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INTERVIEW

MINAMI NiNE

2022.07.13UPDATE

2022年07月号掲載

MINAMI NiNE

Member:ヒロキ(Vo/Ba) ワラビノ(Gt/Cho) スケロク(Dr/Cho)

Interviewer:山口 智男

結成10周年を迎えた宮崎県出身の3ピース・バンド、MINAMI NiNEが2ndフル・アルバム『SOUTH』をリリースした。フル・アルバムとしては約6年ぶりとなる今回はコロナ禍の中、生まれた新曲に加え、ライヴではお馴染みの人気4曲の再録バージョンも収録。メロディック・パンクを軸にした多彩な全12曲が印象づけるのは、バンドが掲げる"南九節"のハートウォーミングな魅力。3人がアルバムに込めた思いを語る。

-約6年ぶりとなるフル・アルバムを完成させた現在の心境から聞かせてください。

ヒロキ:バンドを結成してちょうど10年なんですけど、今回は新曲だけではなく、結成当初のデモ盤などに入っていて、今もライヴでやり続けている曲をやっと流通作品に入れたんです。なので、昔から応援してくれてる人は、"この曲が入ってるんだ!"となると思いますし、最近知ってくれた人には新曲として聴いてもらえると思うので、どこを切り取ってもMINAMI NiNEでしかない作品ができたと思います。

ワラビノ:今回ツアー([MINAMI NiNE "SOUTH TOUR"])も回るんですけど、コロナ禍になってから思うように活動できなかった時間が、フル・アルバムの発売と同時に動き出すのですごく楽しみです。

スケロク:EPとかミニ・アルバムとか、それなりに出してたからあまり気づいてなかったんですけど、前のフル・アルバム(2016年リリースの『SWEET』)から約6年も経ってたんですね(笑)。現在入手困難なデモ盤の曲を入れたのは、ライヴのお客さんからの要望でもあったんですよ。それにやっと応えることもできたし、コロナ禍のモヤモヤしている時期に溜めたエネルギーから作った新曲もあるし、その両方ができたのは嬉しく思ってます。

-フル・アルバムというフォーマットには思い入れもあるんですか?

ヒロキ:ありますね。今回のアルバムは去年の秋ぐらいには完成してたんですけど、どういう形で出すか決まってないなか、フル・アルバムを作ろうってところから勝手に作ったというか(笑)、いつ発売するかも決めずに作り始めたんです。録り終わってから、2枚に分けてEPとして出すのもいいかもねって話もしたり、シングルとして毎月1曲ずつ出していこうかって話もしたりしたんですけど、やっぱり作り始めたとき、フル・アルバム作るぞってノリで作ったんだから、全曲入れてボリュームのある作品として出したいよねってなりました。それぐらいフル・アルバムというものに憧れもあったし、久しぶりに出したいというのが強かったですね。

-コロナ禍の中、MINAMI NiNEは決して活動を止めていたわけではないし、2021年は配信シングル(「Orange」、「人間の唄」、「Planet」)を3ヶ月連続でリリースしたり、10月にミニ・アルバム『RASH』もリリースしたり、音源のリリースにも精力的に取り組んでいたので、10周年のタイミングで、今回のアルバムから本格再始動することをあらかじめ考えていたんだとばかり思っていました。

ヒロキ:全然そんなことなくて(笑)。今回、FIRE UP DISCって自主レーベルからのリリースなんですけど、自主レーベルってずっと憧れてたんですよ。でも、アルバムを完成させて、レーベルを立ち上げたものの、どう動き出していいのか右も左もわからなくて。それで先輩や同期の仲間に相談しながら、いろいろアドバイスをもらうなかで、今年の5月に、僕たちの面倒をずっと見てくれてたレーベル、SouthBellの南部(喨炳)さんが困り果てた僕たちに手を差し伸べてくれて。それで今回、ダブル・ネームというか、SouthBellの力を借りてやっと出せることになったんです。自主レーベルの第1歩目として、自分たちでやりましたって感じではなくなっちゃったんですけど、そこも含め、MINAMI NiNEらしいのかな。

-ところで、結成10周年を迎えていかがですか?

ヒロキ:めっちゃ頑張ってきたというよりも、楽しくて、夢中でやってたら10年経ってたって感じじゃない?

スケロク:そうだね。早かった。

ヒロキ:あっという間でした。だから、10周年迎えましたけど、気持ちは1年目と変わらないです。

ワラビノ:縁を含め、いろいろ集まって、10周年という形でフル・アルバムもリリースできて、ツアーもたくさん回れるっていうのが結果、良かったと思います。

-去年の秋には完成していたということは、今回のアルバムはいつごろ、録り始めたんですか?

