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INTERVIEW

BabyKingdom

2024.10.08UPDATE

2024年10月号掲載

BabyKingdom

Member:咲吾-shogo-(Vo) 志記-shiki-(Gt/Mani) もにょ-monyo-(Ba) 虎丸-toramaru-(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-たしか、もにょさんは楽器を始めた頃に、ジャズ系のライヴハウスに出入りしていたことがあられたのでしたよね。

もにょ:それ系のカフェによく行ってたんですよ。だから、メタルよりはこういう感じのほうが得意だし、この曲も楽しく弾けました。

-ギタリスト的な観点からいくと、志記さんにとって「CALAVERAS」を弾いていく際に重視されていたのはどのようなことですか。

志記:ギタリストとして大事だったのは、できるだけ存在をなくすことでしたね(笑)。というのもラテン音楽の一般的なイメージってたぶんドラム、パーカッション、ベース、ブラスの4要素に終始することが多いと思うんですよ。

-メキシコ民俗音楽の楽団形態 マリアッチにおいてはヴァイオリン、トランペット、ヴィウエラ、ギタロン、そしてギターの5パートが最低限必要だとされているそうですけれどもね。それに、いわゆるスパニッシュ・ギターの響きも、ラテンの雰囲気を醸し出すには打って付けの要素のような気がするのですけれど。

志記:ところが、スパニッシュっていうだけに、スパニッシュ・ギターは入れすぎるとメキシコじゃなくなっちゃうんです。しかも、バンドでやる場合はエレキ・ギターでジャカジャカやるわけなので、音が必要以上にガサガサして変に目立っちゃうんですよ。だから、この曲ではもっと大きめに取ったカッティングのリズムで、うまいことノリを出していくようにしました。結果的に、この「CALAVERAS」は各パート一つ一つの音を精査しながら、音数をあまり増やさない代わりに、それぞれの音を全てうまく活かすかたちにまとめられたと思いますね。

-そのような過程を経て仕上がったサウンドを背景に、この「CALAVERAS」では、"パペル・ピカドなびく死者の日謳うキャンドル"という歌詞から物語が始まっていきます。"だからこそ命彩る/それぞれのパレードを..."、"マリーゴールド照らす太陽の花弁"と、分かりやすい状況描写や情景描写が多々盛り込まれている印象です。

咲吾:メキシコのお国柄とか、"死者の日"をイメージする言葉。まずはテーマを決めた段階で、それをバーッと並べていくところからこの歌詞を書き始めましたね。一番伝えたかったのは"死者の日"そのものについてというよりも、そのお祭りを通して感じられる、"生きることの大切さ"や"生きることの喜び"のほうなんですが、いきなりそこだけ訴えるのではなく、絵本をめくっていくように物語を進めていくことを心掛けました。

-「CALAVERAS」には"魂はそこで終わりやしないさ"という一節も出てきます。この詞には、咲吾さんにとっての死生観も織り込まれていたりしますか。

咲吾:実は先日、自分の父方の祖母が亡くなりまして。この詞を書いたのが、病院へお見舞いに行ってた時期と重なってたんですよ。そして、その後にはお通夜があって、お葬式があって、人が集まってくれてる様子を見てたら......ただ悲しいだけじゃないなっていうことも感じて、みんなに"いい人生だったね"って送り出してもらえるのは、とても幸せなことだなと改めて思えたんです。旅立ち方が美しいというのは、生き方が美しかったからこそなんですよね。祖母の姿を見ていて分かった、美しく生きることの大切さをこの詞では軸にしていこう、と自分の中では途中から意識が変わっていきました。

-この詞はお祖母様に手向けられたものでもあるのですね。詞を締めくくる"Hasta mañana!(アスタマニャーナ)"の一節も素敵です。

咲吾:これは"明日またな!"っていう意味の言葉なんですけど、スペイン語って母音がはっきりしてるところが日本語と近いからなのか、空耳ワードみたいなのが結構多いらしいんですよ。まぁ、いつも英詞を歌うときは発音に気を付けるんですけどね。この詞に関しては、最後の"Hasta mañana!"のところを"アスタマニャーナ!"ってハッキリと日本語発音でいきました(笑)。

虎丸:ゲームの"バイオハザード"をやってると、スペイン語でしゃべってくるゾンビがいるんですよ。それが、たまに変な日本語に聞こえてくるときがあるんです。例えば"オッパイのペラペラソース"とか(笑)。

咲吾:僕もまさにこの詞を書いてたときに"バイオハザード"をやってて、ゾンビの言葉が"ウンコだ捨てろ!"って聞こえたことがありました(笑)。

虎丸:"腹減ったネスカフェ"っていうのもあったなー(笑)。

-面白い情報をありがとうございます(笑)。ところで、この曲には"CALAVERAS"というタイトルが付けられておりますが、この言葉を選ばれた理由も教えてください。

