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COLUMN

MINAMI NiNE ヒロキのてげてげ通信 第17回

MINAMI NiNE ヒロキのてげてげ通信 第17回

ペットボトルの水を飲むと、思い出すことがある。

19歳の頃、僕の財布には900円しか入っていなかった。
家賃、光熱費、携帯代、月に5本くらいやっていたライブのチケットノルマ代、スタジオ代、生活費......
それを全部支払うと財布からお札は消えていた。
バイトの給料日まであと2週間。
無理だ......絶対無理だ。
どうすればいいのか分からなくなった僕は、高校時代の同級生Kにメールを送った。

「久しぶり。元気にしてる?コッチはあと900円しか無い状況だけど元気だよ。相談なんだけど、気軽に稼げる仕事とか無いかな?日払いみたいな感じのやつ!」

同級生Kから、すぐに返信が届いた。

「久しぶり。ちょうどイイ仕事あるよ。明日の夕方、新宿まで来れたりする?」

あぁ。
新宿まで行けるとも。
だって僕の財布には今900円あるのだから。


翌日。
僕は指定された場所まで向かった。
とても綺麗で立派なビルの前で同級生Kと久しぶりの再会を果たす。
「連絡ありがとね。ほんとタイミング良かったよ~!」と、同級生Kがあの頃と変わらない笑顔。
元気そうな姿に僕は安心した。

「こちらこそありがとね。ところでどんな仕事を紹介してくれるの?」
仕事内容を何も聞いていなかった僕。
すごくラフ。

「今から説明会あるから一緒に行こう!」
Kがビルへと入っていく。
僕は訳もわからずKの後を追った。

綺麗なビルの3階。
まるでドラマに出てくる会議室のような場所。
その入り口に立つ怪しげなおじさん。
「それでは資料代として500円頂きますね!」

おい、てめぇ。
ふざけてくれるなよ。
今の僕が500円払える訳ないだろ!
心の中でおじさんに罵声を浴びせながらも、スマートに500円払った。

結論から言うと「ね○み講」の説明会だった。
超が付くほどストレートなそのやり口に疑問を感じずにはいられなかった僕は、ホワイトボードを使って巧妙な話術を繰り広げるおじさんに対して質問してみた。

ヒロキ 「あの~......これって、ねず○講では......?」
おじさん 「え~!何故ですか?うちは全然違いますよ~!」
ヒロキ 「いやいや、絶対そうでしょ!!」
おじさん 「そんな君は、今欲しいものありますか?」
ヒロキ 「金っすね。」

そりゃそうだ。
お金が欲しい。
電車賃と資料代を払った僕の残金はすでに約200円。
帰りの電車賃を払えば、僕の財布はただの保険証を入れる為だけのケースと化す。

おじさん 「君は間違いなくお金もちになれますよ!半年前にこのビジネスを始めた人も高級車を買ったのですよ!」
他のスタッフ 「すご~い!パチパチパチパチ(拍手)」

すごくイラつきながら、隣に座る同級生Kの顔をふと見ると...
ウンウンと頷いて関心した表情で拍手をしているではないか。
声は出さないけど「すごぉーい☆」みたいな口の動きとかもしている。
嗚呼......コイツまじか......。
少し引いてしまった。
と同時に、死ぬほど説教してやりたいと思った。

説明会終わり。
外はすっかり夜。
僕は強い口調でKを責めてしまった。
「お前よく地元の友達をこんな所に誘えたな?自分のしてること分かってるか?っていうか○ずみ講って分かってるのか?すごく無駄な時間だったよ!!」

「っていうか、ね○み講って何なの......!?どういうことか俺にも教えてくれ......。」

どうやら本当に何も分からないまま『レアな海○深層水』を数十万円分購入した様子。
まだ今ならクーリングオフできるかもしれないということや、こんなことやってたら友達少なくなるかもしれないぞということまで説明した。
そして怒りに任せて資料代の500円は返してもらった。

後日Kからメールが届いた。
「クーリングオフはできなかったけど、ヒロキのおかげで目が覚めたわ。ありがとう。」

Kを救い出すことができて、とりあえずは良かったなと思った。
地元に帰ったKは今でも元気にしているだろうか。
次会った時には電車賃も返してもらうつもりだ。

次回
てげてげ通信
「最・終・回」

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