INTERVIEW
BRING ME THE HORIZON
2015.09.16UPDATE
2015年09月号掲載
Member:Oliver Sykes(Vo)
Interviewer:村岡 俊介(DJ ムラオカ)
-ちなみに"That's The Spirit"というタイトルの意味するところは?
いろんな意味があるんだ。メインは......このアルバムはダークなものから光を見出すことについて歌っている。ダークな出来事でもポジティヴなものに変えることができるってことだね。例えばいじめにあったとか、嫌な経験っていろいろあるけど、そういうものからでもすごくいいものを生み出すことができるんだ。俺自身、そういうふうに人生が展開した気がする。俺はあまり学校に楽しい思い出がなかったし、心を開ける友達もあまりいなかったからね。でもそのおかげで強い人間になれた気がするんだ。『That's The Spirit』の曲はみんなそういうことを歌っている。"That's the spirit"というのはお決まりのフレーズでもあるんだ。人が他人に対して特に言うこともないときとか何かに対して答えがないけどその場をやり過すときなんかに使う。響きほどハッピーな言葉じゃないんだけどね。(※直訳では"そうこなくっちゃ"という意味)自分の中の悪魔の存在に気づきつつ、それをうまくやり過ごして、ネガティヴなものをポジティヴに変えていくって感じかな。
-"Happy Song"という曲がありますよね。題名のわりにハッピーさが見えないというか、むしろダークな曲ですが、この楽曲もそういう意図からできた曲なのでしょうか。単なるハッピーな曲というより、これから人々をハッピーにしていくための曲、と言いますか。スピリットさえあればハッピーになれる、みたいな楽曲ですよね。
そう、まさにそうだね。ちょっと皮肉っぽい感じではあるけど(笑)。人間にとって落ち込むことはあまりにもたやすいことだけど、そういう要素をやり過ごしてハッピーになろうという感じかな。今はその方法もいろいろあると思う。ソーシャル・メディアの普及でいつでも誰かと繋がっていられるしね。だから何か悪いことがあっても、それを抱えて独りきりになることはない。いつでもテキスト・メッセージを送れるし、いつでも繋がっていられるからね。それがベスト・オプションかどうかはわからないけど、かなり心を揺さぶられる経験ができると思うんだ。俺たちは誰でも心の中に恐れの気持ちを抱えている。それはノーマルなことだから、気を悪くすることはないしね。で、その気持ちを表に出してみると、実は気分がよくなったりする。出すことによって気が楽になるんだ。だからその恐れの気持ちをなかったことにするよりも、うまく受け容れてやり過ごしていけば、ポジティヴなものに生まれ変わらせることができると思う。それに、悲しい気持ちになれるっていうのもラッキーなことだと思うんだ。そもそもハッピーなことがあってこそ、悲しい気持ちが存在するんだからね。人が悲しい気持ちになるのは、自分の持っている何かを失うのが怖いからなんだ。でも逆に言うと、失うことができるというのは何かを持っているということだし、それはラッキーなことだからね。「Happy Song」っていうのはそういう楽曲なんだ。自分の頭の中にあるダークなものをどのようにやり過ごすか。音楽を聴くのもいいし、映画を観に行ったり、パソコンをやったりするのもいい。現実逃避みたいな感じだけど、いい気分になれるためのきっかけがあればいいと思うんだ。
-そういうことを通じて魂を浄化させられるといいですよね。
そう、そういうことだね。
-全曲聴かせていただきましたが、前作『Sempiternal』(2013年リリースの4thアルバム)での変化にでも驚きましたが、今作『That's The Spirit』での変革はその比ではありませんね。このような音楽性の作品を作るということは、いつから考えていたことなのでしょうか?