スケロク:去年の8月、9月、10月と3回に分けて、録ったんですよ。

ヒロキ:コロナ禍でライヴができない間、曲作りしていたので、曲がいっぱいあったんですよ。その中から選んで録れたから、曲作りで焦ったっていうのはなかったんですけど、できあがってから出せないまま1年経っちゃうっていう焦りはありました(笑)。 

-どんな作品にしたいと考えたんですか?

ヒロキ:自分で聴いても、"MINAMI NiNEってやっぱりこれだよな"って作品にしたかったので、新たなチャレンジというよりは、この10年間やってきた自分たちの得意な部分や味みたいなものを詰め込みたいというのがありました。あと、ライヴをイメージしました。こういう時代ではありますけど、後々みんなで歌いたいなとか、サビはみんなでガッといけるようなイメージとか、今回は結構それが強いですね。

-たしかに味があるからこそ、じわっと沁みる作品になったと思います。今回、デモにしか入っていない曲を再録して入れたのは、お客さんのリクエスト以外にも理由があったんですか?

ヒロキ:MINAMI NiNEの"NiNE"に掛けて、9周年のとき、"今聴きたい曲BEST9"をお客さんに選んでもらって、僕たちはそれを知らないまま、全曲当てるまでライヴが終わらないという企画("MINAMI NiNE pre. KIRISHIMA NIGHT vol.20 結成9周年記念日に地元でやる編")をやったんですよ。結局、全然当てられなかったんですけど(笑)、それのランキングで上位に僕たちが予想もしていなかった曲が入っていて。今回1曲目の「F」が1位だったんですけど、僕たちからしたら予想外で、みんな音源として持っていないはずというか、結成当初に下北沢のライヴハウスのオムニバスCDに収録した曲だったんですよ。それが口コミで広がったのか、僕たちがライヴでやっているのを聴いて、覚えてくれたのか。「生活」も「Lax」もそうなんですけど、それだけみんながいいと言ってくれるのであれば、このタイミングで音源化して、みんなが知っている状態にしたかったんですよ。知る人ぞ知る曲じゃなくしたかったんです。

スケロク:音源化しないのであれば、"せめてライヴで聴かせてください"って言われてたんですけど、一時期渋りまくってたんですよ。"新しい曲を聴かせたいから"って。でも、9周年企画で「F」が1位になるのであれば、音源化することにも意味があるんだなって。

ヒロキ:「F」ってMINAMI NiNEで最初にレコーディングした曲なんですよ。1stデモ(2012年リリースの『白盤』)よりも先なんですよ。さっき言ったオムニバスCDのほうが。

-あともう1曲、「東京の唄」も過去曲の再録ですよね?

ヒロキ:そうです。「東京の唄」はMINAMI NiNEになる前にワラビノと僕がやっていたバンド(ACTIVE'69)のころからやってるんです。この曲は怒りと悲しみを込めた曲なんですけど、よっぽど東京に対して、何か思うことがあったんでしょうね(笑)。

スケロク:覚えてないの(笑)?

ヒロキ:地元の同級生たちがどんどん東京から地元に帰っていったんですよ。病んで帰っていったりとか、苦しい思いをして帰っていったりとか、東京にいい思いを持たないまま地元に帰っちゃうのを何人も見送っていると、そのときの自分たちも生活すらほぼできていなかったから、なんでこんなところに来てしまったんだろうぐらいに思っていて。今はまったくそういうのはないんですけど、今回、そのときの気持ちのままパッケージングしたいと思って、レコーディングのときは20代半ばのころの気持ちに戻って歌いました。これこそ、みんな知らない曲だと思うんですよ。

-「東京の唄」と次の「ひかり」が曲間なく繋がっているところが、心境の変化を物語っているようでいいですね。

ヒロキ:情緒不安定なフル・アルバムを作りたかったんです。結果的に、モロそうなってるんですけど、うわーって行ったと思ったら急にふわっと軽くなったりとか、そうかと思えば、またどーんっていったりとか、聴いているほうの心が忙しくなるような作品にしたかったんですよ。だから、曲順もかなり考えました。落ち着いて聴けるねっていうよりは、曲の流れからも訴え掛けられるようなものにしたかったので、曲間も細かく決めていきました。

-いろいろな感情が一曲一曲に込められているから、みなさんの生活の中から生まれてきた曲なんだなと聴きながら思いました。

ヒロキ:お酒を飲んだときに、自分は結局、何が歌いたいのかなって自分の中で考えるんですけど、今まで作った曲って全部、でっかいことで言うと愛のことを歌っているというか、「東京の唄」も怒りが込められているんですけど、結局は友達のことを思ってたり、地元愛だったり、家族愛だったりを歌っている。いろいろな表現方法を使いながら、歌詞を書いてますけど、実はテーマはひとつなんですよ。