INTERVIEW
the GazettE
2021.05.26UPDATE
2021年05月号掲載
Member:URUHA(Gt) KAI(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
要は、the GazettEって嘘がつけないんです
-そんな「MOMENT」に限らず、the GazettEはメロディ自体の完成度がとても高いバンドであると、今作『MASS』を聴いていて改めて感じました。
URUHA:ヘヴィな音は好きですけど、そこは僕らのルーツがメタルコアじゃないっていうところが大きいでしょうね。もともとの根っこにあるのはヴィジュアル系なんで、歌メロを軸にして考えているところは当然あります。
-一方、KAIさんの推し曲はどちらになりますか?
KAI:URUHAと被んないほうがいいような気はしつつ(笑)、僕も「BLINDING HOPE」は欠かせないかなと思います。何しろ『MASS』の入口になっている曲ですし、とにかくthe GazettEがどういうバンドなのかが、アルバムの中で最もわかりやすい曲になってますからね。だから、どうしても外せないです。
URUHA:じゃあ、それ以外の2曲だとどれ?
KAI:うーん、全曲が推しだから限定してピックアップするって難しいなぁ(笑)。
-ドラムのフレーズ面でいけば、「HOLD」がなかなか派手なつくりですよね。
KAI:あぁ、そうですね。激ロックを読んでいる方は、たぶん「HOLD」とか「BARBARIAN」、あとは「FRENZY」なんかが好みなんじゃないかと思います。でも、個人的には「LAST SONG」を推したいです。
-その理由を教えてください。
KAI:これはアルバム『MASS』を締めくくる曲ですし、今後ツアーをやるとしたらライヴでも必ず最後にやる曲として決まっているものなんですよ。
-ゆえの"LAST SONG"なのですね。
KAI:それだけライヴの光景が見えやすい曲になっていると思いますし、これからのライヴで重要な役割を果たしていく曲になっていくんじゃないかと。
-「LAST SONG」には"絶望の中で夢を見ていた"ですとか、"彷徨う声 此処で/またあの日の様に叫んで"という歌詞が含まれていることもあり、昨春以来ずっとthe GazettEのライヴを心待ちにして来ている人々にとって、この曲はどうにも感極まるしかないものに仕上がっていると感じます。
KAI:うん。この曲はメッセージ性がすごく強いですよね。要は、the GazettEって嘘がつけないんです。自分たちの気持ちを、どストレートに表現しちゃうというか。言ってみれば「BLINDING HOPE」も完全にそういう曲ですからね。ちょうどコロナ禍の中で作っていたアルバムであるということで、その中で僕らが感じていたことを詰め込みたい思いは当然ありました。
-あともう1曲はどちらになさいます?
KAI:「濁」にします。これも激ロック読者の人たちからすると、そんなに聴きなじみがないタイプの曲だと思うんですよ。これだけ曲の世界にどっぷりと深く浸かりながら聴けるところは、自分たちの持っている強みのひとつだし、ここまでダークな空気感を堪能できるっていうのも、ヴィジュアル系ならではの醍醐味だとも思うので、逆に激ロック・ユーザーの人には新鮮かもしれません。
-ラウドロックにストリングスの要素を持ち込んだ「NOX」や、聴いていると映像的な情景が浮かんでくる「THE PALE」なども含めて、つくづく今作に収録されている全11曲は、それぞれ個性の際立った楽曲たちに仕上がっておりますね。とはいえ、これだけ多彩だと1枚のアルバムとしてまとめていくのが難しいところはありませんでした?
URUHA:むしろ、そこは『NINTH』のときのほうがちょっと難しかったですね。今回そういう点で悩んだところはなかったです。
KAI:the GazettEって、これまで結構いろんなことをやってきてるバンドですから。いろんな要素を1枚にまとめることは得意だし、慣れてるんですよ(笑)。
-では、今回の制作過程の中で最も大変だったのはどんなことですか?
URUHA:今回に限ってはコロナで、あんまりみんなで集まることができなかったっていうのが普段と違うところでしたね。弦楽器はすべて自宅で録りましたし、レコーディング以外の部分でも、メンバーがいつどんなふうに何をしているのかっていうのが見えにくい状況で、制作を進行していくしかなかったんです。
KAI:今回はミックスもオンラインでやりましたからね。これは初の試みでした。
-ギター・アンサンブルについて練る場合も、AOIさんとのやりとりはリアルではなく、オンラインだったのですか?
URUHA:プリプロ中からずっと、LINEや、Zoomを活用してましたね。レコーディングが終わって、ミックスの段階になっても、お互いが描いている理想のかたちと実際の音とを擦り合わせていくための議論は、徹底的にしていったので、締め切りギリギリまで時間をかけながらやりとりすることになりました。
-そうした場合、解決の糸口を見つけていくにはどのようなアプローチが必要でした?
URUHA:まずはAOIの思う、"どんなサウンドにしたいのか"というイメージをできるだけ引き出すようにしていきました。昔は、それ以前に"自分はこう考えている"と真っ先にぶつけたりしたこともあったんですけど、今回は相手がどうしたがっているのかを探って、そのうえで自分はどうするか? を決めていく感じでしたね。幸い、今はリアンプや、キャビネットのIR(インパルス・レスポンス)を変えることで音をいろいろと操ることができるので、AOIの音も自分の音も、その都度議論しながら描いているイメージに近づけていくことが可能だったんですよ。ある意味、めんどくさくて回りくどいやり方だったとは言えますけどね(苦笑)。でも、そのぶんお互いにイメージの共有をするための時間はたくさんとれましたし、ツイン・ギターとしての寄り添い方はうまいことハマったんじゃないかと思います。
-回りくどいやり方ではなく、それだけ丁寧な作り方をされていたということなのではありませんか?
