だし、俺たちも大好きなんだ。BUCKCHERRYを大好きなみんなにも、Bryan Adamsが大好きな人たちにも楽しい曲だよ。

-Bryan AdamsのファンはきっとBUCKCHERRYのファンにもなるでしょうね。

そうなることを願おう(笑)! と言ってもちょっとテンポがオリジナルより速いから、気に入ってくれないかもしれないけど(苦笑)。

-オリジナルの雰囲気を残しながらもBUCKCHERRYのフレーヴァーが入っていていい塩梅だと思います。

そう、それもあって自分たちでも気に入っているんだ。

-ちなみにあの曲を初めて聞いたのは中学生とかそのくらい?

そうだね。たぶん自分の家で聴いたんじゃないかな。母が家の掃除をするときにいつもレコードをかけていてね。仕事じゃなくて家にいるときはいつもレコードをかけて掃除をしていたんだ。それでEAGLES、Willie Nelson、Rod Stewartなんかを初めて聴いた。姉とそれを聴いてプレイしていたんだ。

-そのひとつが「Summer Of 69'」だったんですね。

ああ、そこが始まりだったのは確かだよ。

-お母様の掃除が音楽の英才教育だったとは(笑)。

もちろん!

-あなたたちは以前にも『Warpaint』(2019年リリースの8thアルバム)でNINE INCH NAILSの「Head Like a Hole」をカバーしていましたね。あのときはボーナス・トラックとしてではなくアルバムの本体に入っていました。ということはあのときと今回の場合、カバーの意図が違ったということでしょうか。

そうだね。「Head Like A Hole」はアルバムのメインとして考えていたけど、今回はおまけみたいなものだったから。

-おまけとはいえ、ハッピーな形でアルバムが締めくくられるのはいいですね。

そうだね、しかもみんなが馴染みのある曲だし。

-難しい質問かもしれませんが、現時点で特にお気に入りのナンバーがあれば教えてください。シングルを決めるのも大変でしょうね。

難しいよ! だからレーベルともよく相談して、彼らの意見に耳を傾けるようにしているんだ。みんなもそれぞれ違うシングル候補のお気に入りリストがあるみたいでね(笑)。だからシングルを決めるのも大変だったけど、「Good Time」は全員一致でシングルになった。それから最近「Shine Your Light」のビデオを撮ったんだ。そのあとはまだ決まっていないけど、たぶん「Feels Like Love」か「Pain」を撮ることになると思う。選ぶのが大変になると思うね。ただ、だいぶ先の話になるけど。

-特にパーソナルな部分を注いだ曲はありますか。

「Pain」。これは間違いないね。とてもパーソナルな曲だよ。

-そうだったんですね。この曲を書くことによってその"苦しみ"を乗り越えるか、なんらかのカタルシスがあったなら良いのですが。

セラピーになったのは間違いないね。あの曲を書いたとき俺はすごくダークな心境にいたんだ。でもそれはいいことなんだよね。歌詞を書く身としては、ちゃんと自分の感情を"感じる"ことが大事だと思っているんだ。いい感情もあれば悪い感情もあるけど、全部感じられることが大事なんだ。感情というのは自分の心の中で起こっているものが正直に吐露されたものだからね。いざ自分が何度も繰り返して歌うことになったら、頭の中にあるその感情にそのたびにアクセスすることができるんだ。あのとき自分はどんな心境だったのか。それができることによって、よりパワフルなパフォーマンスをすることができる。俺はいつもそれを心掛けているんだ。世の中には自分で歌詞を書かないシンガーもいることは知っている。でもそれは俺にとってすごく異様なことなんだよね。自分が人の歌詞を歌っていることは想像できない。ちゃんと自分で書いて、その感情にコネクトできる状態でいたいんだ。感情の記憶にアクセスできるようにね。「Lit Up」(1999年リリースの1stアルバム『Buckcherry』収録曲)や「Sorry」、「Crazy Bitch」(2005年リリースの3rdアルバム『15』収録曲)のときも同じようにアクセスしているよ。

-ご自分のパーソナルでダークな面と向き合うときも、"これで心から歌詞を歌うことができる"とポジティヴな態度で臨んでいるというのが、すごいことだと思います。

ありがとう! それは子供時代にインディペンデントのアルバムをたくさん聴いたことから学んだものだと思うんだ。メジャー・レーベルに属していないやつらは思いの丈を歌にしていた。個人的にいろいろ経験していたことを歌に込めていたんだ。だからそういうバンドに出会えたことを神に感謝している。俺自身もガキの頃にいろいろあったから、そういう曲を聴いて強いインスピレーションを貰っていたんだ。自分自身もそうでありたいとずっと思ってきたよ。何があっても、自分の心の中にあるすべてに対して真実であるアートを作ろうってね。それを誰も気に入らなくてもそれでいい。純粋なものでさえあればね。

-実際はたくさんの人にあなたの音楽は愛されていますね。

(※両手を合わせて)本当にありがたいよ!

