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FEATURE

KORN

2016.10.20UPDATE

2016年10月号掲載

ヘヴィ・ミュージックの概念を変えた王者、史上最もヘヴィな音圧が迫りくる最新作!!

Writer 井上 光一

デビュー作『Korn』(1994年リリース)において、ある種異様なほどの痛ましさ、切迫した空気感が支配する、誰も聴いたことのない異形のヘヴィ・ロックを生み出してから20数年の時を経た今もなお、シーンのカリスマとして君臨する圧倒的存在、KORN。90年代当時、NIRVANAに代表される、いわゆる"グランジ"と呼ばれていたバンドたちが、アメリカ的マッチョイズムとは相反する鬱屈した弱々しい自分を赤裸々に語りながらも、どこか暗いユーモアのようなものを忘れなかったのと比べて、KORNの根幹を成すフロントマンのJonathan Davis(Vo)が血を吐くような狂おしさで歌い、幼子のように泣き喚く世界観は、あまりにも衝撃的であり、ルサンチマンを抱えた世界中の人々の心を容赦なく抉り、病的に熱狂させた。

商業的に最も成功した3rdアルバム『Follow The Leader』(1998年リリース)では、それこそグランジ~オルタナ勢が最も忌み嫌っていたある種のエンターテイメント性を肯定し、異端であった自分たちが主流になったことで生じる矛盾や苦悩を抱え込むのではなく、自覚的にシーンのリーダーたる存在として振る舞い、数え切れないフォロワーを挑発するかのような態度は、多くのファンはもちろん、多くのアンチをも生み出すこととなった。とはいえ、当のバンド自身は、自らが生み出した方法論にとらわれることのない活動を続け、90年代ラストにはかつてないほどにメロディを歌い上げながらも、初期のような陰鬱さとぺシミストたちが狂喜しそうな諦念、負の感情が渦巻く4thアルバム『Issues』(1999年リリース)を発表している。00年代以降は、KORNがKORNである理由を模索するかのように、時に音楽性を刷新し、時に原点回帰を見せ、時代を切り拓いていく革新性よりも、サウンドの深化をより重要視していくかのような様々な色を持った作品群を作り上げている。その間、オリジナル・メンバー2人の脱退があり、バンドにとっても試練のときであったと言えるかもしれない。

2010年以降は、まず9枚目となるアルバム『Korn III : Remember Who You Are』(2010年リリース)を発表。この作品から、前年に正式メンバーとなったドラマー、Ray Luzierがプレイしている。すでにベテランとなったバンドの好奇心や実験精神は未だ健在であることを証明してみせた、SKRILLEXやEXCISIONといったダブステップ系アーティストとのコラボレーション作品『The Path Of Totality』(2011年リリースの10thアルバム)を経て、2013年に再加入を果たしたBrian Phillip "Head" Welch(Gt)を迎えて『The Paradigm Shift』(2013年リリースの11thアルバム)を発表。大物バンドにしては珍しくハイペースな作品リリースを続けているがゆえに、順風満帆に見られがちではあるが、その実、波乱に満ちた音楽的キャリアを歩んできた彼らが生み出してきた音は、今では若いポスト・ハードコア~メタルコア、デスコア勢にとってのインスピレーションの源泉となっている。そしてとうとう"ニューメタルコア"なる造語までできあがったというのは、当時のラウドロック勢に対して自称"ロック通"の音楽メディアが執拗なまでに批判し、目の敵にしていたような時代を知っている身としては、まさに隔世の感がある。ブームは永遠ではないし、それが過熱すればするほど、打ち上げ花火のようにいずれ跡形もなく消え失せていくものである。絶対的な個性を持ち、本物のオリジネイターであり、時代の空気を柔軟に吸い込みながらも処女作へと成熟していくかのようなスタンスを続けるKORNだからこそ、移ろいやすい音楽シーンの中で特異な存在感を放っていられるのであろう。そんな"KORN"という存在、その意味を改めて世に問うたのが、本稿の主役である通算12枚目のアルバムとなる最新作『The Serenity Of Suffering』なのだ。