『Sempiternal』のツアーが半分くらい過ぎたあたりからかな。あのアルバムはご存知の通り俺が初めて本格的に歌った作品で、初めてエレクトロを持ち込んだ、まったく新しい試みのアルバムだった。それはJordanも同じで、あいつにとっても何もかもが初めてだった。『Sempiternal』のツアーが半分くらい終わって、4つくらいシングルを出したところで、レコード会社に"またシングルを出すか?"と聞かれたんだ。そのころにはバンドの状態がとても素晴らしいコンディションだったから、ただアルバムから曲をカットするよりすごいことができるんじゃないかと思ったんだ。それで書いたのがTrack.9「Drown」なんだ。あの時点でミュージシャンとしての自分に自信がついてきていたし、もっと強力なものが書けるような気がしてね。『Sempiternal』はそれはそれで素晴らしいアルバムだったけど......今回どうしても必要だったのは、"前のアルバムよりこんなによくなったなんて信じられない"とか"おまえがこんなに歌えるなんて"と思ってもらうことだった。初めて俺たちの音楽を耳にした人でも"こいつの歌はすごい"とか"ずっとスクリームをやっていたやつとは思えない"とか、"エレクトロってすごいね"とか思ってもらえるような――メタルコア・シーンで1番のアルバムじゃなくて、最高のロック・アルバムを作りたいと思ったんだ。同世代のバンドじゃなくて、LINKIN PARKやFOO FIGHTERSみたいなバンドと比べてもらえるようなものを作りたいと思った。ああいう世界有数のロック・バンドのレベルまで上がりたいんだ。
-なるほど。まずアルバム全体で感じたことですが、スタジアム・ロックの超最新型版だと感じました。広がりを感じさせるヴォーカル・エフェクト、ビック・コーラス、壮大なシンセ・サウンドなどの要素のせいもあってか、スタジアムなどの大会場で聴いているような感覚に陥りました。
そうだといいな。いつかは日本でも大きなところでやりたいよ。
-ライヴで演奏したら会場中で大合唱が巻き起こることが想像に難くない曲がたくさんありますね?
そうだといいね。ひとつ気をつけたのが、歌詞の意味やメッセージがそれぞれユニークなものになるようにしたってことなんだ。前のアルバムでは、俺が意味のあることを歌っていても、聴き手は俺が何を歌っているのか解釈しないといけなかった。今回はそれぞれの曲がもっとわかりやすくなっていると思う。うまく言えないけど、もっと門戸が広いメッセージというのかな。より多くの人たちに繋がる内容になっていると思うよ。
-少し矛盾したことを言うようですが、アルバム全編に渡って一貫した空気感は感じつつも、すべての曲が非常に個性的で似通っていません。そこがこの作品の素晴らしい理由のひとつだと感じました。
気づいてくれて嬉しいよ。それぞれの曲に独自の意図を持って欲しかったし、いろんなジャンルをやってみたいというのもあったんだ。似たような曲が11曲並ぶよりいいからね。ひとつひとつの曲が独自の歌詞とメッセージを持っていて、なおかつ音楽がそれをちゃんと表していないといけないと考えたんだ。例えばTrack.4「True Friends」は裏切りや友情についての曲で、裏で使われているストリングスやオーケストラがその雰囲気を盛り上げてくれる。オーケストラがStabbing(※歌詞の"true friends stab you in the front=本当の友達は正面から斬りつけてくる"のこと)の音みたいに聞こえてきて、メタファーみたいな働きをするんだ。「Happy Song」はいろんな人にポップ・ロックみたいだって言われる。あのチアリーダーみたいな声は、ちょっと表面的に聞こえる感じのを完全に狙って入れたんだ。それからアルバムの最後の曲はTrack.11「Oh No」っていうんだけど、あれは18歳になってナイトクラブに出入りするようになって、最初は楽しいんだけど、年取るとあまり楽しいものじゃなくなるという内容の歌なんだ。最初の方はナイトクラブに足を踏み入れたときに感じる雰囲気を音で表していて、全体の音もナイトクラブで演奏を聴いているような感じにしてあるんだ。内容を皮肉っているんだけどね。どの曲も歌詞と音楽が対照的になっていたり、音楽が歌詞の内容を強調するような形になっているんだ。意味やメッセージが込められているよ。