MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

FEATURE

KORN

2022.02.03UPDATE

2022年02月号掲載

ニューメタルの絶対的アイコンが混迷の時代に捧げる鎮魂歌―― "最も暗い光"を纏ったヘヴィネスで世界を照らし出す14thアルバム!

ライター:菅谷 透

"ニューメタル"を定義づけた1994年のデビュー作『Korn』以来、ヘヴィ・ミュージック・シーンの絶対的アイコンとして君臨するKORN。彼らが今日までの音楽界へ与えた影響は、全世界で4,000万枚以上のアルバムを売り上げ、2度のグラミー賞を獲得というメインストリームでの成功だけでなく、彼らのスタイルに直接的にインスパイアされたフォロワーの存在や、思春期のバイブルとして彼らの音楽とともに育ってきた世代による"ニューメタルコア"の勃興など、まさに枚挙にいとまがないほどである。幾多の困難に見舞われながらも最前線で活動を続けてきたカリフォルニア出身の5人組が、約2年半ぶり14枚目のアルバムとして世に送り出すのが『Requiem』だ。本稿ではその制作背景にも触れつつ、新作について迫っていく。

前作『The Nothing』をリリース後、FAITH NO MOREなどのバンドと大規模なツアーを控えていたKORNだが、パンデミックの流行により、世界中を飛び回っていたツアー・バンドの彼らも例外なく予定していたスケジュールが白紙となってしまう。ロックダウンの当初は各々家族と過ごすなどプライベートの時間を過ごしていたようだが、"バンド"としてのあるべき姿を取り戻すため、すぐに楽曲の制作に着手することになった。これまでのアルバムとは異なり、時間的な制約がなく、制作時点ではリリース元のレーベルも決まっていなかったため(※その後新たにLoma Vista Recordingsと契約)、様々なプレッシャーから解き放たれた、非常に自由な制作環境だったのだという。その結果、アナログ・テープでのレコーディングや実験的なアレンジメントなども用いることができ、いつもは締め切りに追われていたというJonathan Davis(Vo)もじっくりと歌詞を仕上げることができたそうだ。また、本作では『The Serenity Of Suffering』(2016年の12thアルバム)以降の作品にエンジニアとして携わってきたChris Collierが初めて共同プロデューサーとして参加しており、James "Munky" Shaffer(Gt)いわく"ヘヴィ・メタルの百科事典"な、彼の豊富な知識に基づくアドバイスもセッションにおいて重要な役割を果たしている。なお、ベーシストのReginald "Fieldy" Arvizuはパーソナルな問題に対処するため現在バンドから離脱しているが、本作では彼のレコーディングがフィーチャーされていることもつけ加えておきたい。

そうしてできあがったアルバムは、"ただ顔面をひっぱたいて、「じゃあな」と去っていくようなアルバムにしたかった"という狙いのもと、本編が約32分で全9曲という歴代のディスコグラフィでも群を抜いてコンパクトな、磨き抜かれたサウンドが詰め込まれた作品だ。これまで光と闇、希望と絶望の世界を紡いできたKORNにとって、妻との死別というJonathanの体験が反映された前作『The Nothing』はバンド史上最もダークな作品のひとつだったが、それに比べると本作は驚くほどキャッチーで、ストレートなヘヴィネスが奏でられており、"光"のほうへと軸足を置いた内容と言える。Jonathanは本作についてのインタビューで、自身が今幸せな状態にあるとしたうえで"これまでいろいろなことがありながら、それを乗り越えてきた。自分の幸せは自分で決めるものだ。他の誰にも責任はない。物事に思い悩んだり、クソみたいなことで落ち込んだりしても、それは自分のせいであって、世界のせいではないんだ。お前には、どんな状況からも抜け出す力があるし、嫌な気分にさせる状況を変える力もある。それを理解するのに50歳までかかったよ。それをみんなに伝えていかなければならない"と語っているが、こうした心境の変化が、ある種のポジティヴさすら感じられる作品へと繋がっているのだろう。

オープニングを飾る「Forgotten」から、アンサンブルが渾然一体となったグルーヴと、メランコリックなメロディを紡ぐJonathanの歌声に引き込まれていく。続く「Let The Dark Do The Rest」では、キャッチーなコーラスと"You make me sick"とまくしたてるデス・ヴォイスの対比も聴きどころだ。第1弾シングルとして発表された「Start The Healing」では、冷徹で無機的なイントロからサビでエモーションを炸裂させていく。アナログ・レコーディングがもたらした成果か、サウンドはヘヴィでありながら刺々しさよりもどこか親密な温もりを備えていて、MunkyとBrian "Head" Welchによるツイン・ギターや、Ray Luzierの小技の効いたドラミングを引き立たせた、緻密なアレンジメントも楽曲に奥深さを与えている。

スクラッチ音を思わせるギター・リフとタイトなグルーヴが映える展開から、混沌としたセクションへと移ろう「Lost In The Grandeur」に続いて、「Disconnect」では叙情的なコードでオルタナティヴ・ロックのような質感を残す。中盤のハイライトと言えるのが「Hopeless And Beaten」で、ドゥーミーなリフからパイプ・オルガンの音色のように荘厳なメロディが奏でられていく。そして聖歌隊のようなバック・コーラスの中、あえて感情を抑え聴く者に寄り添うように歌い上げるJonathanのヴォーカルは、さながらアルバム・タイトルに掲げられた"鎮魂歌"を体現しているようだ。

アルバム後半になると徐々に重々しさが増していき、「My Confession」では叩きつけるようなグルーヴと、陰鬱な不協和音が炸裂。本編を締めくくる「Worst Is On Its Way」では、往年のファンにはお馴染みのフリーキーなスキャットも登場し、過去作に通ずる漆黒の世界観を描いている。Jonathanは同曲を"これは人生のサイクルだ。今俺は幸せな時期で、すべてがうまくいっている。でも角を曲がったところでクソみたいな何かが起こって、いつものように俺の喜びを奪っていくんだ。この惑星の誰もがそうなる。それにどう反応するかは人それぞれだ"と表現している。"闇"の象徴とも言える過去の作品をあえて引用することによって、忍び寄る影の存在を描いているのだろう。

「Disconnect」の一節には"光"と"闇"というフレーズも登場するが、言うなれば闇の中に一筋の明かりが灯るような"最も暗い光"でもって世界を照らし出すような作品となった本作『Requiem』。新たな息吹の吹き込まれたアルバムは、もうじき結成30周年を迎える彼らが今もなお独創的な存在であることを示すと同時に、ファンに驚きと興奮を与える作品となることだろう。混迷の時代に捧げる"鎮魂歌"に、ぜひ触れてみてほしい。


▼リリース情報
KORN
ニュー・アルバム
『Requiem』
Korn-Requiem-Album-Artwork.jpg
2022.02.04 ON SALE!!
UICB-10005/¥3,300(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

1. Forgotten
2. Let The Dark Do The Rest
3. Start The Healing
4. Lost In The Grandeur
5. Disconnect
6. Hopeless And Beaten
7. Penance To Sorrow
8. My Confession
9. Worst Is On Its Way
10. I Can't Feel ※日本盤ボーナス・トラック

  • 1