"KORN"という名のヘヴィ・ロック美学


本作は、前作からおよそ3年ぶりとなるフル・アルバムであり、Head復帰後からは2枚目となる作品でもある。プロデューサーには、FOO FIGHTERSやDEFTONESなどを手掛け、グラミー賞受賞経験もある、Nick Raskulineczが迎えられている。メンバーによるコメントにもあったように、"ヘヴィな作品になる"というのはひとつのキーワードであったが、実際に音に触れてみると、それは決して誇張ではないことがすぐに理解できるだろう。オープニングを飾るのは、先行公開されていたTrack.1「Insane」。冒頭から"正常ではない"と高らかに宣言しているのがいかにもKORNらしいが、初っ端からどこかザラついた音色のギターが哀愁を帯びたコードを鳴らすのも束の間、一気に激烈にヘヴィで分厚いサウンドが耳に飛び込んでくる。流麗なメロディも凶悪なデス・ヴォイスも自在に操るJonathanの表現力はさすがのひと言。スクラッチ(!)音も飛び出し(意識的なのか、本作では数曲ほど導入されている)、現代の若いバンドに対し、かつてのKORNのごとく"俺たちの真似をするならこんなふうにやってみな"と言わんばかりのサウンドを鳴らしているのが痛快だ。


Track.2「Rotting In Vain」においては、より90年代的な静と動のダイナミズムを意識し、どこか不安定で変則的なギター・フレーズも盛り込まれている。ヴァース部分で、Reginald "Fieldy" Arvizu(Ba)による、一聴してそれとわかるベース・ラインがはっきりと聞こえてくるのもポイント。この曲自体、オールドスクールなKORNファンが反応する要素が多く盛り込まれており、中盤のJonathanによる解読不能なヴォーカル・パフォーマンスに至っては、『Life Is Peachy』(1996年リリースの2ndアルバム)収録曲「Twist」の影を呼び覚ますだろう。


続くTrack.3「Black Is The Soul」には、シンセの音色をあくまでメロディを際立たせるためのものとして使い、過去の経験をきっちり踏まえたサウンド・アレンジも随所に見受けられる。Track.5「A Different World」では、盟友であるCorey Taylor(SLIPKNOT/STONE SOUR)がゲスト・ヴォーカルとして参加。かつてSLIPKNOTが愛憎入り乱れたKORNへの批判を展開していた過去を想い、個人的には感慨深い気持ちにもさせられたが、堂々たるCoreyの歌唱は、アクの強いKORNの面々に一歩も引けを取らない、鮮烈な印象を残しているのだ。


先述したように、本作はKORNの作品の中でも際立ってヘヴィな作風に属するアルバムであるが、ダーク且つ美しい、どこかゴシックな香り(本作のアルバム・ジャケットのアートワークを見るがいい)を持ったKORN印のメロディがどの楽曲でもきっちりと盛り込まれており、それはシンガロング必至のラスト曲(ボーナス・トラックを除く)のTrack.11「Please Come For Me」に至るまで、全編通して貫かれているのだ。ヘヴィ且つメロディアス、という意味においては、基本的には前作の路線を踏襲しているように感じられる。あえて言えば、ヘヴィネスの質の違いであり、本作は、KORN史上最も現代的なヘヴィネスに近づいたサウンドなのである。ギターの音作りは全体的に荒々しい歪みで音圧を重視した結果、HeadとJames "Munky" Shafferという、カラーの違うふたりのギタリストによる独創的な絡みは特筆するほどには強調されていない。KORNサウンドを特徴づけていた、スラップによる強烈なベースのアタック音も抑え気味で、曲にもよるが、全体的には重低音の下地をテクニカルなドラムスと共に支えるような音色となっている。音の隙間を活かしたバンド・アンサンブルに絡みつく、内面から滲み出るようなおぞましい闇こそがKORNのヘヴィネスである、と信ずる者にとっては物足りなさを感じるやもしれない。だが、KORNはその長い活動歴において、時に原点回帰する時期も含めて、同じ場所に留まることを良しとしない音楽的態度を常としてきたバンドであることは、すでに述べたとおりである。賛否両論があって然るべき存在であり、それこそがオリジネイターたる所以と言えるだろう。ヘヴィ・ロックの概念を変えた王者による、現在進行形のヘヴィネス、ここに在り。


▼リリース情報
KORN
ニュー・アルバム
『The Serenity Of Suffering』

2016.10.21 ON SALE!!
WPCR-17459/¥2,200(税別)
[WARNER MUSIC JAPAN]
amazon | TOWER | HMV

1. Insane [MUSIC VIDEO]
2. Rotting In Vain [MUSIC VIDEO]
3. Black Is The Soul
4. The Hating
5. A Different World (feat. Corey Taylor) [MUSIC VIDEO]
6. Take Me
7. Everything Falls Apart
8. Die Yet Another Night
9. When You're Not There
10. Next In Line
11. Please Come For Me
12. Baby *Bonus Track
13. Calling Me Too Soon *Bonus Track
14. Out Of You *Bonus Track

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