-そのインディーズの人々があなたのことを救ってくれたように、あなたにもファンの方が"この曲に救われました"と言ってくることも多いのでは。

そうなんだよ。

-あるいは楽しい時間に華を添えてくれたですとか。

そうだね。その反応はすごくシンプルなこともある。俺が歌を歌って誰かが(※酔いしれる顔真似)踊りながら歌詞を歌ってくれる。大声で歌詞を叫んでいる。そういうのを見ると感じるし、わかるんだ。きっとその人たちは俺たちの曲を何度も繰り返し聴いてくれて、その曲に情熱を傾けてくれているんだってね。そういうふうにしたくなるほど彼らの琴線に触れることができたんだろうと思えるよ。俺たちにとってはそれさえあれば十分なんだ。

-報われる気分にもなるでしょうね。

なるよ。本当にクールなことなんだ。その曲がいったいどんなことがきっかけで生まれたのかを考えると、"うわぁ、俺たちは何もないところからこの観客の反応を生み出していったんだ"と思うことができる。うちから何千マイルも離れたところで、この人が俺たちの曲を自分のものにしてくれているんだ! と考えると本当に嬉しくなるよ。とても美しいことだと思う。

-今回はBryan Adamsでしたが、他人の曲を歌うときはあなたがその曲を自分のものにして歌うのですね。

そう、自分のものにするんだ。特に歌詞は本当に繋がりを感じるよ。あの曲の歌詞は昔から大好きでね。純粋だったときの自分を思い出すんだ。"大人の責任"なんて考えなくて良かった頃をね。夏とパーティーと女の子があれば良かった。俺の場合はハイスクール時代3年間付き合っていた子がいたから、あの曲を聴くたびにその子を思い出すんだ。歌詞にバンドが出てくるけど、俺もハイスクール時代バンドをやっていたしね。本当に歌詞が自分に繋がっているんだ。自分で書けていたら良かったのにと思うくらいだよ(笑)。

-あなたの人生にそっくりなのですね。

そうなんだよ。とてもクールなことだよね。

-『Vol. 10』は前作『Hellbound』と同じメンバーで制作されていることもあって、バンド・アンサンブルもさらに強固なものとなった印象です。今のバンドの状態は非常にいいのではないですか。

"非常にいい状態"になってから久しいよ(笑)。みんなすごく仲がいいし、雰囲気もとてもいい。

-前回のインタビューではメンバー・チェンジもいろいろあったし......なんて話をしていた気がしたので。

最近はそうでもないよ。Stevieとはずっと前から一緒だし、Kelly(LeMieux/Ba)もずっと前から一緒にいる。Francis(Ruiz/Dr)も長いしね。Billyが一番新しいけど、あいつももう3年くらいいるからね。本当にいいやつだよ。純粋に素晴らしい男なんだ。ギタリストとしてだけじゃなくてね。俺たちにとって大事なのは"人"だよ。楽器がうまいことだけじゃなくてね。

-その状態をさらに強化してツアーも再開できることになって良かったです。今年も長いツアーが待ち構えていますね。去年あたりから日本でも海外のバンドやアーティストたちの来日が続々と実現していますが、BUCKCHERRYとしての来日予定についてうかがえますでしょうか。日本のファンも首を長くしてあなた達の来日を待ち望んでいます! 前回("Buckcherry Japan Tour 2019")は2019年でしたもんね、そろそろ。

そっちに行かなくちゃ!

-そのタイトなスケジュールの中にどうにか日本を盛り込んでもらえませんかね?

そう、今そうしたいと思っているところなんだ。詳しくはLarry Mazerに相談してくれるといいと思うけど、このインタビューが終わったら、今君が言ってくれたことをそのまま俺から彼に伝えるつもりだよ。

-まだ私たちのためにプレイしてくれていないアルバムが2枚もある計算ですからね。

そうなんだよ。しかも今ライヴの内容がとてもいい感じにまとまりつつあるんだ。何しろセットリストに捨て曲が一切ないからね。いい曲がありすぎて選ぶのが大変なくらいなんだ。とても楽しいよ。

-最近のライヴのセットリストを見ました。まるでベスト盤みたいな内容ですよね。

ああ(笑)。

-新曲もこの先もっと投入するでしょうし、ますます曲選びが大変になりますね。

ああ、本当に大変だよ。特に新作を引っ提げて回っているときは新曲も入れたいし、レーベルも入れたがっているし、新作を宣伝しないといけないし。だけどファンはもしかしたら1999年の1stからついてくれていて、昔の曲もたくさん聴きたいと思ってくれているかもしれない。だからなかなかチャレンジングな話なんだ。でも新曲もいいものが多いから、聴くと"おっ、いいね。また聴いてみたいな"と感じてくれると思う。すごく楽しいよ。

-みなさんが来日する頃にはきちんと歌詞を覚えておきますね。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

日本のみんな! まず、俺がみんなを心から愛していることを伝えたい。BUCKCHERRYもバンドとしてみんなを愛している。あまりにご無沙汰しすぎているから早くまたそっちに行きたいね。日本のファンのことも熱く想っているよ。できれば昔のようにたくさん回りたいね。昔は2週間ツアーがあって、その中で名古屋、広島、東京、横浜......といろいろ回っていたんだ。だからまたそうできることを祈っているよ、ただ1都市だけじゃなくてね。とにかくそっちに行けるように手を尽くしたい。みんなに会えることを楽しみにしているよ。それまでにぜひ『Vol. 10』を手に入れてほしいね。がっかりなんてさせないよ!