FEATURE
KORN
2013.10.09UPDATE
2013年10月号掲載
Writer 沖 さやこ
デビュー・アルバム『Korn』がリリースされて来年で20年を迎えるKORN。ニューメタルのパイオニア的存在として君臨する彼らが、通算11枚目のオリジナル・アルバム『The Paradigm Shift』を10月9日にリリースした。SKRILLEX、NOISIA、KILL THE NOISE、12TH PLANETなどダブステップ系のアーティストとのコラボレーションを取り入れた前作『The Path Of Totality』から2年。今作は一時バンドを抜けていたギタリストBrian "Head" Welchが約8年ぶりにKORNへ復活してのアルバムだ。そして移籍第1弾でもあり、LINKIN PARKなどを手掛けているプロデューサー、Don Gilmoreとの初タッグ作品でもある。そういう意味でも、新しさの中に懐かしい空気が漂う非常に理想的な作品と言っていいだろう。
ギタリストであるJames "Munky" Shafferはこう語る。"アルバム・タイトル『The Paradigm Shift』は様々な視点を内包している言葉なんだ。ひとつのアートをある特定のアングルから見れば、あるイメージを帯びるし、また別のアングルから見れば、そこにはまた別のイメージが見えてくる。俺たちはこのことを2013年のKORNに当てはめようとしている。ギタリストのHeadが戻ってきて、ファンのみんなが初期の頃からずっと愛してくれている要素のすべてがここにはあるけれど、俺たちはそれらを新しい角度から解釈しようとしているんだ。より大きく、輝かしく、そして果敢なKORNなんだ"――その言葉に集約されるような作品である。Headの帰還を待ちわびていたのはリスナーだけではなく、メンバーも同様だったのだろう。ヘヴィでありながらも、喜びに満ちた瞬発力や精彩を放つサウンドは、8年もの間メンバー全員がこの日を待っていたことを証明するようである。1993年に始動したバンドはデビュー・アルバムで一躍その名を知らしめる。それ以降毎度作風を変え、そのたびに様々な賛否両論が巻き起こった。それだけバンドが注目されている証であり、彼らが変化を恐れず攻め続けたということだろう。2004年にHeadは自らの依存症と戦うためにバンドを離れる。
8年の歳月はメンバーそれぞれに変化をもたらした。"俺たちには新たな活力が漲っているんだ。みんな子供ができて父親になった。明日のことを考えるようになった。でも10年前はそうじゃなかった。誰も気にしちゃいなかった。今の俺たちは自分の健康や家族を大事にしている。そのおかげで、最高の音楽を作るために必要な考え方を得ることができた。そうやってできた音楽は永遠に残るもので、心から誇りに思えるものになるんだよ"とMunkyは語る。変わらないことと新たな視点が加わった彼らの人間性がそのままこの作品には反映されている。ダウンチューニングで猛然とリフを刻んでくるMunkyとHeadのツイン・ギターを聴いて"Headお帰り"と言いたくなる、まさにKORNらしさ満点のTrack.1「Prey For Me」、スクリーム・パートとクリーン・パートのコントラストがより曲のレンジを広げるTrack.2「Love & Meth」、倦怠感のあるメロディがKORNらしいTrack.4「Spike In My Veins」とどこか温かでオルタナティヴな感触の強いTrack.7「Never Never」など、前作に取り入れたダブステップの要素もしっかり同居。自分たちの芯の部分を最新型にアップデートするその手腕は、彼らが常に好奇心を忘れないことも物語っている。今作は何よりやはり、鮮やかに響くMunkyとHeadのツイン・ギターが心を高揚させてやまない。生まれ変わったKORNの姿、より深まる4人の絆を感じさせてくれる『The Paradigm Shift』。彼らはこれからもラウド・ミュージック・シーンの最前線で活躍し続け、我々を楽しませ続けてくれるであろう。
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