URUHA:そういう言い方もできますかねぇ。あとは、主観的にではなく、俯瞰で見ながら作っていく必要も今回はかなりありました。
-ツイン・ギターの音が変にバトってはおらず、親和性の高い絶妙なアンサンブルになっているのはそのためだったのですね。なんだか納得です。
URUHA:良かったです。そこを感じてもらえたんだったらやり甲斐ありました(笑)。自分を殺してとまではいかないものの、今回は作曲者の意向、各パートの意向を最大限に受け止めながら、最善の着地ポイントを見つけていくことに全力を傾けたと言っても過言じゃないくらいです。
-今作『MASS』を完成させたことにより、今回おふたりが新たに気づけたこと、あるいはわかったことなどは何かございますか?
KAI:オンラインでも制作はできるし、結果としてこれだけのものはできましたけど、本当だったらミックスだってオンラインじゃなく、みんなで集まってその場でやるのが理想だな、というのはこうなってみて初めてわかったことでしたねぇ。現場で同じスピーカーから音を聴いて、意見を擦り合わせていくのって大事なんだなと。それぞれが違うスピーカーで音を聴いてると、なかなか話が上手く噛みあわなかったりするんですよ(苦笑)。
URUHA:環境が違うと音も変わっちゃうからね。今までだったらなんの問題もなくスムーズにやれてたことに、思い掛けないような手間を取られる場面はたしかにありました。そこは今後に向けての課題にもなっていくことですけど、それがわかったこと自体が今回の制作で収穫したことだとも言えます。
-かくして、このアルバムには"MASS"というタイトルが冠されました。ここに託した思いについても少し解説をしていただけると嬉しいです。
KAI:"MASS"という単語自体が多くの意味を持っているものなので、これはその内の何かひとつの意味を表したタイトルというわけではないんですけど、"ひとつの塊"としての"MASS"という面はまずあるでしょうね。
-それ以外の意味合いについては、受け手のみなさま方にも探りながら今作を楽しんでいっていただきたいところです。そして、気づけば今作はthe GazettEにとってはちょうど10枚目のアルバムでもあるのですよね。
KAI:その点は今回のジャケット・デザインでも意識してます。これ、2004年に発表した初フル・アルバム『DISORDER』以降の全アルバム・ジャケットを、升目の中でコラージュしたアートワークになってるんですよ。それこそ"MASS"は枡目の枡という捉え方もできるし、いろんな見方ができると思います。
URUHA:とはいえ、『MASS』はいわゆるコンセプチュアルなアルバムとは違うんですよ。特定のテーマありきで作ったというよりは、バンドの持っている芯の部分を、今改めて1枚のアルバムにしたものと言ったほうが正しいし、the GazettEとしてはここが到達点ってわけでもないですからね。なんならこれは通過点なんです。この時点でのベストではあるけど、レコーディングが終わってもまだ答えの出ていないことはたくさんあって、それはこれからまた動いていくなかで見つけていかなきゃならない。"あぁ、アルバム作りってこういうものだったよな"と3年ぶりに感じました(笑)。
-the GazettEが今年の19周年を経て来年には20周年を迎えていくなかにおいて、我々としては、この『MASS』に収録された楽曲たちを、1日も早くライヴで聴ける日が訪れてくれることを心より願っております。
KAI:こうして『MASS』を出すからには、もちろんそのあとにライヴをやりたいという考えは僕らも持っているんですよ。ただ、時期を見ることにはなってしまいますが、いつやれるタイミングが来てもいいような準備はしていきます。だから、ここは"ライヴはやります!"って言い切りたいかな。
URUHA:コロナの問題は世界的な話なので、まだ"ライヴをやりたい"というのは自分たちの希望でしかないところがあるんですけど、この『MASS』を聴いてもらったうえでみんなが"ライヴに行きたい!"って思ってくれるんだとしたら、今後に向けてその気持ちに精一杯応えていけるだけの状況を作っていくのが、今の自分たちにできることだろうな、と僕らは思ってます。
-来春の20周年については、今のところどんな心境で迎えられそうですか?
URUHA:本当だったら20周年に向けて予定していたことがあれこれあったんですけど、いくつかは変更せざるを得ないことも出てきているのが現状ですね。でも、よくよく考えると20周年って我ながらすごいなとは思います。よくまぁ続いたなと(笑)。
KAI:あはは(笑)。
URUHA:でも、この5人だからこそ続いてきたんだろうなっていうのは年を経るごとに感じてますし、うちのメンバーはみんなほんとガッツあるなって思います。バンドに対する愛も深いしなぁ。じゃないと、こんな荒波ばっかりのなかで20年続かないですよ。それは今回の『MASS』が完成したときにも感じたことです。
KAI:だから、ここから20周年を超えても、僕らとしてはとにかく音で自分たちの伝えたいことを語っていくだけですね。それがthe GazettEにとってはすべてです。