咲吾:メキシコではカラフルに彩られた頭蓋骨のオーナメントや、お砂糖で作った頭蓋骨のお菓子も"Calaveras"って呼ぶので、分かりやすく「CALAVERAS」にしたんです。メキシコには"Todos somos calaveras(私たちはみんな骸骨)"ってカラベラ詩というものがあって、それはカラベラ・カトリーナという姿は貴婦人なんだけど顔は髑髏の、有名な風刺画にも添えられている言葉なんですよ。どんなに着飾っても人間の中身は一緒っていうことを訴えてるわけで、当初はそれをもとにこの詞を書いていったところも結構あって。ほんとは"Todos somos calaveras"にしたかった気持ちもありつつ、さすがに長いので"CALAVERAS"にしました。

-かと思うと、もう1曲の表題曲「サルサルーサ」もメキシコを思わせる要素が満載な一方、なんとこれは有名キャラクター"モンチッチ"とのタイアップ曲でもあるそうで。

咲吾:ずっとタイアップはやりたいなと思ってたんですけど、僕等もまさか初のタイアップが"モンチッチ"になるとは全く予想できてなかったです(笑)。もちろん"モンチッチ"のことは知ってたんですけど、今年で50周年らしいんですよ。BabyKingdomはとしては、ありがたく大先輩とのコラボレーションをさせていただきました。

-メキシコ要素と"モンチッチ"を1曲にまとめあげたこの手腕はさすがですね。

咲吾:コラボレーションといったら交ざるということなので。メキシコで交ざるといったら、サルサじゃないですか。あと、"モンチッチ"はサルじゃないっていうトピックスもそこに重ねることで、"サルサルーサ"にしたんですよ。

-"モンチッチはサルじゃないと判明!?/今更知った謎の設定!"というフレーズが詞に入っているのはそのためだったのですね(笑)。

咲吾:"モンチッチ"は妖精っていう話もあるらしいですけど、公式にはあくまで"モンチッチ"は"モンチッチ"っていうことみたいなんですよね。でも、そこは逆にイジりたいなというのもあって、あえて誰が見てもサルやけど違うんやねってニュアンスを詞の中に入れました。だけど、サビの"サルーサルーサ"はイントネーション的に"サルサ・ルーサ"なんで、サルとは歌ってないんですよ。ただ、実際はサルって聞こえるかもしれないし、"モンチッチ"もサルに見えるよねっていうかたちにはなってます(笑)。

-と同時に"情熱のロハ"、"ピリ辛ベルデ"、"鮮やかクルダ"、"栄養!ハラペコハラペーニョ"、"トウモロコシのドレス=ブリトー"と、「サルサルーサ」にはメキシコ料理を思わせるフレーズも満載ですね。

咲吾:サルサの中に入ってくる香辛料だったり、野菜だったり、それがみんな一緒になって1つになるっていうのは、料理と音楽って似てるところがあるなと思いながら書いた歌詞でもありましたね。

-ちなみに、みなさんメキシコ料理はお好きですか?

虎丸:大好きです!

咲吾:僕も好きですね。映画館でもポップコーンよりナチョス・チップを選ぶことが多いです。サルサ付けてよく食べてます。

志記:僕は辛いもの全般が食べられなくて、酸っぱいのも苦手なんで、メキシコ料理は全然得意じゃないですねぇ。

もにょ:うちの弟、舌が子供なんですよ(笑)。

志記:僕はハンバーグとかが大好きです!

-そんな志記さんは(笑)、この初のタイアップ曲「サルサルーサ」の音像を、いったいどのようにまとめていくことになられたのでしょうか。

志記:めちゃくちゃ悩みましたねぇ。最初に咲吾から歌詞とメロディが来て、まずは"メキシコで交ざると言ったらサルサ"っていう、その発想に沿うのがいいかなと思ったんで、音の面でもいろんなものを交ぜていく方向で考えていきました。始まりのあたりにはメキシコというよりもキューバとかあっちの雰囲気を入れながら、サビではダンシング・リズムとしてジャマイカのスカを入れていった感じですね。まさにごちゃ交ぜです(笑)。

-「サルサルーサ」もリズムがとても特徴的な曲となっておりますけれど、虎丸さんはいかなるスタンスで向き合われたのでしょうか。

虎丸:これは極限まで簡単なドラムにしました。誰でも叩けるような構成にしてます。ただ、これもノリの部分はすごく大事でしたね。Aメロも普通の8ビートなんですけど、ギターのカッティングにちゃんと合わせていくのは意外と大変でした。裏打ちすれば簡単なんですけど、それじゃダメなんですよ。普通の8ビートに徹するのがポイントなんです。でもこれ、一番難しいんはベースちゃいますかね?

もにょ:そう言ってくれた虎丸さんには申し訳ないんですけど、今回の3曲の中だとベースはこれが一番簡単です(笑)。ベーシストじゃない人が聴くと難しそうに聞こえるんだけど、弾いてみると実は簡単だぜフレーズな気がしてます。

-何より「サルサルーサ」は楽しい曲になっていると感じます。ライヴで演奏したときには、よりハッピーな空気感がはじけそうな予感もいたしますね。

咲吾:この曲には振付もあるんで、ライヴではみんなも楽しめるようになってます。歌詞の情報量も多いんで、最初のうちは脳ミソが忙しい感じになるとは思うんですが、みんなが振りを覚えて躍ってくれるようになると僕は楽になっていくだろうなと(笑)。