INTERVIEW
GREY DAZE
2020.06.24UPDATE
2020年06月号掲載
Member:Sean Dowdell(Dr)
Interviewer:山本 真由
伝えたいことはChesterが卓越したシンガーであり、ソングライターだったってことと、素晴らしい人間だったってことだよ。違う光を当てたChesterを聴いてほしい
-「Sickness」はミュージック・ビデオも公開されていますが、これはChesterの子供時代のつらい体験をモデルにしているそうですね。楽曲からもChesterの悲痛な叫びや怒りを感じることができますが、当時、Chesterはどんなティーンエイジャーでしたか?
Chesterは、ハッピーなティーンエイジャーだった。思いやりがあって、対立が大嫌いだった。身体が細い感じの青年だったから若い頃は虐められていたりもしたけど、バンドに入ってからは人から虐められなくなり、リスペクトされるようになったから、彼にとっていい変化だったと思う。Chesterについて言えることは、当時の彼はすごく好感度のあるやつだった。みんなに好かれていたよ。付き合いやすくて、彼はみんなに親切で心底いい人だった。
-まだ15歳だった彼をバンドに誘ったのは、何か才能を感じるものがあったからですか? それとも、弟のような存在の彼に音楽という救いを与える目的もあったのでしょうか?
バンドに入ったときは虐められているとは知らなかった。彼がオーディションしに来たとき、直ちに彼の才能に気づいたんだ。彼はPEARL JAMの「Alive」を歌ってくれたんだけど、彼の音域もわかったし、スクリームもでき、歌うこともできて素晴らしかった。音程もしっかりしていて、エネルギーもあったし。素晴らしいライヴ・パフォーマーになったけど、その前からも素晴らしいシンガーだった。最初はロック・スターの姿じゃなかったけど、すぐにカリスマ性を身につけてオーラも出てきて、時と共にさらに輝いていったよ。週に3、4日はリハーサルして、俺の家に住むようになってからは親友にもなって、俺にとっては弟のような存在であり、守りたいと思う存在だった。
-今作は、LINKIN PARKのファンだけでなく、LINKIN PARKすら知らない子供たちも聴くことになる作品だと思いますが、今作を聴く若者にはどんなことを伝えたいですか?
伝えたいことはChesterが卓越したシンガーであり、ソングライターだったってことと、素晴らしい人間だったってことだよ。違う光を当てたChesterを聴いてほしい。LINKIN PARKの音楽とは離して聴いてほしいんだ。これはChesterのバンドなんだと思ってほしい。彼が俺に電話してきて、"自分のロック・バンドをやりたい"と言ったことで、またGREY DAZEをやることになっていったから、そこをわかってほしいんだ。
-今作にはChesterの息子のJaime Benningtonがバッキング・ヴォーカルとして参加していることも話題となりました。親子が時を超えて共演するという、このアイディアはどなたのものですか? また、Jaimeとのレコーディングは、あなたにとってどんな経験になりましたか?
俺はJaimeが赤ん坊のころから彼のことを知っていた。スタジオにいるときに、Chesterへの恩返しになると思って、彼の子供たちにも参加させようと思いついたんだ。他の子供たちにも声を掛けたけど、まだそんな気持ちになれなかったらしい。でもJaimeだけは自ら参加したいと言ってくれた。きっとChesterも子供たちと一緒に歌いたかったと思うから、本当にこれができて良かったと思う。「Soul Song」って楽曲で歌ってくれたんだけど、美しかったよ。よく歌っている。きっとパパも誇りに思うだろう。
-さらに、今作にはKORNのギタリストであるJames "Munky" ShafferとBrian "Head" Welch、そしてChris Traynor(Gt/BUSH/HELMET/ORANGE 9MM)も参加していますね。このようなレコーディング・メンバーはどのように決まったのでしょうか?
プロデューサーのひとりが"Chris Traynorも参加させないか?"と提案してくれて、Chrisがスタジオに来て、「Soul Song」について彼の考えを共有してくれた。Chrisとは意気投合して、結局4曲に参加してくれた。彼はもはやバンドの5人目のメンバーのような存在になっているよ。HeadとMunkyは俺の古い友人で、彼らにこのプロジェクトの話をしたらふたりとも参加したいと言ってきた。最初はふたりに"意見をくれないか?"ってトラックを送ったんだけど、すぐに電話してきて"最高だ"って言ってくれたんだ。"それならプレイしないか?"と誘ったら二つ返事だったよ。「B12」では一緒に曲作りをしてくれて、素晴らしい出来になったんだ。彼らはChesterが大好きだし、今までChesterが一緒に音楽をやれなかった人たちに参加してもらえたことは俺も嬉しい。みんな初期のころからChesterにすごく良くしてくれたから、きっと彼も天国で喜んでいるに違いない。あと今作にはBREAKING BENJAMINのJasen(Rauch/Gt)もHeadと「She Shines」という曲で参加しているし、LPというヴォーカリストは「Shouting Out」でChesterとデュエットをしている。
-今作のレコーディングで、特に印象に残ったことやエピソードがあれば教えてください。
結構あるけど、「B12」のレコーディングをしているときに、ちょうどレコーディングした「Morei Sky」を聴き直すためにコントロール・ルームに行ったら、Chesterがトラックの最後でプロデューサーに"今のどうだった?"と話している部分があって、それをあえて入れておこうと決めたとき、HeadやMunkyもいたんだけど、みんなで顔を合わせて、"Chesterがここにいるね"って話したのが忘れられないエピソードだった。Munkyなんて涙ぐんでいたよ。
-Chesterと再結成について計画していたときは、新曲を制作することはアイディアとしてあったのでしょうか?
もちろん。最初は古い楽曲をリレコーディングして、それをレパートリーに、世界中をツアーして、その反応を見てから新しい曲に取り掛かろうって話していたんだ。
-当初の再結成プランには、記念ライヴもあったようですが、今作のリリース後にライヴを行う予定はありますか?
いや、新しいシンガーを迎えてライヴをやる意味はないと思うしやりたくない。でも、もしトリビュートとして、様々なシンガーたちが参加してくれるならライヴをしてもいいとは思っている。
-先ほど、今作の反応次第で続きのリリースも、という話はありましたが、GREY DAZEは今回の一連のプロジェクトのみの再結成となるのでしょうか? これからも活動を続ける予定は?
個人的には自分のビジネスで成功しているので、バンドをやる必要はないけど、彼のヴォーカルを入れた音楽をリリースすることを楽しみながら、さらにみんなに作品を届けたいと思っている。親友のことをこうして思い出すのはいいことだと思うので、楽しいと思いながらできる限り、続けたいと思っているよ。
-リレコーディングはストレスも多く、大変な作業だとは思いますが、やっている最中はエンジョイできましたか?
最高だったよ。どの瞬間も最高だった。後悔もなければ、失敗もなかったと思う。
-では最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。
まずひとつすごいことは、Chesterは日本が大好きだったってことなんだ。彼はいつも日本に行くことを楽しみにしていたし、日本文化も日本の方々も歴史も大好きだった。Chesterの心に特別な場所があったと思う。GREY DAZEの音楽を聴いて、気に入ってくれて、そんなChesterの思いを胸に、彼の残した素晴らしい作品を楽しんでくれたら最高だよ。ありがとう。本当にありがとう。